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  • 執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座70 購買理由を「客」に提示しているか!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2009年6月私塾界掲載分


自分の都合を相手に押付けない

とある中小企業団体の総会に招かれ、基調講演を務めてきました。総会が予定以上に伸び、二〇分遅れで私の講演が始まることになったのですが、開始前に幹事の方から要請がありました。

「この後、懇親会が控えていますので、予定通り○○時終了でお願いします。」

もちろん、私も講演のプロ?ですから時間を短縮して話すことは可能です。

しかし、依頼者側の姿勢としてはいかがでしよう。総会が延びたのは主催者側の都合です。それを「講演を依頼した講師」に調整を押付けるのは賛同できません。私は正直者で、すぐに顔に出る性質(たち)らしく、雰囲気を察した幹事が「いえ、五分でも十分でも短縮していただければ結構ですから」とフォローしましたが、正直、私のテンション(モチベーション)は大きく下がりました。慣れ親しんだ?塾業界ではない業種の集まりでしたので、珍しくレジュメも作り、それなりの準備をしていたのが一部無駄になったのですから。また、出席者の中には森の講演を楽しみに来てくださった方が少なからずいらっしゃったようで、「講演時間が短くなって残念でした」と数人から声を掛けていただきました。 さて、塾の現場でも同様のこと(無意識のうちに生徒のモチベーションを下げること)が起こっていたりします。例えば、前回の授業で宿題を出したことを忘れて授業に臨む教師がいます。授業終盤に生徒から指摘され、慌てて答え合わせだけをする…一生懸命に宿題に取り組んだ塾生はガッカリすることでしょう。ガッカリした生徒が、次からは宿題に手を抜く様子がありありと目に浮かびます。 あるいは、個別指導の塾で頻繁に起こっていることですが、振替を約束した日に生徒が行くと、その情報が連絡ミスで伝わっていなかったらしく、その日の担当者が思わず「あれっ、○○君、今日はどうした?」と声を掛けてしまいます。「今日、振替で…」の一言で気付き、「あっ、ごめん。そこの空いている席に座って待っていて。すぐに準備するから…」と現場レベルで対処することになります。現場では上手く対応したつもりでも、生徒本人、そして、この様子を家庭で聞いた保護者はどう思うでしょう。やっぱりガッカリするに違いありません。それどころか、「私の子供は軽んじられている」とさえ思うかもしれません。 つまり、現場のミスを「客」に転化することで処理していると、確実に「客離れ」を起こしてしまうのです。(前述の例の場合、私は「客」ではありませんが…)これらに共通しているのは、形式主義です。「形式上、宿題の答え合わせをした」「形式上、振替授業をした」…それで「よし」としている塾に進歩はなく、いずれ市場から見放されることでしょう。なぜなら、そこには相手の感情を思いやる精神が欠けているからです。人は、そうした無神経な?人物とは付き合いたくないと考えているものです。 ミスは付きものです。まあ、自分で出した宿題を忘れるのは論外ですが、振替の連絡ミスを根絶することは難しいでしょう。問題は、その後の対応です。多くの塾が「まあ、現場サイドで上手く対応したからいいけれど、次からは気をつけてくれよ!」程度で済ましてしまいます。生徒本人の、保護者の感情にまで思いやることができません。こうした時、絶対に必要なことは一本の電話を入れることです。

「申し訳ありません。当方の連絡ミスで今日の○○君の指導準備が出来ていませんでした。そのため、今日の学習時間を○○分、延長させていただきます。今後、こうしたことがないように塾内の連絡体制を見直します。」

生徒本人の口から保護者に伝わる前に、事情を説明し、お詫びすることです。こうした対応を採ることができれば、保護者の塾に対する感情が悪化することが避けられます。(「子供から伝わる前」というのが最重要です。)また、実際に実効性のある対策を採ることができれば、「根絶」は無理でも「激減」は可能になってきます。また、そのことで塾が目に見えて変化すれば、当事者も快くミスを許してくれます。(この場合、具体的な改善方法をしっかりと保護者に報告することをおススメします。) つまり、自分の都合ではなく、相手の感情に立ったマーケティングを実施すること、それが以前から私が主張している「感情の論理」です。

常に購買理由を提示することが必要

現在のように百年に一度の大不況になると、消費者マインドが冷え込みます。衝動買いが激減し、オプション商品の売れ行きが悪くなります。ただ、潜在的購買力については日本が世界でトップクラスであることは間違いありません。日本人は購買力は持っているのです。ただ、購買理由が分からないのです。 今後の塾業界の問題として夏期講習等のオプション商品の販売が難しくなることが予想されます。受験学年は購買理由がハッキリしていますので大丈夫だとは思いますが、他学年に対しては充分な配慮が必要です。「夏期講習のご案内 今年も例年のように下記の要領で…」という案内では、保護者は購買理由が分かりません。「…だから、この講習を受講する価値があるのです」という主張が不可欠です。その場合、商品の良さや安さだけを強調しても効果は薄いでしょう。すでに自動車を持っている人(緊急な購買理由を持たない人)に対して、ステアリングがどうの、燃費がどうの、価格が…と説明しても、それは購買理由にはなりません。同様に、夏期講習を緊急必要としていない家庭に対して、「カリキュラムの素晴らしさ」や「教材の素晴らしさ」をどれだけ訴えても、受講理由にはなりにくいものです。 一つ、私がかつて実践していた具体例を提供します。

昔、現場で英語を教えていたとき、クラスで一人だけ1学期の期末試験で九〇点以下を取った中1男子生がいました。それでも他教科の倍近くの得点です。 私は本人と保護者を説得して、夏期講習で英語を単科で受講してもらいました。その甲斐あって、二学期最初の実力テストで彼は百点を取りました。それが自信になったのか、それ以後も英語の勉強を熱心に続け、今では有名私立高校の英語教師をしています。 この事例を夏期講習の案内に「物語」として紹介するのです。 そして、「人生を決める瞬間が夏期講習の中に必ずある。だから君(お子さん)は講習を受けるべきだ」という主張をしたのです。すると、受験学年以外の受講率が向上しました。 もちろん、塾側の熱意や準備の様子が伝わったことも要因としてありますが、「受講(購買)理由」を提示(それも具体例を挙げて)したことが効果的だったと考えています。

この購買理由を提示するということは、今後ますます重要になってくると考えます。少なくとも「失われた十年」を超える不況を覚悟しなければいけない時代に突入している今、売り手のそうした姿勢が売上を大きく左右するのは間違いありません。

感情の論理に立ってマーケティングを構築することは、面倒で頭が痛くなるほど知恵を絞る必要があります。しかし、だからこそ一人の頭脳が百人の頭脳に勝つことも不可能ではないのです。中小・個人塾が大手塾(資本の論理)に対抗できる鍵がここにあります。

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