この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2009年5月私塾界掲載分
「案内」は伝えるべきことを的確に伝える
今回は久しぶりに実践編をお届けします。とある塾がそれまでのマンツーマン個別指導から映像教材を使用した自立学習型指導体制に変更することになりました。そのための「説明会」を開催することになり、案内書を作りました。まずは、その案内書をお読み下さい。塾長の了解を得て、全文掲載します。
塾生のみなさん,保護者各位 カリキュラム変更のお知らせ 日頃は○○塾の指導にご理解をいただき、ありがとうございます。 ○○塾は単に「成績」だけを追求する指導ではなく、「勉強する」目的を「生きる力」=「自ら学びとる力」を身につけることと捉え、その結果としての「成績」を追求しています。また、テストは「個人の現在の実力を測り、自分を次の段階へと向上させるための指針」であり、「テストのために勉強するのではなく、勉強するためにテストはあるもの」と位置づけて指導しています。テストに向けて「目標」を掲げ、「計画」を立てて「行動」する。「結果」をしっかりと「反省」し、次なる「目標」と「計画」を立てる。この繰り返しにより、成績ばかりでなく、自分自身を向上させることができるからです。 ○○塾では、それを実践するために中学生全員に定期テスト毎に「目標達成宣言」を行っています。ひとりひとりが自分なりに次のテストの目標を設定し、それを教室に貼り出しています。「目標達成宣言」は生徒ひとりひとりの学力向上、人間性の向上のために当塾においては必要不可欠のものとなっています。 ○○塾は、その生徒一人ひとりが「生きる力」=「自ら学びとる力」を一層身につけるために、平成21年4月度よりカリキュラムを別紙の通り変更します。しかし、どうしても紙面ではお伝えしきれない部分があります。3月15日(日)午前10時より説明会を開きますので、ぜひご参加ください。当日ご都合が悪い方には個別にご説明します。 生徒一人ひとりを大切の考えた上での今回のカリキュラム変更です。趣旨をご理解の上、今後ともよろしくお願いします。
ここに、中小・個人塾さんが陥る失敗例が凝縮されています。順番に見ていきましょう。
まず、文章自体は上手なのですが、この案内で何を伝えたいのかが分かりません。本来は、表題に全てが凝縮されなければいけません。当然「カリキュラムの変更」がメインのテーマのはずです。ところが、本文では理念に関わる話と、主題とは関係のない「目標達成宣言」の話が続きます。そしていきなり?「生徒一人ひとりが『生きる力』=『自ら学びとる力』を一層身に付けるために」という理由でカリキュラムの変更を宣言します。いわゆる美辞麗句を並べただけの説得力のない文章になってしまっているのです。
多分、書き手の側に「不安」があるのでしょう。もしかしたら、今回の改変(映像教材の導入)が、単に人件費削減の手段として理解されるのではないかという不安です。それを解消するために精一杯の美辞麗句を駆使している…申し訳ないのですが、私にはそう感じられました。もちろん、映像教材導入の理由のひとつに「経費削減」があるのかもしれません。しかし、本来の理由は、もっと前向きな…例えば、より良い学習環境の整備等があるはずです。そうした積極的な意味付けを表現する文章でなければ、塾側の真意はますます伝わらなくなります。具体的には、「これで塾生たちの学習環境が進化し、より効果的に学力向上が図れるぞ!」という思い、塾長のワクワク感を言葉に込めることです。
コピーライティングは「あなたの思い」を伝える技術
私は、依頼を受けて見本の文章を作ったのですが、まず「表題」を紹介して解説します。 私が捻り出した見出しはコレです。
重要なお知らせ-塾革命を起こします-
「塾革命」という言葉に、塾長の積極的な改革の意気込みとワクワク感を込めました。こうした「案内」の見出しは、チラシで言うキャッチコピーと同じです。一目で読者の興味を惹かないと、真剣に読んでもらえません。
保護者の返事を必要とする案内に対するリアクションが遅い(お願いした期日までに回答が寄せられない)原因の大半は、保護者側ではなく塾側にあると思って下さい。
「○○のお知らせ」「○○について」という見出しが目に飛び込んで来た瞬間、たいていの読者は興味を失うものです。読者の興味を惹き付けるキャッチコピー(見出し)を考え出せれば、その案内は半分以上成功です。 文中では次のような内容を付加しました。
(前略)より効果的な指導方法はないか、より費用対効果の高いシステムはないか…それが、ここ数年間、私の頭を離れない命題でした。多くの教材展示会に足を運び、セミナーに参加し、理想の指導システムを追求する日々を過ごしました。 そして、ついに見つけたのです。 これを採用すれば、「予習」⇒「演習」⇒「解説」⇒「定着」という子供たちにとって最も効果的な学習を最も安価に提供できるシステムを…。 それは、飛躍的に向上した複数のIT映像教材と、今まで通りのマンパワーを組み合わせた最強の学習法です。 「この方法ならば、今までよりも効果的に5科目指導が出来る!」私の塾人としての血が騒ぎました。(後略)
正直、こうした途中経過や自分の感情の吐露は必要ありません。
しかし、自らの感情を表現することで、読者に共鳴させる効果が生まれます。自分が感じたワクワク感を共有してもらうことが目的です。そのことで、新しい学習システムに対する期待感も高まり、説明会へと足を運んでくれることにもつながるのです。
中小・個人塾の経営者は、こうした「演出」が苦手です。しかし、コピーライティングは「あなたの思い」を早く、正確に伝えるための重要な技術です。
ぜひ、スキルを磨いて下さい。
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