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中小塾のためのマーケティング講座114 塾・ビフォーアフター

執筆者の写真: 森智勝森智勝

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


-全ては理念の構築から始まる-


塾からの通知はコミュニケーションのツール

人は技術に感心はするが感動はしない…私が常に主張する原理です。 かつてトランペットを吹くロボットが開発され、公開されたことがあります。あのロボットは、100回スタートボタンを押せば、100回ミスなく演奏します。素晴らしい技術です。しかし、そのロボットの演奏会に感動し、1万円の入場料を払う人はいないでしょう。日野皓正という有名なトランペット奏者がいます。彼は100回演奏すれば1度や2度のミスはするかもしれません。それどころか、「一度たりとも満足する演奏ができたことがない」とすら発言しています。それでも、彼のコンサートには多くのファンが駆けつけます。人はデジタルではなく、アナログに感動するのです。けっして歌が上手いとは言えないAKB48のコンサートに、何万人ものファンが詰め掛けるのも同じ原理が働いています。 この原理を塾に置き換えると、次のように表現できます。「人は指導技術には感心するが感動しない。人が感動するのは、教師の人間力そのものだ」 誤解のないように申し添えますが、だから指導技術は軽視してもいいわけではありません。指導技術は塾経営にとってのコア、必要条件です。そこで止まっていては充分条件を満たせないということです。 塾の人間力の源(みなもと)は、塾の理念に集約されます。理念とは企業としての存在意義そのものを表現する者であり、塾のあり方を明文化したものです。塾によっては経営理念と教育理念に分けているところもあるでしょう。ところが、中には理念を明文化していない塾もあります。それでは、地域の共鳴・共感を得ることは難しい。塾経営全般を見直すとき、まずは理念の構築から始めるべきです。 すると、「いえ、私はただ子どもが好きで教えるのが好きで塾を始めたので、高尚な理念などありません」とおっしゃる塾経営者がいます。本音としては多くの塾経営者が同意する心情だと思います。私自身を振り返っても、学生時代のアルバイトからこの世界に「何となく」入ったものです。当時の心境をあからさまに吐露すれば、「好きなことをやって生きていけたらいいなあ」程度の安易さだったと思います。しかし、目の前の生徒と格闘し、情が生まれると共に、「この子を何とかしてあげたい」「生徒たちの未来に貢献したい」という思いになってきました。私自身も生徒たちに成長させてもらったという実感があります。高尚な名文ではなく、日々の業務を通して湧いてきた思いを明文化すればいいのです。それが理念です。 ただ、我々はボランティアではなくビジネスとして社会貢献する道を選んだ者です。出来る限り多くの人の心に刺さる「理念」に磨き上げる作業は不可欠です。それがマーケティングです。マーケティングとは、あなたの思いを早く正確に市場に届ける技術のことです。 理念は塾経営の道しるべになります。つまり、「理念に適うことは全て実行する。理念に適わないことは一切取り組まない」という内部規律が構築されます。スタッフも、いちいち経営者の顔色を見ながら行動することもなくなります。理念は憲法の前文のようなものです。


塾の教育理念・ビフォーアフター

とある塾で、教育理念の構築を進めたことがあります。塾内の議論の末、作られた理念は次の通りです。 (ビフォー)

【教育理念】 人に役立つことに喜びを感じる人間になろう。そうすれば必ず、自分も幸せになる。 人に役立つために、知識を身につけ自分を育てよう。そのためには、まず自分に自信を持とう。 一人一人それぞれ個性を生かした自分自身の存在価値を認めよう。 そうしたことを実現させるためにどうするか。 「勉強の目的をしっかりと認識し、自分を磨く」これが我々の教育理念です。

苦労の後が偲ばれますが、言葉をこねくり回した?弊害が出ています。全体の言葉のつながりが不明になっています。例えば、「人に役立つために、知識を身につけ自分を育てよう。そのためには、まず自分に自信を持とう」の部分ですが、自分に自信を持つことで「知識を身につけ自分を育てる理屈」が分かりません。有体に言えば脈絡がないのです。また、構成上も不細工?です。前述したように、ここで言う理念とは地域に対して主張すべき「建前」です。地域の人の共鳴・共感を得て、地域に自塾が存在する意義を納得してもらうためのものでなければなりません。そのためには、ある程度の形式美が必要です。そこで、某塾の思いを壊さずに私が校正した理念が次です。

(アフター)

【教育理念】 人に役立つことに喜びを感じる人間になろう -そうすれば必ず、自分も幸せになる 人に役立つために、知識を身につけ自分を育てよう -そのためには、まず学力を身に付けることだ 一人一人それぞれ個性を生かした自分自身の存在価値を認めよう -そのためには、まず自分に自信を持つことだ そうしたことを実現させるために今、何をすべきか… -勉強の目的をしっかりと認識し、学問を通して自分を磨くことだ これが我々の教育理念です

いかがでしょう。全体の意味も通り、シンメトリー的な形式美も感じられるのではないでしょうか。この塾は、理念に添った主張を始めました。「なぜ、勉強しなければならないのか」「なぜ、成績向上を目指さなければならないのか」「なぜ、塾が厳しい指導をするのか」…全て答えは理念の中にあります。 また、こうした理念を浸透させることで職員の行動にも変化が出てきます。アルバイト学生(この塾は個別指導専門)まで担当生徒のカリキュラムを作成するようになりました。例えば、これまでは季節講習(夏期講習等)のセールスに消極的だった時間講師が、生徒のために本当に必要なカリキュラムを作成し、勧めることによって売上も圧倒的に向上しました。最近作成した「受験直前講習提案書」では、総額30万円以上になるカリキュラムを提案した家庭の多くが受け入れ、全体では昨年対比二〇〇%増になりました。 職員も理念を受け入れ、「本当に生徒のために必要なカリキュラムを、自信を持って作成し勧めた結果」です。それまでは、「売上を上げるために…」という意識が消極的セールスの原因でした。どこかで「塾の売上のために勧めていると思われるのではないか」という恐れを抱えていたのです。しかし理念の構築によって、職員全員が「塾生ひとりひとりに本当に必要な学習は何か」の一点だけに集中し、結果として作られたカリキュラムに自信を持てたことが大きいのです。 塾の現場で働く人は常に、「教育と経営」の矛盾に悩んでいます。本当は矛盾など存在しないのですが、その幻影に惑わされています。理念の構築は、そうした職員の迷いを払拭することにもつながります。ぜひ、理念の構築に取り組んでください。

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