この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2010年2月私塾界掲載分
中小塾は安易に値下げ戦略に傾くな
十二月に私塾界から配信された記事(十二月十六日付)でも明らかなように、今、塾業界でも大手塾を中心に「値下げ」がトレンドのようです。 「不況時には利益を追うよりも客数を追え!」これはビジネスの常識です。ただし、これは好況と不況が交互にやって来る「循環型経済モデル」を前提とした話です。今のような構造型不況時に「値下げをして客数を確保する戦略」が成立するのは地域のトップ塾だけでしょう。彼らは資金的優位性がありますから、他塾との体力勝負、チキンレースに持ち込めば勝てます。他塾が撤退した後の市場は独断場になり、失った利益を取り戻すことは難しくありません。その頃には景気も回復し、消費者の財布の紐も緩んでいるという計算です。 問題は中小塾が同じ土俵に乗るべきかどうかです。私は、よっぽどの戦略の上でなければ乗るべきではないと考えています。 いくら構造不況とは言え、マインド的な要素が強いことは確かです。「気分的に」塾を控えている家庭、気分的に「安い塾」に流れている家庭があります。何より、日本は世界一個人現金資産を有している国です。(そのほとんどを高齢者が所有しているという問題はありますが…)その「気分」を変える方策を採ることのほうが、よっぽど建設的で勝算も高いと思います。地域に発信する情報が大手塾と同じ、つまり、同じ土俵で戦ったのでは勝てません。「あなたの塾のチラシ」「入塾案内」を握り締め、「そうですよね」と言ってもらえる客を作っていくべきです。 今は、客を探すのではなく作っていく時代です。そうした能力を持つスタッフを集め、育て、塾全体が「客を作る体制」にならなければなりません。 「客はどこで、いつ作られるか?」私は柳井氏の「一勝九敗」を取り上げることが多いのですが、その中に実に示唆に富んだ記述があります。
「小売は店長に始まって店長で終る。ユニクロでは店長が最上位であり、本部スタッフはそのサポーターである。」
この指摘は重要です。そこには、客は全て店で作られ、利益は全て店で発生しているという発想があります。これは塾にも通ずるものがあります。
教室長が本部の指示待ち人になっていたのでは「客を作ること」は不可能です。本部の人間は客の顔も知りません。遠隔間接操作で客を作る、利益を生み出すことは奇跡でしょう。ところが、多くの教室長が本部の顔色を見て、ミスをしないことに血道を上げているのが現状です。
複数教室を展開している塾は、その体制を見直すことです。教室長を最上位に置き、それを本部スタッフがサポートする…客は会議室ではなく現場で作られている以上、当然の帰結です。現場強化が最優先です。教室単位で考えた場合、これは個人塾でも同じです。「あなた」は経営者であり「教室長」です。
この消費者と直接コンタクトを取る場所、人が魅力的でなければ、人は「商品」にまで行き着きません。安易に商品の値下げを考える前に、「場所」と「人」を魅力的にする手段を講じて下さい。
魅力的な人を作る研修を
模擬授業は重要な研修内容です。授業が上手なことは必要条件です。しかし、充分条件ではありません。授業が上手というだけで人を惹き付ける力にはなりません。合わせて、人を魅了する能力を養成すべきです。具体的には文章力とスピーチ力です。 我々はどこまでいっても「言葉」で情報のやりとりをし、感情さえも言葉で左右されます。確かに、日本では「背中で語る」とか「生き様に惚れる」という表現がありますが、寡黙な「健さん」でも2時間ずっと無言でいることはありません。
スクリーンの中で発せられる言葉によって我々は健さんに魅了されます。もちろん、それは演技としての高倉健ですが、その向こう側に小田剛一(高倉健の本名)の人間性までも垣間見ているのです。 我々塾人は徹底した演技をすべきです。伝える情報の話し方・書き方・演出・脚本…それは訓練である程度は身に付きます。そうした訓練、研修が必要です。もちろん「あなた」にも。 その前提として重要な要素がインプットです。いくら話し方や演技を訓練しても、話す内容が伴っていなければ文字通り「お話」になりません。多くの情報をインプットすることで「魅力的な人」に近づくことができます。 多くの経営者が「スタッフは授業さえちゃんとやってくれればいい」と考えています。そして、ほとんどの教師は熱心に教務に取り組んでいます。「それ以外は自分の仕事ではない」と考えて…。 よ~く考えて下さい。普段は「授業をしっかりやれ。それ以外は塾長の仕事だ。」と考え、スタッフの成長に資する研修もせず、それでいて「うちの教師は講習を受けるように声掛けもしてくれない」と愚痴をこぼすのは、経営者の身勝手というものです。 あなたは「あなた」を成長させ、スタッフを成長させる手段を具体的に持つ必要があります。そして、塾を発展させるための集団を作りましょう。そのためには、あなた自身が「共鳴・共感・感動」を部下に提供できる人になることです。そう、「共鳴・共感・感動」を提供できる人が「客を作る人」なのです。 客は現場で作られます。そこには「客を作る能力を持つ人」の存在が不可欠です。塾のスタッフ全員がそうした能力を持つ塾。それが魅力的で客が集まる塾です。
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