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  • 執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座102 教師の究極の役目は生徒のモチベーションUP!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。



-効果的な褒め方・叱り方をマスターしよう-

褒めるとお世辞は違う


以前、叱り方・褒め方の重要性を指摘しましたが、今回は褒め方を中心に少し具体的にお話します。「相手のモチベーションを上げる方法」として、褒める技術があります。コーチングの世界的権威、トム・コラネンは褒め方の5つの原則を列挙しています。


  1. 直後に、その場で褒める

  2. 最高の出来ではなくても、少しでも良くなったら褒める

  3. 個別に褒める

  4. これまでにない行動を絶えず褒める

  5. 優れた習慣を折に触れて褒める


言っていることはどれも簡単なことですが、これが難しい。何よりまず、相手の褒めるところを探すのに苦労します。マラソンの高橋尚子選手を育てた名伯楽、小出義雄氏は言います。


「選手を褒めて自信を持たせることは大事だが、それが単なるお世辞であってはいけない。私が褒めるという意味は、あくまでも本当のことを言ってあげるということだ」

すると、本当のこと(相手の良いところ)を探し出すための観察力が必要になってきます。常にアンテナを立てて、「この人の良いところはどこだろう」と意識し続けることです。不思議なもので、アンテナを立てると必要な情報が向こうから飛び込んでくるようになります。 この「褒めて伸ばす手法」を船井総研は「長所進展法」と呼び、奨励しています。しかし、一方で「この長所進展法ほど理解しやすく、お話したほとんどの方に感心していただける方法はないのですが、同時に、これほど実践が難しいものもありません」と話しています。 欠点だらけの人(生徒・部下)でも、何か1つは長所や取り柄があるのは「理屈では分かっている」のですが、欠点ばかりが目立ち、どうしても自分とは波長が合わない人もいます。そうした人の長所を見つけて伸ばしてやることは、経営者(上司)にとって拷問のような辛さです。しかし、その辛さを克服するのが経営者であり、教育者です。 人を褒める(評価する)要素は、「プロダクト評価」と「プロセス評価」に分かれます。成果主義が日本で失敗に終ったのは、プロダクト評価に過大に傾斜し、プロセス評価を軽視したからだという指摘があります。ビジネス・コンサルタントの播磨氏は「部下が行動目標を立てて取り組んでいるならば、たとえ結果を出せなくても上司は承認するのがコーチングの考え方だ」と言います。そして、「結果だけにフォーカスするのではなく、過程を見守り、努力を承認すること」を求めます。褒めるべき要素が「プロダクト」だけではなく、「プロセス」にもあると知れば、褒めることは簡単になります。宿題はやって来ない。授業も集中して受けない。そんな塾生にも「よく、塾に来たね」と褒めることが出来ます。

真面目な塾生にもプロセス評価を


ところで、意外と忘れがちなのが優秀で真面目な生徒に対する「プロセス評価」です。前掲の5つの法則の最後、「優れた習慣を折に触れて褒める」です。真面目で優秀な生徒は手が掛かりません。そのため、知らず知らずのうちに「手を掛けなくなる」という現象が生じます。言われてみれば、普段宿題をやってこない生徒が宿題をやって来たら、それだけで目立ちます。思わず、「よく、やってきたな」と褒めたくなります。しかし、それを聞いていた「毎回、真面目に宿題をやって来る優秀な生徒」はどう思うでしょう。実は、その瞬間、彼(彼女)のモチベーションはガタ落ちです。


俗な話ですが、若い女性が「不良少年がたまに見せる優しさに惹かれる」と言うのを聞いたことがあると思います。ギャップの大切さを物語っているのですが、一方で、「いつも優しい俺はどうなる!」とやっかんでいる真面目な男性が大勢います。あなたもその一人のはずです。すると、次にどう思うでしょう。「あの女性は何も分かっていない」…そう、思いますよね?


真面目な生徒も同じように感じています。「この先生(塾)は、僕のことを分かってくれていない」…こうして、そっと塾を辞めていきます。


優秀で真面目な生徒にこそ、「優れた習慣を折に触れて褒める」が必要です。「いつも、ありがとう。君が模範を見せてくれるから、このクラスのみんなが真面目に取り組むようになったよ」と、Iメッセージを添えて褒めてあげることです。それだけで、彼のモチベーションは維持向上されるものです。真面目で優秀な生徒に対する「プロセス評価」をくれぐれもお忘れなく。


最後に、「叱る」について少し触れます。育成の基本に「怒るな、叱れ!」という格言があります。相手の行動、その結果にフォーカスして指摘し、けっして人格非難になってはいけないという戒めです。ただ、私は怒ってもいい場面があると考えています。それは、「人としてやってはいけないことを生徒がやった時」です。例えば、友人を馬鹿にしたり、貶(けな)したりする言動をした時です。その時は、人として怒らなければなりません。それ以外は、基本的に「叱る」ことが重要です。


本間正人氏が著書で挙げている「叱るための基本的な十の心得」を紹介します。


  1. 相手を責めない

  2. 「一緒に~しよう」という気持ちで

  3. 相手の人格を否定しない

  4. 相手にレッテルを貼らない

  5. 他人と比較しない

  6. 相手の成長を認めてあげる姿勢で

  7. 過去の失敗を蒸し返さない

  8. 成功イメージが浮かぶような言い方で

  9. 叱った後のフォローを大切に

  10. 長いお説教よりも短いメッセージ


人はついつい「これが何度目だ。前も同じミスをしただろう」と過去の失敗を持ち出し、「周りが出来ているのに、どうしてお前だけ出来ないんだ」と他人と比較してしまいます。でも、これも練習です。「叱る技術」も、練習で向上させられます。ぜひ、褒める技術と叱る技術の向上を目指してください。何事も、練習で出来ないことは絶対に本番で出来ないのですから。


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