この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2009年8月私塾界掲載分
講習生で終わらせることのリスク
本誌を手に取った今、各塾では夏期講習がスタートした頃だと思います。多くの外部受講生が既塾生に混じって講習を受けていることでしょう。この外部受講生を9月以降の入塾につなげることが出来るかどうかは塾の死活問題です。夏期講習が塾の「稼ぎ時」であることは間違いありません。しかし、「今年は夏期講習にいっぱい来てくれたなあ」と安心していると、とんでもないことになります。なぜか… 顧客行動のひとつ、口コミ・評判を分析すると次のことが言えます。「口コミは現役生が、評判は塾生ではなくなった人が拡げてくれる」。もともと、「口コミ」と「評判」は別のものです。「口コミ」とは何でもいいので塾のことを話題にしてもらうことです。「評判」とは文字通り塾の評価を拡げてもらうことです。あくまでも塾の評価ですから、良い評価もあれば悪い評価もあります。
良い評判…例えば「あの塾は成績が上がるよ」「先生が本当に熱心だよ」等々は志望校に合格して円満に卒塾した生徒、およびその親が発してくれます。(もちろん、発してもらう工夫は必要ですが…)
それに対して、悪い評判は途中退塾者および、その親が発します。退塾の理由が生徒本人にあったとしても、その生徒は絶対に良い評判を広げてくれることはありません。それどころか、「あんな塾に通っている奴の気が知れない」くらいのことは平気で言っているものです。 実は、夏期講習だけ受講して後期生に残らなかった生徒は、途中退塾者と同じ行動を取る可能性が高いのです。保護者も「うん、夏期講習は受けさせてみたけれど…ちょっとね。」と、近所で話しているかもしれません。もし、後期に残らなかった生徒が10人いれば、10倍の悪い評判が発生し、広がっていくと覚悟しなければなりません。だから、夏期講習生は絶対に後期生として残さなければならないのです。 そのための第一条件は言うまでもなく「商品(授業)の圧倒的な力」ですが、これは私の専門ではないので割愛します。そうした商品力の充実、向上を前提として、マーケティングの話を聞いて下さい。
3週間以内に最低3回の接触を図る
キーワードは「3週間以内に保護者と最低3回の接触を図ること」です。講習受講の申込みをいただいた時、3日以内に礼状を出しましたでしょうか。もし、まだでしたら、今すぐ出しましょう。 消費者は購入を決定した瞬間が最も商品や店に対する「顧客ロイヤリティ」が高い状態にあります。ところが、その瞬間から顧客ロイヤリティは急激に低下を始めます。「本当にこの商品で良かったのだろうか。」という思いが湧いてきます。これをバイヤーズリモース(購入後の後悔)と言います。この傾向は購入額が高ければ高いほど顕著になります。 「あなた」も覚えがあるはずです。例えば、吟味に吟味を重ねた上で購入を決めた車なのに、街を走る別の自動車を見るたびに「あちらの方が良かったかな?」と思ったことが。 以前、テレビで興味深い話をしていました。あるイベンターが外国からミュージシャンを招聘した時のことです。ご夫妻で来日したミュージシャンがショッピングに行くとき、同行した世話役にある指令を出しました。それは、買い物をするときに購入を迷った品物をチェックすることでした。そして、帰国する時に、「迷いながら諦めた商品」をプレゼントとして渡したのです。ご夫妻の感激は相当なものだったようです。以後、そのイベンターには絶対の信頼を寄せ、彼の申し出ならば快く受け入れるようになったそうです。 その購入後の後悔を始めた顧客に、「あなたの選択は間違っていませんよ」というメッセージを送るのです。すぐに届くサンキューレターには、大きな威力が秘められています。手書きのレター(ハガキ)がベストです。 今年もセミナーの参加者にアンケートを取りました。「ここ一ヶ月以内に手書きのレターを受け取ったことのある人」…延べでたった一人でした。 確かに、メールという便利なツールを使うことに異論はありません。やらないよりはサンキューメールを送る方が100倍いいです。しかし、メールをもらうことは日常です。感動はありません。 あなたも正月には多くの年賀状を貰いますよね。業者からの「それ」は印刷された文面です。だから、いちいち読んだりせずに差出人だけ確認して終わりです。でも、そこに一言でも手書きのメッセージが添えてあったら絶対に読むはずです。「手書き」にはそれだけのパワーがあるのです。
葉書一枚、わずか50円の投資です。手間隙は少し掛かりますが、費用対効果は圧倒的です。 3週間以内に、あと2回の接触を図ります。
以前から「21日間の法則」を説明して来ましたが、人はどれほどテンションを高くしても、21日間で日常化する性質を持っています。 阪神タイガースが優勝したときの関西地方の興奮もそう。サッカーW杯の余韻もそう…人は3週間で日常に戻るのです。と、言うことは、3週間後のテンション(顧客ロイヤリティ)を高く保てば、それが日常化するということです。そのための工夫が「3週間以内に最低、3回の接触を新規顧客と図ること」なのです。 サンキューレターで1回。残りはあと2回です。講習が1週間程度過ぎた頃に電話訪問をします。塾での様子を伝え、要望や疑問点を伺うのですが、大切なのは「何気ない(他愛もない)出来事」を「I(アイ)メッセージ」で伝えることです。
「○○君、頑張っていますよ!」これはYOUメッセージです。
「お母さん、○○君、今日初めて挙手して答えてくれたんですよ。もう、嬉しくてねえ。お母さんにもお伝えしたくて、思わず電話してしまいました。」これがIメッセージです。
「私が嬉しい」を伝えることで、その喜びが母親にも伝染します。最近、特に強調している「高度情報化社会では何を伝えるかよりも、どう伝えるかが重要」という法則は、ここでも生きています。そして、3週間後に3回目の接触を図ります。面談による学習カウンセリング等を実施している塾は多いと思いますが、出来る限り講習終了直後をおススメします。「模試の結果が出る9月末に…」と考えていると、入塾してもらうタイミングを逸してしまいます。
3週間で小さくとも明確な成果を
「3週間」で大事なもう一つの要素があります。「ああ、この塾に通わせたことで子供が変わったな」という実感を持たせることです。もちろん、わずか3週間で「目に見える学力向上」は難しいことは重々承知しています。でも、何らかの成果を「目に見える形」で提供しないと顧客ロイヤリティは下がってしまいます。 ある塾(個別)では最初に徹底的にノートの取り方を指導します。特に小学生は乱雑な書き方をしている子が多いものです。
升目やラインを無視して文字を書いたり、計算(筆算)もクチャクチャになっていたりします。それを、定規を使わせてラインに合わせて書くことを徹底するのです。
小学生の場合、意識の高い保護者は子供のワークやノートに目を通します。その時、あれ程汚かった?我が子のノートが綺麗になっていたら…その瞬間、親は「ああ、この塾に通わせて良かった。私の判断は間違いではなかった」と実感するのです。
あるいは、家では全く机に向かうことがなかった我が子が、三十分とは言え、急に自宅で勉強するようになった…そんなことでもOKです。とにかく、塾に通い始めた効果(変化)を目に見える形で提供することです。
人は基本的に短気です。早い効果(変化)を望んでいるのです。 今からでも出来ることはあります。ぜひ、多くの後期生を獲得して下さい。