この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2011年1月私塾界掲載分
-地域一番塾を目指す理由-
明けましておめでとうございます。本年が「あなた」にとって輝かしい年になることを祈念します。この「中小塾のためのマーケティング講座」も九十回を数えます。連載が始まって八回目の正月を迎えたことになります。長くお付き合い下さっている私塾界スタッフの方をはじめとする全ての方、特に今、この文章をお読みの「あなた」に心から感謝申し上げます。これからも中小・個人塾の経営に資する情報提供に努めてまいります。
さて、十一月から十二月にかけて、東京・大阪・名古屋で毎年恒例の「至上最強の塾経営セミナー」を開催しました。テーマは「地域一番塾になる」でした。今回は、その内容をお話します。
健全な競争の中に社会貢献は存在する
自塾が繁栄するということは地域に貢献することです。
どこよりも有益な教育サービスを提供しているからこそ生徒が集まり、繁栄します。競争の中で、より良いものが残り、結果、地域社会が発展する。それ以外に、我々が提供し得る社会貢献はありません。同業他社との健全な競争に参加することが必要なのです。
あなたの塾の見込み客は、今、塾に通っていない生徒ではありません。隣の塾に通っている生徒です。
今、塾を利用していない生徒・家庭は、塾の利用価値を認めていないのです。その層に対してアプローチを掛けても、「ピーマン嫌いの人にピーマンを売りつけるようなもの」です。効果がないどころか、相手にとっては迷惑な話です。そうではなく、塾の利用価値を認めている人に対して、「より良い塾」の存在を教え、理解してもらい、利用してもらうこと。「ああ、この塾にして良かったな」と思ってもらうことが、あなたの為すべきことです。
つまり…地域一番塾を目指すことです。
縮小均衡市場の運命(さだめ)として、一番店でなければ生き残れません。共存共栄とは、一番店を目指す熾烈な競争過程において刹那的に表れる現象に過ぎません。それは歴史が証明しています。まずは、その競争に参加する決意をすることです。
自塾が一番になれる土俵を作る
次に必要なことは、「何で地域一番になるか」という土俵を作ることです。
以前からお話しているように、現在の大手塾と同じ土俵で勝負するのは間違いです。相手は白鵬です。百回勝負すれば百回負けます。
例えば塾生数、例えば売上、例えば合格実績…そこに勝機はありません。あなたが白鵬相手でも勝てる得意分野の土俵を作るのです。
「相撲では敵わないが、テニスなら勝てる」と判断すれば、そこにテニスコートを作り、テニスが好きなファン(客)をその回りに集めればよい。歌が得意ならばコンサート会場を、水泳が得意ならばプールを…それが戦略です。
多くの塾が、「○○ならば地域一番」というものを持っていません。
持っていたとしても、ほとんどの場合が自己評価止まりで、地域の認知を得ていないものです。「あなたの塾の特長は何ですか」という質問に大抵の塾経営者が考え込んだ末、八割以上の塾経営者が「面倒見のいいことですかね…」と答えます。
八割の塾が言っていることが特長になるとは思えません。また、地域に住む誰に聞いても「ああ、○○ならばあの塾が一番だね」と言われて初めて「地域一番塾」です。そうなれば、○○を求める人が自ずと「あなたの塾」に集まってきます。大手と勝負するのはそれからです。
この「○○」は、残念ながら私が提示できるものではありません。
「あなた」が見つけ、育てていく以外に方法はありません。私が提供できるのは、そのためのヒントやキッカケだけです。魔法の杖は提供できませんが、藁(わら)を手渡すことは出来ます。後は、あなたの力で藁を編み上げ、丈夫な綱に仕上げて未来を自分の元へと引き寄せて下さい。
まず他者依存の思考を捨て去れ
過日、とある塾さんに招かれて創立40周年記念式典に参加してきました。塾生数は二千名の、規模としては中堅塾です。(その地方では圧倒的な一番塾です。)
塾長のあいさつで、「40年前、自宅の八畳間で生徒8人からスタートした…」というセリフを聞き、「ああ、どこも一緒だ」と思いました。
当たり前のことですが、最初から二千人の塾生を集める塾はありません。「8人から…」「10人から…」というのが普通です。それは、昔も今も変わりません。ほとんどの塾が一部屋、生徒数人からスタートしています。しかし、そこから二千人になる塾には必ず何か秘訣があります。
以下はマーケティング界で知られた話です。業績の上がらない企業の典型として語られます。
ドッグ・フードを扱う会社の営業会議で、販売部長が部下に新しいコマーシャルの感想を求めました。 「素晴らしいコマーシャルですね。業界の中で一番の出来ですよ」と部下は口を揃えて言いました。 「製品はどうかね」と部長が尋ねました。 「素晴らしい商品です。他社の製品を上回っていると思います」と部下が答えます。 「販売員についてはどうだ」と部長が続けます。 自分たちのことなので、より声を大きくして、「他社のどの販売員よりも頑張っています」という答えが返ってきました。 「なるほど…、製品も素晴らしい。コマーシャルも最高。販売員も最大の努力をしている…それなのに、なぜ我が社は業界十八位に甘んじているんだ」と部長が聞きます。 重苦しい沈黙を破って、一人の部下がこう答えました。 「いまいましい犬どものせいです。奴等ときたら、ウチのドッグフードなんか食べやしないのですから…」
他者依存の典型を表した話です。塾人の中にも、この企業の社員と同じ思考に陥っている人がいます。 「教育熱が低い」「景気が悪い」「社員が悪い」「世の中が悪い」…責任転嫁ゲームから抜け出さない限り、未来は拓けません。伸びていく塾は間違いなく他者依存の思考を捨て去っています。
地域一番塾になるためには、その競争に参加する決意、覚悟をすること。
戦略として得意分野の土俵を作ること。
そして、他者依存を捨て自己源泉の思考に立って行動すること…
次に必要なことは、自ら構築した戦略を徹底することですが、それは次号でお話します。
(次回につづく)
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