この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
-「面倒見の良い塾」の評判を作るために-
地域№1塾を目指す戦いに参加する
各塾では3月~4月に年度替りを迎えていることと思います。塾にとっての新たな1年の始まりです。これから塾が生き残り、勝ち残るための基本についてお話します。過去にもお話してきました、何を目指して戦略・戦術を構築するかと言えば、間違いなく目指すところは「地域一番塾」です。
ちょっと小難しい内容になりますが辛抱して?お聞き下さい。
昨年は東日本大震災という千年に1度と言われる大災害があり、塾業界も多大な影響を受けました。かつて、教育産業は最も川下に位置し、景気の動向を受けない業種と言われていたものです。しかし、長引く不況はそうした「神話」さえも覆し、特にリーマンショック以降は苦戦を強いられている塾がほとんどです。加えて、少子化という構造的問題は解決の見込みがありません。この業界は、成熟期から衰退期へと移行しつつあるようです。
ところが、こうした悪条件が重なる中でも好調に業績を伸ばしている塾があります。例えば、震災の影響を正面から受けたはずの「昨年上半期」でも、いわゆる大手塾は堅調に推移しているという報告(私塾界1月号小林弘典氏)がありました。また、中小・個人塾でも、逆境を跳ね返して発展している塾があります。そうした塾に共通しているのは、「地域1番塾」だということです。
私が「2対8の法則」と呼ぶパレートの法則は日本社会を猛スピードで席巻し、最も川下に位置する教育産業にも既に到達しています。今や、上位2割に位置しない者は市場からの撤退を余儀なくされる「運命」にあると覚悟しなければなりません。これは資本主義社会の自然法則です。かつてのように、右肩上がりの成長期は何の問題もありませんでした。市場が年一〇%ずつ成長している分野では、「去年と同じこと」をしていても昨年比一〇%の売り上げ増が見込めました。護送船団方式が有効に働いていた時代です。しかし、縮小均衡に転換した日本社会では猛烈な勢いで二極化が進行します。上位2割に入ろうと合従連衡の再編成が進みます。以前は十数行あった都市銀行も、現在では3つのメガ・バンクに集約されました。製造業・小売業も同じ道を辿り、塾業界でもM&A、資本提携の動きが止まりません。全ては業界トップを目指す熾烈な争いの賜物です。少なくとも、地域一番塾を目指す熾烈な争いに参加しない塾は淘汰されるという運命が待ち構えているのです。
かつて、塾を選ぶ基準の1番は「近い」でした。近くの塾に通うことが当たり前とされた時代です。拡大発展市場は言い換えると売り手市場ですから、新しい教室を開校すると、それだけで近所の子供たちが集まってきたものです。ところが縮小均衡市場は買い手市場です。主導権は消費者の手に渡ります。すると、消費者は数ある塾の中で「最も良い(相応しい)塾を選ぶ」という行動に出るようになります。それが地域一番塾に「客」が集中する原因です。
マーケティングの世界で言い古されている格言ですが「日本一高い山を知らない人はいないが、日本で二番目に高い山を知っている人もいない」のです。同じ3千m級の山は富士山以外に二十もあります。それを全て知っているのは、よっぽどのマニアだけです。ほんの数百mしか違わない日本第2位の南アルプス北岳を知っている人は稀でしょう。人は、知らないものを話題にすることはありません。
あなたの塾が地域で1番であること、そして、それを目指し続けることが塾発展の必要条件なのです。
ただ、問題は何で「地域1番塾」を目指すかということです。大手塾はその規模(生徒数・合格数)で1番を標榜しています。それだけで地域の認知を得ることができます。今、大手塾が堅調に業績を伸ばしている理由がここにあります。言ってみれば、実に分かりやすいのです。中小・個人塾が今すぐ全体規模で大手と対抗するには無理があります。そこで、別のカテゴリーで地域一番を目指す必要が出てきます。我々は相撲では白鵬に敵いません。百戦百敗です。しかし、あなたの得意なテニスならばどうでしょう。あるいは水泳ならば勝てるという人もいるでしょう。ならば、相手の土俵に立たず、自分の得意なテニスのコートを作り、そこにテニス・ファンを集めるという戦略が必要なはずです。
地域の人から「○○ならばあの塾だよね」と言われる塾を作ることです。この○○に入る言葉を決め、全てのエネルギーをそこに集約することです。そして、最終的には「あの塾は凄い!」という評判を作らなければなりません。
面倒見の良い塾と言われるために
多くの塾経営者が自塾の特長を問われると「面倒見の良さ」を挙げますが、それは地域の人から認知されている特長でしょうか。「面倒見の良さならあの塾だよね」と言われていますでしょうか。残念ながら、ほとんどの塾は経営者がそう思っているだけで、地域の認知が得られていないのが現実です。そうした評判を実際に作っている塾は何を実践し、それをどうアピールしているのでしょう。
もし、「地域で一番面倒見がいい塾」を本気で目指すのでしたら、地域他塾を圧倒する面倒見を実現させなければなりません。例えば、福井県に「年中無休・二十四時間指導体制」の塾があります。この塾は受付も六時~二十四時です。言葉を労さなくても、それだけで「面倒見の良さ」をアピールできています。
また、「分かるまで指導します」と謳うのでしたら、本気で「分かるまで指導する体制」を作らなければ意味がありません。「ひとり一人に合わせた対応」を謳うのでしたら、本気で「ひとり一人に合った教材・カリキュラム」を作成しなければなりません。市販の共通ワークを使用して、「ひとり一人に…」と主張しても納得はされないでしょう。
テスト期間に「早朝特訓」をする塾も増えてきました。その場合、夜も明けぬ6時前から教師が路上に立ち、やって来る塾生を迎えなければなりません。「まだ寒い中、よく来たね」と笑顔で迎えられた時、生徒は感動し、「この塾は凄い!」と思い、保護者は「何と面倒見の良い塾だ」と認識します。
土日の補習も、「ご自由にどうぞ!」ではダメです。それが必要な生徒には「うっとうしいくらいのおせっかい」でアプローチしなければなりません。その「うっとうしさ」を嫌って辞めていく生徒が出てくるのは覚悟の上です。だって、「面倒見の良さ」とは「うっとうしいくらいのおせっかい」と紙一重、いえ、同義語のはずです。必要ならば家まで押し掛け、両親を説得し、生徒本人を説得しなければならないこともあるでしょう。それが「面倒見の良い塾」です。
要は、「面倒見の良い塾」を標榜するなら、圧倒的に他塾を上回る「面倒見の良さ」を見せる覚悟と実践が必要なのです。(次回へ続く)
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