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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座84 無意識に相手の怒りを買っていないか!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2010年8月私塾界掲載分


無意識に言う「私は悪くない」は怒りを買う

私事ですが、3年間以上に渡って顧問を務めていた地元の異業種交流会を退会しました。その際に、ちょっとしたトラブルがあったのですが、それが塾の現場でも参考になると思い、お伝えします。

まず、事務局に電話を掛けました。4月末のことです。


「会を退会しようと思うのですが、正式な退会届等の書式はありますか?」 「正式な書式はありませんが、記録を残すためにメールで送ってください。」


そんなやりとりがあり、事務局にはメールで退会の旨を伝えました。 ところが6月に入って、一般の会員さんから数件、問い合わせの電話が入りました。

「森先生、会を辞めたという話と辞めていないという話があるのですが、どうなっているのですか?」

???…尋ねてみると、6月の役員会で誰かが質問したらしい。「最近、森先生が顔を出さないし、辞めたという噂があるが、どうなっているのか」と。

それに対して、会長、事務局長が「まだ正式な形では退会届が出ていません」という返答をしたらしいのです。

不審に思い、事務局長に電話をしました。

「正式な退会届は出ていないと役員会で話したそうですが、私、ちゃんとメールで伝えましたよね。」

すると、事務局長がとんでもないことを言い出します。

「メールでもA4版の添付ファイルで送ってくれなければ正式とは認められない。」

びっくりして問い返しました。

「ちょっと待って下さい。そんなこと、どこにも明記されていませんし、何より、それが決まりならば、電話とメールで何度もやり取りしている時に教えてくれれば済むことではないですか。」

すると、事務局長が次のように言います。

「森先生は会にとって貴重な方ですから、会長が慰留するというので保留にしていました。」

要は、事務局長は「自分は悪くない」と主張したいようです。

しかし、A4ファイルのことも、慰留のために保留にしていたことも、全て私の知らないところでの事情であり、言ってみれば、向こうの勝手な都合です。それなのに、役員会という公式の場で『正式な届けは出ていない』と発表されたら、「森は正式な退会届も出さずにサボタージュしているいい加減な男だ」と思われてしまいます。

こうした場合、言い訳から入るのではなく、まずはゴメンナサイから始めるのが大人の対応ではないでしょうか。それを、「自分は悪くない」と主張するのは対応として間違いです。

こうした私も参加していた会の恥部をわざわざお伝えするのは、塾の現場でも同様の事例が頻繁に起こっているからです。


塾人も無意識のうちに「私は悪くない」と言っている

例えば、臨時休講の日に生徒が間違って(知らずに)来てしまい、翌日に保護者から問い合わせの電話が掛かって来たとします。すると、担当者が思わず言ってしまうのです。

「あれっ、昨日は休校だとちゃんと伝えたはずですが。」

事実はどうであれ、この台詞は保護者の頭の中では次のように変換されて聞こえています

「お前の子どもは人の話を聞かないダメ人間か、人の話を理解できないアホ人間だ!」

コミュニケーションの意味を確認しましょう。

こちらの意思を伝えて、相手に自分の望むように行動してもらうことです。ただ、意思を発表するだけのことはインフォメーションです。

ならば、その生徒が休校日に来てしまうということは、塾のコミュニケーションが不十分だったということになります。「自分が源泉」の立場で言えば、それは塾の責任です。まずは、伝え方の不備、不徹底を謝ることから始めるべきです。その上で… こうしたクレーム処理方法については何度も説明してきました。そう、お礼を言うことです。

謝罪した後に、「わざわざご連絡いただいて、ありがとうございます。そうでなければ、○○君が昨日、辛い思いをしたことも知らず、また、連絡方法の不備にも気付かずに過ごすところでした。ご指摘のおかげで、塾内の連絡体制を見直すことができます。本当に、お電話ありがとうございます。」と、お礼を言うべきです。

誰もがクレーマーだと思われるのは嫌なものです。それでも言わずにはいられないというのが相手の心理状態です。そうした時、最後にお礼を言うことで「私はクレームを付けているのではなく、提言をしているのだ」と思ってもらわなくてはいけません。

謝る一方だと、「御免で済むなら警察はいらない」という子供の喧嘩になってしまいます。火に油を注ぐ結果を招きます。

「昨日は休校だとちゃんと伝えたはずですが」…この台詞は「自分は悪くない」という意思表示です。つまり、「あなたの子供が悪い」と言っているようなものです。

これでは、ますます相手(保護者)を怒らせるだけです。

いえ、担当者にはそんなつもりは全くないでしょう。しかし、無自覚のうちに相手にはそのように伝わっているのだということを知っておくべきです。

塾というビジネス、現場は「人と人」によって成立する特殊な空間です。

コンビニならば、目に見える「商品」を介在するビジネスですから、100円のものを100円で売っていれば大きな問題は発生しません。しかし、塾には介在する明確な商品が存在しません。だからこそ、相手(客)の立場に立った想像力が必要です。

私が長年主張し続けている「感情の論理」の重要性を、ぜひ、再認識して下さい。 「感情の論理」とは矛盾した考え方です。

もともと、人の感情とは論理的なものではありません。その「論理的ではないという事実」を論理しなければならないのです。そこに「相手の立場に立った想像力」の必要性があります。どう言えば相手に正確に伝わるか。この行動で相手はどんな感情を持つか。相手に自分が望むような行動に移ってもらうための工夫は何か。

常に、一歩先を読みながら「あなたの言動」を選択してください。 あなたの言葉は一国の総理大臣の言葉と同じくらい重いものです。

けっして感情のままに発言しないことです。それが許されるのは…唯一、女房殿(旦那様)の前だけですよ。

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