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  • 執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座71 「感動を売る」の本質とは?

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2009年7月私塾界掲載分


車のトップセールスマンに学ぶ販売の極意

私の同級生で、トヨタのディーラーでトップセールスマンだった男(A氏)がいます。A氏は、ノルマ厳しき自動車セールスの世界で常にトップを走り、何度もトヨタ本社から表彰されている男です。その彼のセールスの極意は…「車を売らないこと」だそうです。 まず、文字通り、A氏は車を売り渋ります。例を挙げると、次のようなことです。 今でこそ若者の車離れが問題になっていますが、かつて、若者(特に男性)の興味は「車」と「女性」と決まっていました。高卒で就職したばかりの十八歳の若者が、ローンで車を買うべく販売店に大挙して足を運びます。 その時、ほとんどの販売員は「これ幸い」とばかり車(トヨタならカローラ)を売りつけます。 ところがA氏は違います。 車を購入すると、ローンが月々○万円。駐車場代が○万円。ガソリン代が…保険料が…と、必要経費を計算して教え、そこで再考させたそうです。 そして、親と同居ならば父親と一緒に来るように促します。父親の前で生活設計を確認し、やっと車を販売したのです。 あなたも覚えがあると思いますが、初めて自動車を購入した後、思わぬ経費(ランニング・コスト)に苦労するものです。車を売りたいだけの人は、そうした負の部分には極力触れず、とにかく契約書にサインさせてしまいます。 ところがA氏は、そうした負の部分まで全て説明し、納得をした人にだけ車を販売したそうです。それは、相手が若者でも立派な紳士でも変わりません。 すると、何が起こったか…リピート率が断然違ったのです。 それはそうでしよう。「ああ、この人は車を売りつけるだけではなく、自分の生活設計まで気を配ってくれている」と思えば、信頼しますよね。次の車もこの人に頼もうと思いますよね。友人が車を欲しがっていたら、「親身になってくれるディーラーがいるよ」と紹介もしたくなりますよね…。

もちろん短期的に見れば売り逃した客もいることでしょう。しかし、長期的にみれば圧倒的な販売実績に差がでることをA氏は証明しています。 副産物もありました。十八歳の若者に車を売るとき父親に同行を求めたのですが、そうした真摯な販売態度に父親が感心し、父親までもが顧客になってくれることが続出したのです。息子にはカローラ、父親にはクラウン…一石二鳥です。 ご存知のように、トヨタの販売網は系列で分かれていますので、ディーラーごとに「トヨタの車」でも売ることができない車種があります。顧客から「売ることができない車種」を求められると、A氏はその旨を伝えて別のディーラーを紹介しました。 ここでも、彼は車を無理に売ろうとしません。すると、多くの顧客が「そうか、君のところでは扱っていないのか。では、同レベルの車で、君のところでは何が売れるのかい?」と言って、希望車種の購入を諦めてくれたそうです。 つまり、「何を買うか」よりも「誰から買うか」を優先する客が大勢いたということです。 この事例は大きな示唆を与えてくれます。 以前から私は「授業を売るな、感動を売れ!」というテーマで話したり、文章を書いたりしていますが、車を売るときも同じだと知りました。つまり…これはビジネス全てに共通する普遍的テーマなのでしょう。(誤解のないように付け加えますが、それは「商品」のクオリティはどうでもよいという意味ではなく、それだけでは充分条件にならないという意味です。) A氏は「車を売らずに自分を売ってきた」と言いましたが、言っていることは同じ。

「感動」を創造できるのは「車」という形式知ではなく、「人」という暗黙知です。ここにフォーカスしたビジネスモデルを構築しなければ、どんなに優れた「商品」を用意しても売れません。

もちろん、誰もが欲しがる商品…フィーバー中の(表現が古い?)「たまごっち」や「ドラゴンクエスト」を仕入れることができれば、店に並べた端から売れるでしょう。でも、それでお仕舞い。

もし、あなたが商品に感動を乗せて売ることができれば、客は「次の感動」を期待して「あなたのおススメする商品」を待つことになるでしょう。 A氏の真摯な販売方法に感動した父親が、A氏からクラウンを買うようになるメカニズムがそれです。そして、次の感動を求めてリピーターになっていきます。その期待に応え続けること、上回り続けることが「あなた」の役目です。

塾が商品(授業)以外を売ることとは

さて、あなたは商品以外の何を売りますか?商品にどんな付加価値(感動)を添えて売りますか? 時期的に「夏期講習」や受験生向けの「入試対策講座」等の「オプション商品」の「販売」が始まりますが、商品をむき出しのまま提供したのでは無理が生じます。それは、あたかもピーマンを素材のまま皿に乗せてレストランで提供するようなものです。

食べやすいように加工したり、その栄養素を説明したり、それを食べることの効用を見せてあげたり…そうした工夫の一つ一つが客を感動させるのです。 例えば、チラシ等に「当塾は学力だけではなく、生きる力を身に付けることを目指す塾です」と書く塾があります。その趣旨は素晴らしいのですが、それだけで感動する保護者はいません。そこに、あなたの考える「生きる力」の具体的姿を見せてあげることです。

例えば…

「生きる力」とは、概念的に言えば「社会に貢献する力」であり、抽象的に言えば「社会で秀(ひい)でた能力」です。具体的に例を挙げるとこうです。 医者は、我々が持っていない「病気を治す能力」によって社会貢献をしている。 イチローは我々が持っていない「野球の能力」によって社会貢献している。 浜崎あゆみは我々が持っていない… つまり、どんな分野でも構いませんが、一般の人が持っていない能力によって社会貢献できることが「生きる力」であり、それを習得する過程が「成長」なのです。子供たちは正に、この「生きる力」を習得すべく成長過程の真っ只中にいます。 そして、その習得手段の代表が「勉強」なのです。

こうした解説を加えることで、保護者の「そうですよね!」という共鳴や感動を得ることができます。この一工夫をすることが「商品(授業)」以外を売ることであり、その言葉を紡ぎ出す「あなた」を売ることに他なりません。

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