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中小塾のためのマーケティング講座88 今、あえて戦術の重要さを問う[3]

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2010年12月私塾界掲載分


-むき出しの主張は相手に伝わらない-


戦略・戦術の次に来る戦闘の重要性


先月号まで戦略-戦術の話をしました。今回は最終段階の「戦闘」についてです。

もともとが戦争用語ですので、例を挙げるのも憚(はばか)られるのですが、いかに戦略、戦術を上手に練っても、足軽の戦闘力が劣っていたのでは戦(いくさ)に勝てません。

常に一人ひとりの戦闘力を高める訓練が必要です。具体的には槍の効果的な使い方を練習します。現代の警察官が、常に剣道や柔道、そして射撃の訓練を受けているのも同じです。 理念を考え(戦略)、文字化するまで(戦術)は上手くいったとしても、それを伝える

術がなければ威力を発揮させることは出来ません。

そして、多くの塾がこの部分を疎かにしています。例えば、次のような主張をする塾があります。


「勉強の目的は単に成績を上げたり、志望校に合格することだけではない」

…ここまではいいのですが、続けて

「真の目的は充実した人生を送るための力(生きる力)を身に付けることだ」

と言ってしまうのです。


理念の文字化という意味では良いのですが、何がいけないかと言うと、「志望校合格」という具体的目的を否定した後で、「充実した人生を送るための力」という抽象的な概念を代替案として提示してしまっていることです。

これでは、理念の真意が伝わらないばかりか、不信感を持たれてしまう危険性すらあります。必要なことは、「充実した人生」の具体的例示です。ひとつ、例を挙げましょう。

あなたはマザーテレサという人を知っていますか。 名前くらいは聞いたことがあると思います。インドの貧しい人のために一生を奉げ、ノーベル平和賞も受賞した修道女です。彼女が素晴らしい人生を送ったことを否定する人はいないでしょう。 彼女は「最も貧しい人の間で働くように」という神の啓示を受け、生涯、その命に従いました。彼女はまず、町に放置されていた子どもの遺体を弔うことをしました。また、彼女はインド女性の着る質素なサリーを身にまとい、手始めに学校に行けないホームレスの子供たちを集めて街頭での無料授業を行いました。 そして、「飢えた人、裸の人、家のない人、体の不自由な人、病気の人、必要とされることのないすべての人、愛されていない人、誰からも世話されない人のために働くこと」を目的とする「神の愛の宣教者会」を創設しました。「死を待つ人々の家」というホスピスも開設ました。 彼女はノーベル平和賞の賞金約20万ドルを、カルカッタの貧しい人のために使いました。また、授賞式の場で「私のための晩餐会は不要です。その費用は、どうか、貧しい人のために使って下さい」と要望しました。 そんな彼女の元には、世界中の篤志家から莫大な金額の寄付金が集まってくるようになりました。 このように、一生を貧しい人々に奉げたマザーテレサですが、彼女自身は事業家の父親を持つ、裕福な家庭に生まれ育ちました。聖マリア学院では長く教師を務め、校長にもなり、上流階級の子女の教育に携わった知識人でもありました。 いえ、ちゃんとした教育を受けたからこそ真実を見る目と信じることに邁進する行動力が身に付いたのでしょう。 あなたは、当時のマザーテレサよりも恵まれた環境で教育を受けています。 こうして塾に通うこともできます。塾に通う目的は「高校に合格すること」でも「成績を上げること」でも構いません。しかし、勉強をする本当の目的はもっと大きなものです。 私は、あなたにマザーテレサのようにボランティアに生涯を奉げようと言いたいのではありません。 ただ、本当に充実した人生とは、(陳腐な表現ですが)「世のため人のために役立って生きること」です。あなたの能力が誰かを救ったり、誰かの役に立つことは素晴らしいと思いませんか?そんな能力が「生きる力」であり、今はその習得過程にあるのです。国語や数学、定期テストや受験は、そうした能力を身に付けるための手段です。だからこそ、疎かにしてほしくないのです。 今の勉強を疎かにした人は、決して「人の役に立つ能力」が身に付かないと思うからです。

こうした例示を交えて勉強の目的に落とし込むと、より「あなたの主張」が伝わるでしょう。 例示はマザーテレサでもビルゲイツでも構いません。言いたいことを直接投げ掛けるよりも、例示から入る方が受け止められやすいということです。多くの塾人が「直接表現」に終始しています。そうすると、真意が伝わらなくなります。

相手の想定を超える話を提供する

例えば、女性に愛を伝える時、「僕は君を愛している。結婚して下さい」と表現して、本当に愛の深さが相手に理解してもらえるでしょうか。感動してくれるでしょうか。

僕は死にません。あなたを愛しているから。 僕は死にません!あなたを幸せにしますから…

これは、トレンディドラマ華やかなりし頃の「101回目のプロポーズ」の中で武田鉄矢扮する中年男の言ったプロポーズの言葉です。

今でもパロディで使われることがあるほど有名になった台詞です。これを走ってくるトラックの前に飛び出して叫ぶという非現実的な設定ですが、視聴者を痛く感動させたことは間違いありません。

「僕は死にません」という、およそプロポーズの言葉としては不釣合いな台詞を考え出した脚本家の勝利でしょう。

そもそも、直接表現だけで展開したらドラマになりません。感動を創造できません。それは、塾と生徒・保護者の間にも言えることなのです。

我々が書いている文章は、全てビジネス文です。けっして日記ではありません。

読者がいるということを想定する必要があります。(スピーチの場合には当然、聴衆が存在します。)そして、やはり相手を感動させる必要があります。「ほお~」「なるほど…」「まさに…」と思わせることです。

そのための有効な手段が「たとえ話」や例示です。

今回の場合、言いたいことは「あなたが勉強する目的は高校に合格するためではなく、充実した人生を送ること」という1行です。しかし、それだけでは充実した人生の意味が分からず、本来伝えなければならない主張まで「意味が分からない」ということになってしまいます。

期待値(想定値)を越えた部分が感動だと言われます。

生徒も保護者も「塾の先生ならば、こんなことを言うだろう」という想定をしています。その範囲を超える内容の話が必要なのです。

結局、広い意味での表現力です。これも1つの能力ですから、訓練によって伸ばすことが出来ます。

どうぞ、表現力という戦闘力を伸ばすための訓練をして下さい。それが「優れた戦略・戦術」を生かすための方法です。

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