この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2008年12月私塾界掲載分
4つの鍵が未来への扉を開く
現在、中小・個人塾の中でも二極化が進んでいると言われています。どういった塾が生き残り、勝ち残りができるか。その条件は何か。今回は改めて4つの要素についてお話します。 ひとつは以前から主張している「リーダーシップ」です。
これからの塾業界は「客待ちビジネス」をしていたのでは立ち行きません。自らが地域に対して啓蒙しながら「商品」を提供する「マスタービジネス」に転換する必要があります。これまでの塾経営者は遠慮がちで奥床しく、自らの主張を声高に言うことはありませんでした。それでも拡大発展の時代、多くの人が平均点を望む総中流社会の時代は良かった。ところが、今は成績中間層の塾離れが顕著な「2対8の法則社会」の時代です。何も主張をしないと「見込み客」の数が劇的に減少してしまいます。「あなた」が地域のオピニオン・リーダーとなって大人たち(保護者)を啓蒙する活動が必要なのです。それが「マスター・ビジネス」です。あなた自身がマスターとなって積極的に活動することが求められています。時代は強いリーダーシップを支持しています。 2つ目がマネジメントの力です。
居酒屋和民の社長、渡邊氏は言います。
「これからの店舗経営は科学が必要だ。」 もう、家庭内手工業が通用した時代は過ぎました。ビジネスを科学として構築した企業が圧倒的な強さを発揮します。特に中小・個人塾の弱点はマネジメントです。「管理」というと冷たい感じがしてしまいますが、もともと所有している能力を最大限発揮するための手法を考えるのがマネジメントです。教室の運営をいかに効率よく、過不足なく進めるかを考えることです。この部分を行き当たりばったりにしていると、結局、非効率な「作業」に時間を取られ、最大限の能力を発揮できないということになります。 マネジメントにはもう一つ、セルフ・マネジメントという重要な要素があります。個人、それぞれが「どんな人物」を演じるか…自分をどう見せるかというテーマです。これが重要なのはディズニーランドを見れば分かります。あそこの従業員は全てキャスト(役者)と呼ばれ、末端のバイトに至るまで「夢を売る妖精?」を誇りを持って演じています。そのことで、テーマパーク不況の時代にも一人勝ちしているのです。 「あなたは明るく振舞うこともありますが、本当は寂しがり屋ですね。」これは占い師が使う常套句です。すると、たいていの人(特に女性)は「当たってる」と思ってしまいます。それは、自分のことは自分が一番知らないことの証拠に過ぎません。つまり、「あなたの実像」は「あなた以外の人が知っている(認識している)あなた」に他ならないのです。そうであるならば、理想の自分を演じて、他の人の評価を得ることができれば、それが「本当の自分」です。3ヶ月、理想の自分を演じることができれば、それが「本当の自分」になります。 塾も同じです。「どんな塾」と思って欲しいかを考えることです。それさえ決まれば、為すべきことが見えて来ます。これも3ヶ月続ければ、必ず地域に浸透できます。「自塾の理想の姿」を20秒以内で説明してみて下さい。説明に20秒以上かかる「セルフ・マネージメント」は他者には伝わらず、理解されません。 3つ目の鍵はコミュニケーションです。
コミュニケーションに関しては先月号でも取り上げましたので重複は省きますが、一つだけ強調したいのは「文章力」を磨くことです。 塾と家庭とのコミュニケーションは様々な文章を通して行われています。ただ、多くの塾がコミュニケーションではなく、インフォメーションになっているため、思うように相手が動いてくれません。「○○のご案内」も「ニュースレター」も…全てはコミュニケーションの手段です。コミュニケーションは基本的に「ワン・ツー・ワン」で行われるものです。「皆さん」「あなた方は」等の複数形を使った瞬間、それはインフォメーションになってしまいます。読者が自分のこととして捉えてくれなくなります。コミュニケーション能力を高めることは、塾に限らず、全てのビジネスに必要なことです。客の存在を無視したビジネスは存在しません。 最後の鍵はモチベーションです。
子供の学習意欲、スタッフの労働意欲を高める手段を講じることは塾経営者の最大の仕事です。ビジネス全般に言えることですが、消費者の購買意欲を高めることは最も難しく、そして、最も重要な要素です。 例えば、授業の最後に宿題を出して子供のモチベーションを下げたまま家に帰す塾がほとんどです。そして、そのことを当たり前と思い、疑問に感じてきませんでした。しかし、宿題を出されて喜ぶ子供はいません。その瞬間、テンションは下がります。その日の授業で、せっかく高めたモチベーションを下げたまま帰すのはもったいない。(モチベーションの上がらない授業は論外ですよ。) 解決策は2つ。ひとつは宿題を出すタイミングを変えること。ちゃんと授業設計さえしていれば、その日に出す宿題はあらかじめ分かっているはずです。最後に提示する必要はありません。極端な話、授業の冒頭で提示してもいいはずです。 二つ目は宿題の意義をしっかり伝えること。なぜ、この宿題が必要か、この宿題をすることでどんな効果があるのか…いわゆるインフォームドコンセプトです。意味もなく出される(と、感じさせる)宿題に対して子供は反発し、モチベーションを下げてしまいます。その日の気分で?宿題を出している塾に見られる傾向です。 秘策?としては授業の最後に「予告編」をすることです。次回の授業では「こんな面白い分野に突入するぞ」というイントロダクションを披露します。映画館に行くと「撮影快調」「近日公開」という予告編をしていますよね。あれは実に良く出来ていて、誰もが本編を見たくなってしまいます。それの応用です。
「さあ、来週はいよいよ鎌倉時代に突入だ。みんなも小学生のとき『いいくに作ろう鎌倉幕府』で覚えたよね。1192年、鎌倉幕府の成立。ところが、実際には1185年の成立という説もあるんだ。それはね…おっと、いかんいかん、来週のお楽しみ。来週はますます面白くなるぞ。」
まあ、歴史好きの私なら、社会の授業の最後はこんな感じでしょうか。理科は「不思議発見」の宝庫ですし、工夫さえすれば他の科目でも可能なはずです。
生徒のモチベーションを上げる工夫は、塾にとっての生命線と言えます。
そして、最大のキーポイントは「あなたのモチベーションを常に高めること」です。エネルギー伝播の法則から言っても、あなたのモチベーションが高くなければ、周りの人のモチベーションを高めることは出来ません。私が常々、外に出ましょう、セミナーや交流会に参加しましょうと言うのは、それが「あなたのモチベーションを高める」ための最高の手段だからです。塾の経営者、特に個人塾さんは、家と教室の往復で日々を過ごしています。人は、繰り返しのルーティーンワークの中で、知らず知らずのうちに惰性に陥り、モチベーションを失います。実は、経営者としてこれが最も怖い。思考が硬直化して負のエネルギーを醸造し始めます。
常に変化を求める勇気を持つ
これら4つの要素全てに共通しているのは変化を求めることです。5年以上続くこのニュースレターで一貫してお伝えしていることは「変化の重要性」です。私は「変化」=「成長」と考えています。成功した経営者は口を揃えて言います。「変化を恐れるな」と。変えてはいけない重要なコアを守るために変化する…塾にとっては教務という「商品力」が最重要なことは言うまでもありません。あなたは「学習指導」を一人でも多くの子供たちに提供することを使命とし、生き甲斐としているはずです。 4つの鍵は、その生き甲斐を守るために存在しています。その鍵を思わず知らず落としませんように。
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