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  • 執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座100 コミュニケーション戦略を見直せ!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


-大手企業幹部のFAX利用をヒントにして- 先日、中部リコーに招かれて、リコーのスタッフと販売店経営者を対象とした講演を行なってきました。テーマはコミュニケーションの重要性について。その時、中部地方を統括する常務執行役員から素晴らしいヒントをいただきましたので、皆さんとシェアしたいと思います。


FAXを利用したコミュニケーション戦略 皆さんの中にもリコー製品をお使いの方が多いと思いますが、特別の大口顧客以外は地方の販売店が中心となってリコー製品を販売しています。販売店の力量いかんでリコー全体の売上が左右されます。販売店はリコー製品だけではなく、他社メーカーを扱うことも可能です。勢い、いかに自社製品に力を入れて販売してもらうかが重用になってきます。そのため、メーカーはキャンペーン期間を設けて販促を強化し、優秀店の表彰、報奨金の授与等、ネットワークの強化に躍起です。 私がお会いした執行役員のA氏は、優秀な販売店に感謝の意を小まめに伝えるのですが、その伝達手段にFAXを利用しているというのです。文面はもちろん、直筆の手書きです。メールという便利なアイテムが広まってから、FAXを通信手段として利用することは少なくなりました。手間も掛かりますし、通信費もかさみます。それでもあえてFAXを利用するのは、ある狙いがあるからです。 メールで感謝の意を伝えた場合、その文面を読むのは販売店の経営者だけです。手紙を送っても同じです。ところがFAXの場合、その店の従業員(たいていは女性の事務員)が届いたFAXに気付き、経営者のデスクに運ぶという流れが想定されます。つまり、その従業員の目に触れることによって、リコー本社の意向が販売店経営者だけではなく社内全体に伝わることが期待できると言うのです。

この指摘は目からウロコでした。塾の現場でも塾生とメールでやりとりをすることが当たり前になっています。中学生ともなると、たいていの生徒が自分のパソコン、携帯を持っています。多くの連絡事項がメールを通して行なわれているのではないでしょうか。しかし、それだと伝わるのは受信者だけということになってしまいます。 現在、多くの家庭にFAXが常備されています。入塾書類にFAXの有無を書き込んでもらっているはずです。ならば、時にはFAXレターを送ってはいかがでしょう。例えば、「今日は凄く頑張っていましたね。真剣に授業を受ける○○君の姿勢が嬉しくて、手紙を書いてしまいました。この調子のまま全力で期末テストに臨んでください」くらいの簡単な内容を「手書き」でFAXするのです。もしかしたら、妹さんが「お兄ちゃんに塾から手紙がきているよ」と気付いてくれるかもしれません。もしかしたら、父親の目に触れて「息子も頑張っているみたいだな」と思ってくれるかもしれません。そのFAXレターがきっかけで親子の会話が弾むかもしれません。もちろん、それが最終的には塾の評判につながってくることは言うまでもないことです。


私は「感情の論理」を提唱していますが、重要なことは想像力です。目に見えない相手(生徒・家族)の様子を想像してみることです。ネットに押され、時代遅れの感があるFAXですが、まだまだ工夫によっては有効な手段になります。メールでは肉筆を伝えるということが出来ませんし、相手家族全員に波紋を広げることも難しい。



コミュニケーション戦略の再構築を

ただ、私が皆さんと本当にシェアしたいのは、FAXの有効利用ではありません。いかに「あなたの意思」を多くの人(当事者の周囲の人)に伝えることが大切かということを含め、コミュニケーション戦略の見直しをしてほしいのです。「何を伝えるべきか」「誰に伝えるべきか」「どうやって伝えるべきか」…人は、自分が褒められることよりも、「自分の好きな人が褒められること」に大きな喜びを感じます。ましてや、それが我が子ならば尚更です。生徒を褒めるならば、そのことを保護者にも伝えたい。


塾の教師にとって「褒め方」「叱り方」は重要な技術です。定期的に「褒め方」「叱り方」の研修を行なっている塾も多いことでしょう。そこを一歩進めて、同じ褒めるならば保護者まで届く方法を工夫したいものです。


A氏はまた、「確かに手書きでFAXを作成するのは手間隙が掛かります。しかし、手間隙を掛けないと、こちらの真意は伝わらないものですね」とも言います。私が講演で「あなた」にはお馴染みの「手書きレター」や「ニュースレター」の話をしたので、「我が意を得たり」と思って話し掛けてきたようです。人は感情で動く唯一の生き物であり、それを忘れたコミュニケーションは成立しないことを大手企業の幹部も認識しているのです。


塾は究極のアナログ・ビジネスです。確かに、教材や情報管理にはデジタルの恩恵が大です。しかし、つまるところ塾はどこまで行っても「人」対「人」のビジネスです。リコーという日本を代表するデジタル機器メーカーの上層部が「人の感情」を大切にするマネジメントをしていることを知り、私こそ「我が意を得たり」という気分になりました。


さて、猛暑節電の夏が過ぎたばかりのようですが、気付けば今年も残りわずかです。冬期講習、入試直前講習の季節となりました。並行して春期募集の準備も欠かせません。ぜひ、もう一度コミュニケーション戦略を見直してください。以前からお話しているように、コミュニケーションとは「情報を伝えて相手に行動してもらうこと」です。そして、「人を納得させるには理論が、人を行動させるには情熱が必要だ」とも言われています。つまり、あなたの思い(情熱)が伝わらない限り、相手は行動しない(入塾しない)ということです。教育に情熱を持っていない塾人はひとりもいません。あなたも、情熱だけは誰にも負けないと思っているはずです。ならば、それを伝える技術を磨くべきです。「思い」は伝えなければ伝わりません。そのための工夫、技術を磨くのがプロの仕事です。


塾経営者は学習指導のプロであると同時に、塾経営のプロです。好き・嫌いで行動するのがアマチュアならば、必要・不必要で行動するのがプロです。塾業界どころか日本全体に逆風が吹いている今こそ、プロとしての力量が試されています。ぜひ、細部にこだわって下さい。その小さな積み重ねが大きな成果を生み出します。「そこまでこだわることもないか」という妥協の積み重ねが全体の停滞を招きます。必要なことには徹底的にこだわる…その姿勢が必ず市場を動かす力となります。塾にとってコミュニケーションは必要不可欠な要素です。ならば、徹底的にこだわるべきです。あなたの塾が来春、大きく飛躍するかどうかは、「今」にかかっています。最多忙期を迎え、やるべきことが山積みだと思いますが大丈夫です。人は、そうした時ほど頭が回転し、閃きが降ってくるものです。あとは「あなた」の決断と実行力を発揮するだけです。健闘を期待します。

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