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  • 執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座82 突破口を開く鍵はあなたの常識の外にある

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2010年6月私塾界掲載分


先人に学ぶ大きな成功をもたらす発想

みなさんはオットー・リリエンタールという人物をご存知でしょうか。ハンググライダーを作り、小高い丘から飛行する試験を行ったことで知られる初期の航空工学の研究者です。約7年間その飛行を研究するも一八九六年八月九日、試験飛行中に風にあおられ墜落、脊椎を折りその翌日四十八歳の若さで死去しました。

最期の言葉「犠牲は払われなければならない」は有名です。しかし、ほとんどの現代人はその名を知らないと思います。ライト兄弟の名前は知っていても。 彼は、「人間も空を飛べる」と思いついた人類最初の人物のひとりです。両腕に翼を付けて飛ぼうとした彼を周囲の人は奇異の目で見て嘲笑しました。しかし、彼の存在がなければライト兄弟の成功もなかったかもしれません。オットーは花を咲かせることは出来ませんでしたが、人類史上に大きな種を提供しました。

私は教育者(指導者)の理想をオットーに見ます。

種を撒いてひっそりと消えていく。弟子たちが花を咲かせ、社会を変えていく。もちろん、その種が本当に芽吹くかどうかは分かりません。すべては無駄に終るのかもしれません。しかし、先月号でお伝えしたように、私は無駄で終るなら御の字と考えています。少なくとも、マイナスにはならないのですから。教育者には無駄を恐れない覚悟が必要です。 もう1つ、クイズです。

世界で初めて鉄甲船を製造したのは誰でしょう。答えは…織田信長です。彼は本願寺攻略のとき、木津川で毛利配下の村上水軍の火矢攻撃に惨敗しました。当時の船は木造で帆も布張りでしたので、ひとたまりもなく炎上してしまいました。そこで信長は九鬼水軍と滝川一益に「鉄板で装甲した船を作れ」と命じます。要するに不燃船を作れということです。鉄板で船体を覆えば、燃えることはありません。

今考えれば、誰でも思い付きそうなアイディア(コロンブスの卵)ですが、当時の常識から言うと、破天荒な発想です。その頃、世界最高の造船技術を持っていたのはスペインとポルトガルです。世界最大の海軍を持ち、地球上のありとあらゆるところに進出していた彼らでさえ、鉄甲船は持っていませんでした。 当時の船は全て帆船であり、風力エネルギーで動きます。当然、船体は出来る限り軽く作る必要があります。また、鉄の最大の欠点は錆びることです。海水は天敵です。ですから、造船のプロであればあるほど鉄製の船など思い付きません。 しかし、信長の目的は、木津川という狭い範囲で敵を待ち伏せし、支援物資を運んでくる村上水軍を追い払うことです。機敏な行動力も耐久性も必要がなく、敵の火矢攻撃を防ぐ手段さえあれば良かったのです。 オットーも信長も、そのアイディアを披露した時、周りの人は嘲笑し、その実現性を信じなかったことでしょう。しかし、突破口を開く鍵というのは、誰も思いつかなかった発想の中にあることは間違いありません。

そして、それを実践する「決断力」と「実行力」がより重要なことは言うまでもありません。 今、塾業界は景気の後退と構造不況のダブルパンチに見舞われています。現状を打開するには、他塾が思いも付かなかった発想が必要です。前例主義に陥っていては確実に縮小再生産の道を辿ります。知り得た成功例をそのまま真似ることは有効には違いありませんが、それではどこまで行っても二番煎じです。大きな成功にはつながりません。その成功例の根源を自塾なりに咀嚼し、工夫を加えることです。 それを前提として、他塾の成功例をご紹介します。

来春のための伏線を今、張っておく

ある塾は、旧中3生の8割以上を新設した高校部に継続させることに成功しました。何を仕掛けたのか…。実は、中学3年生のカリキュラムを通常の3月までではなく、5月まで延長したのです。次のようなメッセージを添えて。

例えばトップ校と呼ばれている高校には偏差値で言うと六十五~七十の生徒が進学します。ところが、3年後には偏差値七十以上の大学に進学する学生もいれば、四十程度の大学の合格もおぼつかない学生もいます。 その差はどこで生まれるのでしょう。実は、最も大きな差が生まれるのは入学直後です。それまでと変わらずマイペースで勉強を続けた者と、志望校合格に浮かれ、手を抜いた者の差は本人が想像するより大きいのです。 そうした大きな落とし穴が目の前にあることを知っていながら、今まで放置していた自分を恥じています。そこで、今年度から中3のカリキュラムを5月まで延長する決断をしました。お子様が新しい環境に慣れ、高校の勉強にもスムーズに溶け込むまで当塾で責任を持ちます。 その時点で自力でやっていける自信を持てた場合は、堂々と卒塾して下さい。ご家庭にはご負担をお掛けしますが、趣旨をご理解の上、お子様の充実した高校生活のため、ご協力をお願いします。」(要旨)

この中3のカリキュラムを延長するというアイディアは、業界ではお馴染みのコンサルタント「メリックの多田先生」によるものです。それを自塾なりに工夫(延長した2ヶ月間で徹底した大学受験に対するカウンセリング等)し、8割以上の継続率を達成しました。 以前もお話しましたが、これからの塾は高校部の開設・充実が不可避のテーマです。大手予備校や塾が現役生獲得にシフトしている現状では、一度離れた塾生は戻ってきません。1つは、元塾に戻る後ろめたさがあることですが、最も大きな理由は高校での新しい友人関係です。広い地域から学生が集まってくる高校の友人との関係を維持するために、近所の塾ではなく駅前の予備校を選択するのは自然の流れです。

高校部への継続の仕掛けを年度末近くに行なっても効果はありません。直前に迫った受験のことで頭はいっぱいですし、受験終了後は勉強のことなど考えたくないというのが本音でしょう。ですから、今から種を撒いておくことをお勧めします。来春に向けた戦略を開始するタイムリミットは「今」です。

推理小説でも、クライマックスを劇的に演出する伏線は、物語の前半に潜ませているものです。来春の突破口のために、今、行動に移してください。

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