この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
-ダイレクト・レスポンス・マーケティングの応用-
外部講習生の獲得は両刃の剣
夏休み間近、各塾では夏期講習の準備に突入していることでしょう。この時期、塾の命題は「いかにして外部講習生を後期生として取り込むか」にあります。過去にもお話してきたことですが、復習を兼ねて説明します。
「口コミは現役生が、評判は卒塾生とその保護者が拡げる」という原則があります。良い評判は主に、志望校に合格し円満に卒塾した生徒が拡げます。ところが一方で、悪い評判が存在します。悪い評判は言うまでもなく、期待に応えられず退塾した生徒とその保護者によって作られます。退塾を防止することは、悪い評判を作らないためにも重要です。こうして考えていくと、「講習は受けたが、後期生として残らなかった生徒の存在」が塾にとって大きなマイナスであることが分かります。保護者は「夏期講習は受けさせたけれど、ちょっと期待外れだった」と周りに言っているかもしれないのです。少なくとも、良い評判を拡げてくれることはありません。
もし、「今年は外部生が多く来てくれた」と喜んでいるとすれば、それは諸刃の剣だということを認識してください。彼らは、いつ「負の営業マン」に変容するかもしれないのです。全ての外部受講生を後期生として取り込むこと、それが求められています。
こうした話をすると、「いえ、この生徒は最初から講習だけ、という条件で申し込まれました」とか、「この生徒は紹介で受講しましたが、今の塾を辞めるつもりはないと聞いています」と言われる塾長(教室長)がいます。同じことです。それでも「あなたの塾の夏期講習」を受講したということは、少なからぬ期待を持っていることは間違いありません。その期待を大きく上回り、感動させ、「この塾に通いたい」と思わせなければならないのです。それ以外に、あなたの塾の評判を上げる方法はありません。想像してください。母親が友人に「最初は塾に入れるつもりはなかったけれど、娘がどうしても続けて通いたいと言うものだから…」と話す場面を。前述の「夏期講習は受けさせたけれど…」と比較すれば、その違いは圧倒的です。ぜひ生徒を、保護者を感動させる講習を実施してください。
当然、その基本は講習内容にあります。塾にとっての「授業」は「商品」です。商品力がなければ、ビジネスは成立しません。今からカリキュラムや教材を変更することは無理かもしれませんが、一つだけ可能なことがあります。
受験学年の講習は大丈夫だと思うのですが、多くの塾の講習を見学すると他学年の授業に緊張感が欠けている場合が見られます。生徒も嫌々?受講している風情を見せ、教師もそれに同調しているような授業です。確かに受験生でもなければ、暑い日中に塾に通い、勉強に集中することは難しいものです。しかし、指導者がそれに同調し、同じような空気を作り出しているのは問題です。生徒側の持ち込む気だるい空気を切り裂くような、緊張感を持った授業をすべきです。そうでないと、子供たちに「講習を受けた実感」を与えることはできません。当然、感動を作り出すことなど不可能です。今すぐスタッフに、そして「あなた自身」に檄を飛ばし、「ぬるい授業」ではなく「熱い授業」を展開してください。(注意…熱い授業とは「怖い授業」ではありません)
そうした授業の存在を前提として、マーケティングの話をします。
ダイレクト・レスポンス・マーケティングの応用
まずは、講習に申し込んだ外部生を講習開始まで無視しないことです。「実力診断」「プレ講習」「期末テストブラッシュアップ講座」…何でも構いませんので、講習開始までに数回の接触を図ってください。単純接触を繰り返すことは重要です。 基本は、以前に紹介した「3日、3週、3ヶ月」です。講習を受講した外部生のご家庭には、講習初日(遅くとも3日以内)に電話訪問をします。内容は単純で構いません。塾での様子を伝えればいいのです。「今日は講習初日で少し緊張していたようですが、一生懸命に取り組んでいましたよ」程度で充分です。最後に「何かお気付きの点がありましたら、遠慮なくお申し出下さい」と伝え、1分ほどの会話で終えます。これならば、時間的負担も大きくありません。 よく、面倒見の良さを標榜する塾を見掛けますが、そのほとんどが「授業内の面倒見」に終始しています。それは大切なことですが、あくまでも必要条件であり、それだけで充分条件にはなりません。特に、講習は短期決戦です。ご家庭(保護者)にも「面倒見の良さ」が伝わることが必要です。保護者は塾からの電話を受けて初めて、「ああ、この塾にして良かった」と実感するのです。 次に重要なことは「3週間」です。8月末まで講習が続く場合はまだ良いのですが、講座によっては「盆休み前に終了し、あとは月末の模試を残すだけ」という場合もあります。そして、次に接触するのは帳票が返却されてきた9月末というパターンです。これでは、継続通塾を勧める機会も持てませんし、何より塾に対するロイヤリティが下がってしまいます。顧客との接触を3週間以上空けることは絶対に避けなければなりません。 夏休み前半で講座が終了する外部生に対してはブラッシュアップ講座等を設けて、塾に頻繁に来させる工夫が必要です。そして、模試の結果を基にした学習カウンセリングを9月末ではなく、8月末に実施します。解答用紙をコピーして自塾採点を行ない、模試終了直後に3者面談をセッティングしておくのです。これは顧客との接触回数を増やすと共に、クロージングに関わる重要な手法です。 もともと塾人はセールスが苦手です。継続通塾をしてほしいと思っていても、「よろしければ継続通塾をご検討ください」程度のことしか伝えられません。そこで、ダイレクト・レスポンス・マーケティングの手法を取り入れます。講習内容の習熟度、模試の結果を基にした個別の学習カリキュラムを作成し、8月末のカウンセリングでアドバイスを提供します。必要ならば、弱点克服教材も用意します。その上で、「9月以降、継続通塾していただければ、塾としてこうやって指導して課題を克服してもらいます」という解決策を提示するのです。ここでクロージングをします。「当塾は定員制なので、仮で○○君の席を確保しておきます。ご家庭で十分にご相談いただき、入塾をご希望されない場合は遠慮なく断わりの電話を1本だけ入れてください」と伝えておくのです。個別指導塾の場合も手法は同じです。つまり、「断わる場合も相手から申し出る仕組み」にしておくのです。これがダイレクト・レスポンス・マーケティングです。 人は、「AかBか」と刃を突きつけられて選択を迫られた場合、最も起こしやすい行動は…保留です。そして、保留している間に熱が冷め、現状維持を続けます。これでは塾にとって、そして何より講習によって学習意欲が沸き立っている生徒にとって不幸なことです。もともと、選択肢は相手が握っています。商品を押し売りすることはできません。ならば、生徒に対して塾が為し得る最大限の努力をして、後は相手に委ねることです。ビジネスにおけるセールスとは、その一環です。 最後の「3ヶ月」は言うまでもありません。3ヶ月以内に圧倒的な成果(成績向上)を実現することです。ニーズで成り立つビジネスの場合、3ヶ月以内に効果を実感させることができなければ顧客に見捨てられます。 講習を実施しながらできるマーケティングはあります。最善を尽して、全ての外部生を後期生として獲得してください。それが強い塾への第一歩であり、遠いようですが来春の爆発的な集客の第一歩です。