この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2010年4月私塾界掲載分
カナダのバンクーバーで冬季オリンピックが開催されました。原稿を執筆している「現在」は、開幕直前であり、結果は分かりません。ただ、塾の運営に関わる興味深い事例がありましたので、皆さんとシェアしたいと思います。
オリンピック選手の問題行動
日本オリンピック委員会(JOC)は十日、バンクーバー五輪スノーボード・ハーフパイプ(HP)男子代表の国母和宏=東海大=が成田空港から当地に移動した際、服装に乱れがあったとし、橋本聖子団長を通じ萩原文和監督に口頭で注意した。国母は同日のHP代表の記者会見でこの件について聞かれ、「競技には影響ない。反省してまーす」と語尾を伸ばした言い方で返答。萩原監督は「本人の意識が足りなかった。非常に残念で申し訳ない」と謝罪した。JOCの竹田恒和会長は「本人が自覚して試合に集中してもらいたい」。橋本団長も「気持ちを入れ替え、集中してやってくれると思う」と語り、五輪期間中の処分は科さない方針。国母は九日に成田空港から出発した際、選手団の正装である日の丸付きのジャケットを着ていたが、サングラスをかけ、ワイシャツの裾をベルトの外に出し、スラックスは腰骨の下まで下げてはくなどしていた。移動にはコーチ三人も同行しており、JOCは指導力不足を指摘した。この姿が報道されると全日本スキー連盟などに一部抗議があったという。(時事通信)
以上が報道されたのは、バンクーバーオリンピックを直前にした二月十日のことです。これと類似のニュース、どこかで聞いたことありませんか?
そう、四年前もスノーボード・ハーフパイプの選手達は同様の問題行動を起こしていました。その様子を次のように紙上でお伝えしたことがあります。
(前略)それよりも気になった記事を読みました。オリンピック取材記者の座談会なのですが、ハーフパイプ取材担当の記者がこんなことを言っていたのです。「海外まで同行取材することがあったのだが、彼らの多くが搭乗カウンターのロビーでフロアに座り込み(いわゆるジベタリアン)だらしない格好をしていた。正直、彼らにはメダルを取って欲しくないと思った。」ハーフパイプは新しい競技でファッション性が高く、若者に人気で選手達も十代が中心です。確かに私のような「おじさん」にはついていけない部分があるのも確かです。それにしても日本人の同行記者から「メダルを取って欲しくない」と思われるような行儀・振る舞いをしていたとしたら…やっぱり問題ですよね。大きな意味で「人間力」の問題です。(以下略)
四年前も記者達の顰蹙(ひんしゅく)を買っています。今回も記者達はそうとう頭にきているらしい。報知スポーツでは次のように書いています。
スノーボード・ハーフパイプ(HP)代表が9日、バンクーバー空港に到着した。成田空港出発時から服装の乱れが目立っていた国母和宏=東海大=だが、決戦の地に降り立っても、変わらない。その、代表らしからぬ容姿に周囲から不満の声も上がった。ドレッドヘアに黒いサングラス。日本選手団の公式ブレザーを着ているにもかかわらず、ネクタイは緩め、シャツはズボンから出し、そのズボンはだらしなく下がる。テレビ取材で質問がトリノ五輪金メダルのスノボー界のカリスマ、ショーン・ホワイト=米国=に及ぶと態度を硬化。その後の質問に対し「分かりません」「別に」と繰り返し、新聞の取材に答えることなくバスに乗り込んだ。これには「服装もひどいが態度も悪い」とマスコミ関係者から不満続出。四年前のトリノ五輪では期待されながら全員が予選落ち。おまけに選手村の壁を壊すなど悪態をついたスノボー代表。十日に公式会見を控え、「チーム責任者の指導が悪い。注意する」と、JOC関係者もおかんむりだ。日本代表ハンドブックには「公人としてのあなたの行動は、すべての人が、常にどこかで見ていることを忘れてはなりません」と記載されている。目立つのは試合だけにしてほしいと思うが…。
この記者会見の模様はテレビ等で報道されましたので、皆さんの中にも腹立たしく感じた方がいらっしゃるのではないでしょうか。さて、今回の事例で最も学ぶべき点は何でしょうか。
塾では指導者のリーダーシップが不可欠
「…移動にはコーチ3人も同行しており」と記事にもありますが、この指導者の「リーダーシップの欠如」が最大の問題点です。
注意すべき指導者が見逃していたら、マナー意識の欠如している若者が「負のノーム」を大きくしていくのは自然の理です。 もしかしたら、コーチは「選手のお陰でバンクーバーまで連れてきてもらった」と思っているのかもしれません。選手も、「俺のお陰で…」とコーチたちを見下しているのかもしれません。こんなチームが成果を出せるとは思えない。 以前から塾人のリーダーシップについてお話していますが、塾の現場では絶対に生徒の堕落を許してはいけません。ある程度の規律の中でこそ自由は存在します。自然界の生物に自由という観念は存在しません。ルールという「規律」を発明した人間だけに与えられた特権です。そうした当たり前のことを若者は知らないのです。本来、それを教えるべき大人(指導者)までが知らないのは社会的不幸であり、そんな指導者は失格です。
ところが、その指導者(コーチ)を指導する立場の人までもが怪しいのです。
「JOCの竹田恒和会長は『本人が自覚して試合に集中してもらいたい』。
橋本団長も『気持ちを入れ替え、集中してやってくれると思う』と語り、五輪期間中の処分は科さない方針」という体たらく。嘆かわしい限りです。これでは、競技力さえあれば全て許されると選手が勘違いするのも無理はありません。
この選手を「生徒」、コーチを「教師」、JOC会長を塾長である「あなた」に置き換えて考えて下さい。確かに生徒に好かれることは大切です。しかし、好かれることと舐められることは全くの別物です。教師が(塾が)生徒に媚びると、塾の中に大きな「負のノーム」が発生します。それは、塾崩壊へのブラックホールです。
「誰からも嫌われたくないと思っている人は、誰にも好かれない!」これは真実です。規律ある教室運営を心掛けて下さい。
塾内には様々なルールがあります。「暴力を振るってはいけない」「人を傷つける言動をしてはいけない」等の人として当たり前のルールもあれば、「先生の話を聞く時はペンを置く」等の授業管理に関する塾独自のルールもあるでしょう。
その決められたルールを徹底して守ることが規律であり、守らせることがリーダーシップです。この点を疎かにすると組織崩壊を招きます。これは授業に関しても社員(教師)教育に関しても等しく言えることです。
よく「厳しい指導」と言いますが、それは教師が大きな声で恫喝する指導を指すのではなく、決められたルールを徹底的に守る姿勢を指します。
例えば、出された宿題をして来なかった生徒に対する対応はルール通りに徹底されていますか。「仕方がない。次は忘れずにやってくるんだよ。」で終らせていませんか。
リーダーシップを喪失した塾は、けっして地域から支持されることはありません。そして、その文化・風土を作るのは、経営者である「あなた」の覚悟にかかっているのです。
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