この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
※このコラムは2013年8月にエディブロ導入塾に配信されたメルマガからの転載です。
マーケティングの意味を簡潔に表すならば、「商品の良さを早く正確に伝えること」でしょう。先月号でお話したように、「商品の良さ」が大前提であることを忘れないでください。
マーケティングのお話を始める前に、マスター・ビジネスについて解説します。様々なマーケティング手法がソフト(アプリ)であるのに対して、マスター・ビジネスはOSのようなものです。
全てのビジネスはウォンツで成り立つものとニーズで成り立つものとに分かれます。ウォンツ(欲求)で成り立つビジネスの代表としては、外食産業・娯楽施設・漫画アニメ等が挙げられます。それに対して、ニーズ(必要)で成り立つビジネスの代表として考えられるのが病院・弁護士・税理士などです。言うまでもなく塾は後者に属します。
このニーズで成り立つビジネスの特徴は、「誰も好んで利用したいとは思わない」ということです。病院に喜んで通う人はいませんし、弁護士を必要とする事態は避けたいものです。しかし、自分ではどうしても解決方法が見つからないので仕方なく利用する…それがニーズで成り立つビジネスの宿命?です。生徒も保護者も、「できることなら塾を利用しないで済ませたい」と考えています。しかし、自分では解決できないので「プロの力」を借りるために塾を利用します。
つまり、医者も弁護士も税理士も…塾教師も、素人の悩みを解決するプロとしての立場にあり、それを期待されているのです。
我々は大病を患ったとき、医者の「大丈夫です。私に任せてください。必ず治してみせます」の言葉を求めます。患者はその言葉に救われます。この医者の振る舞いがマスターです。そうした立場に立って行なうのがマスター・ビジネスです。
生徒も保護者も、勉強に関する悩みを抱えて塾の門を叩きます。それは、「志望校に合格したいけれど内申点が足りない」「なかなか成績が上がらない」「家では全く勉強しない」…人によって千差万別です。しかし、これらの悩みを解決する機関として塾は存在します。ならば、我々が学習指導のプロとして対応しなければならないのは当然です。「いやあ、当塾で成績が上がるかどうか…私にも分かりません」と不安を見せると、それは生徒・保護者にも伝播します。不安を抱えたままでは学習効果が上がりません。それ以前に、そんな塾は支持されないでしょう。
また、「当塾には○○、△△、□□と様々なコースがあります。ご予算と必要に応じて選択してください」と相手の意向を尊重する、一見良心的な「セールス」をしている塾がありますが、これでは医者が「どうぞ、ご予算と必要に応じてクスリを調合してください」と患者に伝えるようなものです。相手はそれが分からないからプロを頼ってきているのです。処方箋はプロの側が提出しなければなりません。相手(素人)に任せるのは、効果がなかった時の責任逃れをしているに過ぎないのです。
マスター・ビジネスとはプロとしての立場に立ち、救いを求めに来た素人の期待に応え続ける(その努力を不断に続ける)責任と覚悟を持ってビジネスを行なうことです。
中には三者面談で「○○君にヤル気がないから成績が上がりません」「宿題をして来ない事があります。ご家庭でも注意をして見てください」と、プロとしての責任を放棄しているかのような話をしている塾があります。これではマスターとは言えません。それすらも自分の役目と捉えることです。
マスター・ビジネスに徹することは、ある意味辛いものです。全ての責任を背負う覚悟が必要です。しかし、我々がその覚悟を持たなくては、生徒・保護者の悩みを解決することはできませんし、塾の業績を伸ばすこともできません。
一つだけ例を挙げましょう。
例年の夏期講習を、コマ数、科目、時間割の自由選択性で行なっていた塾が今年、生徒ひとり一人に処方箋(カリキュラム:必要科目・分野・コマ数)を提示し、事前面談で相談の上で決定するという方法に変えたところ、売上が前年の3倍になりました。過去の定期試験・模擬テストの結果と志望校との相関関係を丁寧に説明し、必要な学習を「理を持って説いた結果」です。誰しも納得すれば「購入」という行動に移すのです。あとは…
「夏期講習を受けてよかった」と思わせる講習を実施することです。
何度も繰り返しますが、マスター・ビジネスの基本は割烹料理の大将です。「騙されたと思って食ってみな」と提供し、食べた人に「ああ、騙されてよかった」と思わせることです。その積み重ねが信頼を構築します。
ぜひ、歯をくいしばってマスター・ビジネスを展開してください。必要なのは、あなたの覚悟と責任感です。
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