この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2010年11月私塾界掲載分
-理念は文字化して初めて威力を持つ-
「何となく」を作り出す質より量の法則
先月号で、「戦術を行なう目的は『何となく』を作り出すことだ」と延べました。この「何となく」について少し解説を加えます。
男女間の恋愛感情を考えて下さい。
女性に「彼のどこが好き?」と聞いて、具体的な答えをする人はいません。「全部!」と答える人が圧倒的多数です。「優しいから」とか「背が高い」「イケメン」等々は後付であることがほとんどです。みな、「何となく」好きになるのです。
もし、好きになる明確な理由があるのなら、全ての女性がキムタクを好きにならなければなりません。
それでも、モテる男の1つの共通点があります…マメなことです。
私の友人の「モテ男」が言っていました。「大きなプレゼント1つよりも小さなプレゼント10個の方が効果的」だそうです。
「マンションを買ってくれる男」よりも、「記念日に欠かさず花をプレゼントしてくれる男」の方が絶対的に女性に支持されます。ここでも「質より量の法則」は生きています。
戦術を重ねることは、この「何となく…明確な理由はないけれど」を意図的に作り出す唯一の方法です。
「直筆の手紙」だけで生徒は増えません。「ニュースレター」だけで退塾防止は出来ません。「バースデーカード」だけで感謝はされません。「授業最初の小ネタ」だけで生徒から尊敬はされません。
でも…
何もしない塾よりも、そうした小さなことを100個積み重ねる塾は圧倒的に支持されます。
もともと、私が提案していること(戦術)は、大きな資本を必要としないものばかりです。
「何千万円も掛けてテレビコマーシャルを流しましょう」とは言いません。ただ、どれが効果があったか分からないくらい、次々と実践に移すことを求めています。
毎日、小さな変化をすることを提唱しています。それが「あの塾は何となく(上手く理由は説明できないけれど)いい塾だよね」という評判を作る唯一の方法だからです。
「無駄で終るならば御の字」の精神で戦術を実行して下さい。質より量です。
企業の方向付けは理念の創設から
先月号でお話した「方向付け」は企業理念(教育理念)や方針、あるいはミッションに関わる部分と密接につながっています。
まず、あなた(あなたの塾)の理念を徹底して考えて下さい。そして(ここが最大のポイントですが)必ず「文字化」することです。書くことは考えることです。人は「書く」という作業によって「考える作業」を引き出す性質を持っています。
私が「客の声」を集めましょうと提案している理由の1つがココにあります。
生徒でも保護者でも、塾のこと(塾教師のこと)を考えずに塾に関する文章を書くことはできません。そこに10分間を費やしたということは、10分間、塾のことを考えてもらったということです。すると…その分だけ顧客ロイヤリティが高くなります。
同じ理屈は読む時間でも言えます。
保護者が塾からの長文を読んでいるとき、頭の中は塾のことを考えています。その時間が長いほど、顧客ロイヤリティは高まります。チラシでも案内でも長文をお勧めする理由です。(ただし、効果は「書く」の方がはるかに高い。)
あなたの塾にも「理念」があると思いますが、そこにどれだけの時間を費やしたか…それが重要です。
何度も紙に書き直しながら1ヶ月掛けて作った理念と、適当に10分で作った理念では「あなたの理念に対するロイヤリティ」が違ってくるのは当然です。
付け焼刃の理念に愛着が湧くこともなければ、ましてや、それを社員・スタッフに根付かせることなど不可能です。宙に浮いた飾り言葉になってしまいます。
大切なことは、「使う言葉の定義」を徹底して吟味することです。
例えば「生きる力」という言葉を使うときは、「生きる力とは何か」について400文字程度で説明できるくらいに深く考えてから使用することです。たとえ理念としては20文字でも、そのバックに2000文字の理論武装を用意することです。それくらいの周到な準備をして初めて、理念は力を持ちます。 一度、スタッフの皆さんと徹底的に議論をして理念を創生してみてはいかがでしょう。
忘れていた創業時の情熱やミッションを思い出すことでしょう。理念が完成したら、それを大書して事務所に掲示して下さい。大きければ大きいほど効果があります。
字は下手でも構いません。あなたの手で書くことが重要です…アファメーション効果です。
文字化して何度も目にすることで腑に落ちていきます。
次に、一日一度は声に出します。声の大きさは大きければ大きいほど効果があります。大企業の研修や朝礼を見ていると、理念(クレド)を大声で唱和している風景に出会います。「全体主義的で嫌だなあ」という感想を持たれた方も多いと思います。(私もそうでした。)
しかし、あれは効果があるのです。
以前も紹介しましたが、餃子の王将や居酒屋のワタミでは企業理念を暗記することが全ての社員に求められ、試験まであります。理念を単なる美辞麗句に終わらせるか、会社(塾)全体を貫く指針になるかは、その扱い方で決まります。
スローガンで終らせているうちは威力を発揮しませんが、落とし込みに成功した時は凄まじい威力を発揮します。クレドで有名なホテルリッツが証明しています。
この文字化に代表されるように、「形」で表現することは戦術を実行する時の絶対条件です。もともと、戦術とは「戦略を形にすること」なのですから当然です。理念が文字化されれば、それを市場に伝えることができます。
「私の塾は、こうした教育理念で指導しています」という主張が、地域の共鳴・共感を作り出します。これは、単なる「教える職人」では難しい。
ぜひ、チラシ・ホームページ・入塾案内・ニュースレター・説明会・保護者会・教育セミナー…ありとあらゆる機会を捉えて伝えて下さい。
思いは伝えなければ伝わりません! 「理念を持つ」が戦略部分ならば、「文字化して暗記する」が戦術です。そこまで徹底して、「企業の方向付け」はスタートできるのです。
(次回へ続く)
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