この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
-十年分の感謝を込めて-
十年間に渡ってお届けしてきた紙上セミナー「中小塾のマーケティング講座」も、今回が最終回です。長くお付き合いいただき、ありがとうございます。途中ネタが尽き、弱音を吐いたこともありましたが、私塾界の先代、故山田代表から「十年は続けてください」と励まされ、それだけを目標に執筆を続けてきました。ようやく、一つのゴールに辿り着いた気分です。故山田代表、後を継いだ加藤代表、そして現山田代表に心から感謝申し上げます。 十年前、3回シリーズの予定で執筆を開始した「中小塾のマーケティング講座」でしたが、まさか本当に十年間も続けることができるとは思いませんでした。これもひとえに、ご支持いただいた読者諸兄のおかげです。「私塾界、読んでいますよ」とお声掛けいただくことが、どれほどの励みになったことか…。今回は、ありったけの感謝を込めて(いつも以上に)辛口のエールを送ります。
塾経営に全身全霊で取り組もう
とある塾経営者(塾生獲得実践会・会員)から寄せられた報告です。
森先生へ たいへんご無沙汰しております、○○です。昨日「春期講習会」が終了しまして、本日より通常業務に戻っております。新年度は4月1日(月)に開講していますが、新年度の入塾&入塾確約数が、昨年度を僅かながら上回っております。(中略)お陰様で、新年度スタート時の塾生数が5年前の水準まで回復できました。昨年7月に、森先生との契約を終了してから、私なりに過去に例を見ないほど全身全霊で塾業務にあたってまいりました。まだまだ油断は出来ませんが、今まで以上に前向きにやっていきます!森先生には、私の“内に秘めた想い”を引き出していただき本当に感謝しております。ありがとうございました。
この先生が経営する塾は、ここ数年間の慢性的な経営不振に陥り、昨年春は危機的な状況に陥っていました。求めに応じ、私が少しだけマーケティング(広告宣伝)のお手伝いをしました。以前、この紙上セミナーでご紹介した「前年比6倍の集客」を達成した塾です。何と今年は、お一人の力で昨年以上の集客を達成し、5年前の水準まで戻したと言うのです。その秘訣は…報告の中にある「全身全霊」の四文字に尽きます。
どれたけ策を弄しようが、どれだけ手練手管を駆使しようが…全身全霊のパワーには勝てません。私は以前、「必死」についてお話したことがあります。必死とは単なる精神論ではなく、「一日にあと一時間、塾経営にかかわる時間を増やすこと」です。一年で三六五時間、三年で千時間を越える時間が生まれます。それだけの時間を余分に費やせば、必ず「何か」を成すことができます。ある塾経営者はその時間を生徒への手紙を書くことに費やしました。一日三通、かかさず手紙を書き続けました。塾生数五〇名もいなかった塾が三年後、二百名を超える生徒が在籍する塾になりました。
ある塾経営者は「実践を無我夢中で続けていると、忙しくはなりましたが毎日が充実して楽しくなってきました」と報告してくれました。一時期、塾生数が一桁まで激減した塾です。生徒数が六〇名を越えた時、しみじみと「私には塾生数五〇名を越える塾は作れないと思っていました。ところが気付けば、いつのまにか五〇名どころか六〇名を越えていました」とお話してくれました。この塾は2年後、生徒数百名を大きく越える塾に成長し、新塾舎を建てるまでになりました。必死で実践を続けた成果です。
私が「あなた」に必死を求めるのは、それが最も重要なビジネス条件だからです。どんなに優れた商品を、どれだけ優れたマーケティングを駆使して売っても、売り手に必死さがなければ成功しません。逆に言えば、その覚悟さえあれば、商品が塾だろうが車だろうが家だろうが…一定の成果は作ることができると私は確信しています。
ただ、ビジネスをやっていれば好調の時も不調の時もあります。勝って驕らず、負けて悲観せず…今の状態を冷静に見ることです。特に、この春不調だった塾はチャンスと思いましょう。自塾の欠点を洗い出し、進化させるチャンスです。
野村監督の口癖です。「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」
今春不調だった塾がすべきこと
では、この春の集客が不調だった塾は、まず何をやればいいのでしょう。 まず、商品力の見直しをすることです。生徒が喜んで(「楽しんで」ではありません)通塾する魅力的な授業になっているかどうかを考えてください。「喜んで」には様々な側面があります。もちろん一番は「成績が上がる」です。それ以外で言えば… *塾に来れば毎回、新しい発見がある。 *大好きな塾の先生に会える。 *塾に来るとやる気になる。 *塾だと解かる、解ける。 等々が考えられます。商品が魅力的であることは、ビジネスの基本です。 これまでも度々指摘してきましたが、中小・個人塾の中には何の準備もせずに行き当たりばったりで授業に臨む教師がいます。そんなことでは「生徒が喜んで受ける授業」を提供できるはずがありません。塾教師にとっての「予習」とは、そうした魅力的な授業を展開するために存在します。その日の授業で一つでも「新しい発見」を生徒に持って帰ってもらうためにネタ探しをする。生徒のモチベーションを向上させるための三分間スピーチを考える…。ぜひ、「あと一時間」を授業準備に費やしてください。商品力はビジネスの必要条件です。 その上で、その商品の魅力を誰かに話したくなる仕掛け(マーケティング)を考えます。そのためにも、近隣他塾が持っていない武器を装備してください。「へぇ~」と思うことは、誰かに話したくなるものです。「塾に来るとやる気になるのは○○のおかげだ」の○○(武器)が「へぇ~」と言わせるものでなければなりません。最近お伝えしていることで言えば、「成績が上がるのは早朝5時からの特訓授業のおかげだ」となります。朝の5時から勉強をしていれば、誰だって人に話したくなるものです。そうした商品力とマーケティングの融合が評判を作り、塾を発展させます。そして、繰り返しになりますが、授業もマーケティングも全身全霊、必死で取り組むことです。 あなたの塾が、そして塾業界全体がますます発展することを祈って、一旦ペンを置きます。(了)