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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座113 理論武装には文章力が不可欠

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


-来年度に向けた戦略構築を開始せよⅢ-



塾からの通知はコミュニケーションのツール


今の時期から新年度移行期まで、塾では様々な「案内」を配布します。「入試直前講座のご案内」「友人紹介の依頼文」「新年度カリキュラムの説明」等々、十種類以上に及ぶことでしょう。ところが、多くの塾が配布物をインフォメーションとして扱っています。以前から指摘していることですが、これらはインフォメーションではなくコミュニケーションとして作成しなければなりません。ビジネスにおけるコミュニケーションとは、「こちらの意思を伝えて、相手に(自分が望むように)行動してもらうこと」です。なぜ「入試直前講座の案内文」を配布するのでしょう。言うまでもなく受講してもらうためです。ならば、読んだ生徒・保護者が受講したくなるような文面を作らなければなりません。紙面を通してコミュニケーションを図る必要があるのです。 例えば、表題一つにも注意が必要です。大抵の場合、工夫も無く「入試直前講座のご案内」としてしまいます。すると、それを読んだ相手(母親)は瞬時に思います。「ああ、またお金の掛かる話ね…」これでは、その後にどれだけ素晴らしい文章が綴られていたとしても、ある種の心理的バリアが張られたまま読み進めることになります。とても効果的とは言えません。また、理解することと納得することの違いにも配慮が必要です。人は理屈で理解したからといって、必ず行動に移すとは限りません。それどころか、社内会議などでよく見かけるのですが、議論で負けた側は「言い負かされた屈辱と恨み」を抱くことさえあります。すると、「意地でも動くものか」と逆に頑なになってしまいます。 保護者に対しても、ただ理解してもらうのではなく、納得してもらうことが必要です。その違いを言葉で表現するのは難しいのですが、いわゆる「腑に落ちる状態」を生じさせることです。前述の「入試直前講習のご案内」という直球勝負は心理的バリアを生じさせ、決して腑に落ちる状態に導くことはできません。表題はキャッチコピーと同じです。読者が文章を読みたくなるような魅力的なフレーズを持ってきましょう。すると、マイナスのバリアを張ることなく、あなたの主張に耳を傾けてくれます。 以下に、「入試直前講座」(個別指導塾バージョン)の見本を掲げます。

入試直前講座案内の見本

表題:人生初めての受験を不安に思っている「あなた」へ 日本ゴルフ界の重鎮、青木功選手はパットの名手として有名です。独特のフォームから必ずオーバーするようにボールを強く打ちます。「届かないパットは絶対に入らない」というのが氏の主張です。ある時、若手プロゴルファーが質問しました。 「そんなに強くパットして、外れた時のことは考えないのですか?」 青木プロの答えは明快です。 「外れた時のこと?そんなものは外れてから考えればいい。そんな心配をしていると、入るパットも入らなくなる」 パットを打つ時は、「入れることだけを考えろ」と言うのです。 受験も同じです。 落ちた時の不安は誰にでもあるでしょう。しかし、そんな心配をしていたら、合格するはずの学校にすら落ちてしまいます。ひたすら合格することだけを考えて勉強すればいいのです。そして万が一、不合格だった時は塾に責任を押し付けてください。私は「あなた」の不安と責任を全て引き受けます。 ただ、あなたには青木選手のように強くパットを打ってほしい。そのために、担当講師と塾長である私が熟考して、「あなたに必要なラストスパート・カリキュラム」を策定しました。これで志望校に合格しなかったら、どうぞ、全てを塾のせいにしてください。残された3ヶ月、我々も覚悟を持って指導に努めます。 追伸 保護者各位 正直、ラストスパート・カリキュラムの提案には躊躇しました。ご家庭に短期間とは言え、新たなご負担を強いることになるからです。しかし、生徒に『あの時、もっと勉強しておけば良かった』という後悔だけはして欲しくない…。今回ご提案のカリキュラムに無駄なものは一切含まれていないことをお約束いたします。趣旨をご理解の上、お子様の最後の頑張りをご支援いただきますよう、心よりお願い申し上げます。

生徒は青木功選手を知らないかもしれませんが、保護者には旧知の著名ゴルファーです。その青木選手の言葉を借りて、ラストスパートカリキュラムの重要性(必要性)を訴えます。次のような定型の案内文と比較してください。

表題:入試直前講座のご案内 日頃は当塾の指導にご理解をいただき、ありがとうございます。 いよいよ入試本番まで3ヶ月を切りました。生徒には最後まで全力を尽してほしいものです。そこで当塾では、以下の要領で入試直前講座を実施します。受講を希望される方は、申し込み用紙を○月○日までにご提出下さい。(以下略)

例え話を利用して訴える

青木プロのエピソードのように、例え話を利用するのは効果的です。直接的表現よりも、思わぬ方向から結論に落とし込んだほうが「腑に落ちる状態」を作りやすいのです。以前も紹介したかもしれませんが、例えば受験生に対して「最後まで諦めるな」と言っても、「そんなセリフ、聞き飽きたよ」と思われるのがオチです。そこで、こんな例え話を使います。


みんなはロード・オブ・ザ・リングという映画を知っていますか。その最終場面、人間の軍団と魔界の軍団が最終決戦をします。人間の兵士たちが待ち構えていると、山の向こうから魔界の軍団が十倍、百倍の数…雲霞(うんか)のごとく迫ってくるのが見えます。兵士たちが怯みます。その時、主人公の王が馬にまたがり、剣を振りかざして叫びます。 「確かに、我々人間が魔界の奴等に敗れる時が来るかもしれない。確かに、我々人間が魔界の奴等に支配され、虐げられる時が来るかもしれない。しかし…」 ここで彼はハリウッド映画史上、最高のセリフを吐きます。 しかし、それは今日ではない-It is not this day と叫んだのです。 確かに受験勉強は辛いかもしれない。「もうやめよう。志望校を諦めよう」と思うかもしれない。しかし、それは今日ではない!まだ今日できることがある。今日できることを今日やり、明日できることを明日やる…そうやって一日一日を過ごす者だけが栄冠を勝ち取ることができるのです。もし、挫けそうになったら唱えてください。しかし、それは今日ではない!…あなたの心に勇気をもたらす魔法の言葉です。

「諦めるな」と言うのに一秒あれば済みます。それを二分費やして訴えるのです。そのことで、生徒の腑に落ちます。 コピーライティングは塾経営者にとって重要なスキルです。理論武装は、優れた文章力によって構築されます。そして、文章力は訓練によって誰でも向上させることができます。諦めずにトライしてください。そう、あなたにとっても「しかし、それは今日ではない」のです。

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