top of page
  • 執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座77 来期の戦略構築は退塾者の分析から

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2010年1月私塾界掲載分

そろそろ来期の戦略構築を始めている塾が多いと思いますが、今期の「振り返り」もなく来期の構想を練っても同じ失敗を繰り返すことになります。マネジメントで言う「P-D-C-A」の「C」、チェックは絶対に欠かせない作業です。その中でも、退塾に関するチェックは必要不可欠です。今回は、ある教室長から実際に寄せられた退塾事例を検証してみましょう。

退塾例その1 (中1 男子)

私自身の不用意な言葉で、退塾者を出してしまった。退塾に至った経緯を説明すると次の通りである。 ある日、授業が始まる前に壁に張り出された8月テストの結果をA君が見ていた。上位の方を見ているA君に対し冗談のつもりで「そんな上の方に名前は載ってないよ」と言ってしまったらしい。 「らしい」というのは、実は、この状況も発言も私自身覚えておらず、あとで塾長が代わりに聞き出し教えてくれたものである。私の軽口に傷付いたA君は退塾してしまった。 さらに悪いことには、母親からの退塾の申し出をメールでもらった時に、私は勝手に他の理由を考えて対応が遅れてしまった。(以前父親が長年入院中で経済的に苦しいと母親から聞いていたことがあった。自分の落ち度に気付いていなかったので、それが理由と思いこんでしまった。)

これは、塾の現場では良くあることです。親しくなった塾生に対して、冗談を言ったつもりが傷つけてしまった…。言った方は軽い冗談だったので、その発言自体を覚えていない。 私が現役塾経営者だったとき、大学生のアルバイト教師を100人近く雇っていました。それはそれは数々の問題を起こします。特に、「言葉の暴力」は言った方に「暴力」の認識がないため、防ぐことが難しい。 そこで、私は「禁句集」なるものを作成して、講師全員に配布しました。その中には次のような例が掲げられています。

「お前、こんなのも出来ないのか」 「どうせ、考えても無駄だから跳ばせ」 「(また、宿題忘れたのか。)もう、呆れて言葉もないよ」 「本当に物覚えが悪いな」 「何回言ったら理解できるんだ」 「小学生以下だな」 「ますます太ってきたなあ」…etc

具体的に言ってはいけない言葉を集めました。単に「子供が傷付くような言葉を発しないように」と言うだけでは、「傷付くような言葉」の認識が人によって違います。 この禁句集を保護者にも配って言いました。

「我々も含め、若い講師は人間としてまだまだ未熟です。言ってはいけないと思っていても、つい言ってしまうことがあります。その時は、どうぞ遠慮なく私(塾長)まで直接お知らせ下さい。私からきつく注意します。そして、一度は許してやって下さい。神様ではないので一度の失敗については寛容の精神で挽回のチャンスを与えてやって下さい。しかし、2度目があったときは私が責任を持って解雇します。」

こうした事前の対応と説明責任を果たしておくと、それだけでクレームが減ります。「この塾はクレームを積極的に受け付け、対応してくれる」と思うだけで、クレームの半分は事前に昇華されるものです。また、現場教師と生徒(保護者)とのトラブルは、処理を現場任せにしていては絶対にダメです。塾長が前面に立って事後処理をすべきです。

ドラマでも見たことがありませんか?不満を持った客が「責任者を呼べ!」と叫んでいるシーンを。

退塾例その2 (中2 男子)

成績が上がらなかったことが退塾の理由。だが、学校の成績表は度数分布での評価で、実際の順位が分からないので、はっきりとした順位の変動はわからない。実は、その男子生徒は1学期末テストの前にも退塾の兆しはあった。 その時は点数を上げる自信もあったので「必ず点数UPしますから定期対策にA君を預けて下さい」と伝え、実際、数学の点数が30点台から70点台に大きく上がったので、面談に来られたお父様が「夏期講習は弟も受けさせたい」とおっしゃって下さった。 付け焼刃で押し上げた点数なだけに、夏期講習の後の実力テストでは、定期テストのようにはいかず退塾となってしまった。

「人の成長は正比例のグラフのようには伸びない。」これまでも何度もお話してきた原則です。 特訓に次ぐ特訓で上げた成績(順位)は、次のテストで下がることが常識です。そんなことは塾人(プロ)ならば誰でも解っています。しかし、保護者は素人ですから、そんなことは知りません。成績が急上昇した塾生と、その保護者には充分な事後説明が必要です。

(例)「お母さん、A君の今回の順位、凄かったですね。これまでコツコツ貯めてきた実力が一気に花開したようで、A君の努力が報われて私も本当に嬉しいです。でも、重要なのは次のテストです。今回、順位を50番上げましたが、それが本当の実力ではありません。次も50番上がるどころか、通例ですと、次は順位が下がります。しかし、大切なことは上げた分の半分、つまり、下落順位を25番以内に収めることです。25番以内に収めることができれば、それは本当に実力が付いた証拠です。次のブレイク時に向かって走る準備が出来ているということです。お母さん、次のテストで下落順位が25番以内だったら、大いにA君を褒めてやって下さいね。」

こうした対応を事前にしておくことが重要です。

どれだけ優秀な指導者をもってしても、永久に順位を上げさせ続けることは不可能です。しかし、親の気持ちは「立てば這え、這えば歩めの親心」の状態です。どうしても「もっと」を望みます。それでは塾だけでなく、子供にとってもプレッシャーです。ぜひ、成績が大幅に伸びた塾生に対する対処を考えて下さい。成績が上がったことが退塾の原因になるのでは堪らないですよね。

いかがでしょう。退塾者を出してしまったことは取り返しがつきません。しかし、そのことを次の一手に生かすことはできます。

今回の事例でも、「禁句集」を作ることや、大幅に成績の伸びた生徒と保護者に対する対応法を考えることにつながりました。こうして塾の体質は強くなっていきます。

ぜひ、「振り返り」を実行して下さい。それが来期の戦略構築を考える第一歩です。

最新記事

すべて表示

中小塾のためのマーケティング講座106 モチベーションを上げる![2]

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。 -人は行動することで意欲を高める生き物だ- 「ふりだしに戻る」からの脱却 何かをやろうとすれば、反対意見が出るのは当然です。反対意見の出ない提案、例えば「命の大切さを教えましょう...

中小塾のためのマーケティング講座105 モチベーションを上げる![1]

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。 -マネージャーに留まるな、リーダーになれ!- 職場から「それは私の仕事ではない」を排除する 塾業界に新たな仲間(社員)が加わって、活躍を始めています。希望を胸に業界に飛び込んでき...

Comments


ホームページの改善に役立つ
チェックシートをプレゼント!

bottom of page