この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2009年4月私塾界掲載分
深刻な不況を認識せよ
内閣府が十六日発表した二〇〇八年十~十二月期のGDP(国内総生産)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比3.3%減、年率換算で12.7%減となった。マイナス幅は第1石油危機に見舞われた一九七四年1~3月期(13.1%減)に次ぐ大きさ。2けたの減少は約三十五年ぶりで、戦後2度目だ。経済成長の要である輸出は過去最大の減少率を記録し、世界的な景気後退の波が直撃した日本経済を浮き彫りにした。 今年1~3月期も大幅な改善は見込めず、初の4期連続のマイナス成長が現実味を帯びている。与謝野馨経済財政担当相は会見で「戦後最大の経済危機だ」と明言した。
GDP悪化は自動車や電子部品などの輸出が13.9%減と急減したのが主因。設備投資は5.3%減で4期連続のマイナス、個人消費は0.4%減だった。実質GDPを押し下げた寄与度は「内需」がマイナス0.3%、輸出から輸入を引いた「外需」がマイナス3.0%となった。物価変動を反映し生活実感に近いとされる名目GDPは1.7%減(年率6.6%減)。総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比0.9%上昇した。08年暦年の実質GDPはマイナス0.7%で、9年ぶりのマイナス成長。一方、十~十二月期の米国の実質成長率は年率3.8%減、ユーロ圏(16カ国平均)は同5.7%減で、日本経済の不振ぶりが際立っている。
以上が二月十六日に発表された報道記事です。予想されていたとは言え、日本中にかなりの衝撃を与えました。今回の不況はバブル崩壊後の不況と違い、アメリカを中心とした世界規模での消費の落ち込みが原因です。不況脱出の鍵が海外にあるだけに、これまで日本が経験した不況の中で最も深刻なのかもしれません。また、二月中旬は、多くの中小塾にとって新期生募集の真っ最中です。こうしたニュースが少なからぬ影響を及ぼしていることと推測します。 もともと景気の「気」は気持ちの「気」と言われるように、人々の精神面に影響されやすく、また、その逆の現象も起こり得ます。つまり、「不況」という風に影響を受け、まだ経済的には変化のない家庭(人々)まで出費を控えるという現象を生み出します。それが景気をさらに悪くするという悪循環を招くのです。 身近なところで言うと、この春に入塾させようか…と迷っている家庭が、景気の動向が落ち着くまで様子見をしてしまいます。実際、二月初旬に折り込んだチラシの反応率が例年に比べて極めて悪いという報告も数多く寄せられています。こうした時、募集戦略について塾が考えなければならないことは何でしょう。 塾の対応策として考えなければならないのは2つです。まず、「今年から通塾しようかどうしようか…」と迷っているご家庭に対して、「入塾」を決断させるための「刺激」を提供する必要があります。これまでも再三主張してきた、いわゆる「あなたのリーダーシップ」「マスタービジネス」が必要になってきます。様々な媒体を通して「勉強することの重要性」を訴え、共鳴してもらわなければなりません。不況時でも子供の教育は不断の投資として必要なことを理解してもらう必要があります。 2つめは、5月まで…あるはい夏期講習までの長期的スパンを見通した募集戦略を考えることです。なかなか決断できない見込み客…例えば、問い合わせの電話だけで終わった方を、いかにして「見込み客」としてつながりを維持できるか、その仕組み作りを構築することです。例を挙げると、ご家庭の関心事に関するレポートを用意して(例:子供が自発的に勉強に取り組むための5つの法則)、問い合せてきたご家庭に無料提供する準備をします。そのことで、無理なく見込み客情報(名前、住所、電話番号等々)を入手することが出来ます。こうした情報がなければ、後日のアプローチ(DM等)も叶いません。顧客とのコミュニケーションの重要さは言うまでもないのですが、こうした「見込み客」ともネットワークを構築することが今後のマーケティング手法として欠かせなくなることでしょう。
紹介制度の拡充・見直しを急げ
不況時には「衝動買い」をする人がいなくなります。先月号でもお話したように、費用対効果に対する意識が高くなるのです。そうした時、購買の決定打となるのが「信頼の置ける人物のおススメ」です。これまで以上に「紹介」による塾生獲得の仕組みが重要になってきます。紹介については過去に何度も取り上げましたので、ここでは復習の意味でポイントだけお話します。 「紹介状」や「紹介カード」を用意することは大前提として、まず、紹介しやすい仕組みを用意します。どれほど良い塾だと思っていても、いきなり入塾をおススメするのは怖いものです。そこで、ある一定期間の「体験授業」を用意します。「体験授業のおススメ」ならば、重い責任感を持たずに行動に移せます。あるいは、オープン講座としての「保護者セミナー」や「教育相談会」も有効です。とにかく、紹介する人の精神的負担、ハードルを低くする工夫をして下さい。 同様に、紹介のお礼も「三千円分の図書券」などのような金券は避けたほうがいいでしょう。三千円という数字がリアルすぎます。
どんなに良い塾だから紹介したいと思っても、「三千円の図書券欲しさに紹介した」と思われるのは誰もが嫌なのです。そうした後ろめたさを消す工夫が必要です。以前にご提案したのは、「図書券に替えて『おコメ』を送ったらどうでしょう」ということです。
誰も、「おコメ欲しさに紹介した」とは思わないでしょう。また、きっと地域での話題作りにも一役買うことと思います。「このお米で美味しい朝食を作ってあげて下さい」のようなメッセージカードを添えれば、より好意的に受け取ってもらえるはずです。 映画やテーマパークのようにウォンツで成り立つビジネスと違い、ニーズで成立する塾は口コミ、評判が起こりにくいものです。そこにまとわり付く「責任」や「後ろめたさ」を出来る限り消し、ハードルを低くする工夫を考えて下さい。
その上で、堂々と保護者に対して「紹介のお願い」をすれば良いのです。そこで遠慮する必要はありません。
今年は塾業界にとっても試練の年です。しかし、だからこそ自塾を強くする好機でもあるのです。
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