この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
※このコラムは2013年10月にエディブロ導入塾に配信されたメルマガからの転載です。
塾というビジネスでは、商品力の向上が不可欠だ。集団指導塾ならば「授業力」の向上で体現できる。では、他の指導形態の塾は???
前回、ここまでお話しました。現在の塾は、大きく分けて3つの指導形態があります。集団指導、個別指導、自立学習指導です。中小・個人塾の場合、年々個別指導、自立学習指導の割合が増えています。そして、苦戦しています。その原因と対策について順に見ていきましょう。今回は個別指導です。
標準的な個別指導は、講師:生徒=1:2で1コマ80分、授業料が2科目で3万円前後でしょう。これを見ても分かる通り、個別指導の弱点は授業料が高いということです。長引く不況の影響で家庭の可処分所得は減少の一途です。子どもの教育費も削らざるを得ません。いきおい、授業料の高い個別指導塾は敬遠される傾向にあります。それでも、商品力が価格と見合っているのならいいのですが、多くの個別指導塾が構造的に商品力の低下を招いています-個別指導塾は成績が上がらない-コレです。
冷静に考えれば分かります。週に1回、英語の指導を80分受けて成績を上げることは難しい。たとえ受講科目は上がったとしても、他教科は手付かずのままです。全体的な成績向上は難しいという宿命を抱えているのです。それでも今までは、「マンツーマンで面倒見よく指導してくれる」というメリットがありましたので、個別指導塾はその数を増やしてきました。しかし、これだけ個別指導塾が増えると、もう「個別指導」というだけでは差別化にならず、成績が上がらないという弱点だけが顕在化しているのです。これが、個別指導塾が今、抱えているジレンマです。
これを解決するには、「個別指導でも(だからこそ)成績が上がる」を実現する以外に方法はありません。実際の例をもとに解説します。
某個別指導塾の実践例です。成績が上がらない原因の1つは、生徒の学習意欲の低下にあります。個別指導塾は「分からないところを丁寧に教えてくれる」というのが大きなメリットだったのですが、実はそこに大きな落とし穴があります。生徒の立場に立ってみると、「自分は学校授業を受けても理解できないダメな生徒だ」という意識を少なからず持ってしまいます。いわゆる自己嫌悪感です。これでは学習意欲が喚起されるはずがありません。
そこで某塾は、思い切って予習中心の指導に替えました。現場の講師(多くは時間給のアルバイト大学生)は大変です。それまで、生徒が分からないところだけを適当に?教えていればよかったのが、予習指導となれば話は別です。事前の準備も必要ですし、しっかりとした学習カリキュラムの策定も不可欠です。しかし塾長は粘り強く説得を続け、学生講師達の意識変化を促しました。
結果、生徒のモチベーションは格段に高くなりました。それまで、理解できない学校授業を受け、指名されたらどうしようとビクビクして登校していた生徒が、塾で予習することで余裕を持って学校授業に臨むことができるようになりました。「当てられても答えられた」という小さな成功体験が自信になり、さらなる意欲を喚起します。こうした好循環を作り出すことに成功したのです。
また、この塾は理科・社会の映像教材を導入し、テスト前の国語指導と合わせて全科目指導を実現しています。結果、個別指導なのに成績が上がる塾として、地域で圧倒的な支持を集めるようになりました。
塾の商品力は「成績向上」と「志望校合格」に集約されます。集団指導ならば「授業力」のUPを図ればいいのですが、個別指導の場合はシステムそのものの改革が不可欠です。この塾の成功例は、個別指導塾の新たな可能性を感じさせます。
さて、近年増加傾向にあるのが自立学習指導塾です。背景には子どもの数の減少により、(塾によっては)集団指導が成立しない学年が出現し始めたことと、それによる人件費率の高騰が挙げられます。個別指導に転換したくても、地方によっては優秀な学生講師を確保できないという事情もあります。また、映像教材の飛躍的な進歩によって、自立学習指導が成立しやすくなったという好条件も一方ではあります。こうした様々な条件から自立学習指導塾は増加しているのですが、やはり苦戦をしているところが多いようです。
次回は自立学習指導塾のケースについて紹介します。