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  • 執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座91 ハリウッド・パターンの応用[1]

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2011年3月私塾界掲載分

-人材育成編-

新学期開始。ほとんどの塾が、この3月に年度替りをしたのではないでしょうか。この春から新しい人材を迎える塾も多いと思います。大手塾と違って、中小塾は人材育成、特に新人研修にあまり手間をかけていないところがあります。「現場で覚えろ」とばかりに、いきなり授業を持たせます。様々な事情があることは重々理解しますが、人が全てと言ってもよい塾業界において、人材の育成は必須の課題です。ここを疎かにすると、商品である授業のクオリティ、あるいは生徒対応・保護者対応のクオリティにバラツキができてしまいます。塾全体の力量を向上させるためにも、個人の力量向上は欠かせません。今回は、ハリウッド・パターンを利用した人材育成についてお話します。


ハリウッド・パターンは脚本の基本

ハリウッド・パターンとは映画(ストーリー)を作る時の骨組み、基本的な構成を言います。「起承転結」の変形と考えて良いでしょう。これは「人を感動させるため」の最も基本的なパターンです。その骨子は次の通りです。

  1. 冒頭、大きな事件、とんでもない事態が起こる

  2. 問題が深刻化し、危機感が募る

  3. 主人公は物語の中でメンターの力を得て成長する

  4. 大どんでん返しでハッピーエンドを迎える

  5. 最後に未来を暗示する場面で終了する

ほとんどの映画がこのパターンで作られます。

ロッキーもマトリックスもプリティウーマンも同じ骨組みです。なぜなら、これが「人が感動する方程式」だからです。

誰もが知っている宮崎アニメの代表作「千と千尋の神隠し」を例に確認しましょう。正月に放映されていたので、再度、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。

主人公は小学生の千尋。親の都合で新しい町へ引っ越します。この設定が「不思議な世界」への導入を予感させます。そして、テーマパークの廃墟へ行き着き、ここで大事件が起こります。魔界の料理を食べた両親が魔法にかかり豚になってしまうのです。 続けて事態は深刻化します。千尋が魔界から抜け出せなくなります。「夢だ、夢だ。醒めろ!」と自分の顔を叩きますが、元の世界へ戻ることはありません。愚図で非力で頭の悪い千尋は、「千」という名前に変えられ、湯婆婆(ユバーバ)が経営する油屋で働くことになります。

余談ですが、この「湯婆婆が名前を奪う行為」は日本独自の文化、「言霊」に依拠しています。以前もお話したように、言霊の国・日本では名前がその人の全てを象徴します。そのため、本名(忌み名)はごく近親者しか知らない(教えない)という社会的システムが構築されました。特に、女性は自らの名前を名乗るということは厳に慎まれ、ほとんど歴史に名前が残ることはありません。紫式部、清少納言が良い見本です。明治になるまで、手紙の自署名も「○○の娘」「○○の妻」と書きます。今でも「名前」ではなく「苗字」で呼び合うのは、その名残りです。


さて、最初は泣いてばかりいた千尋も、メンターである「ハク」の協力を得て徐々に逞しく成長していきます。腐れ神を救い、ハクの命を助け、銭婆の元へ契約の印鑑を届け、最後は湯婆婆との賭けにも勝って両親を取り戻し、現実の世界へと帰って行きます。主人公が徐々に逞しく成長していく姿は、視聴者の自己投影を容易にさせる最大の要素です。前半の千尋と後半の千尋は、顔付きさえ変わっています。 最後に、乗っていた車が草木に覆われていて、それまでの出来事が単なる「夢」ではなかったことを暗示して映画は終了します。

もともとは映画や小説のようなストーリー展開の基本として使われるのですが、人材育成にもこのパターンは応用できます。


研修の最初に大きな衝撃を与えよ!

例えば人材育成に不可欠な「研修」を考えてみましょう。

多くの中小・個人塾が研修を全くと言っていいほど実施していません。採用した社員・アルバイト・パートに任せっぱなしです。それで「うちのスタッフは力量が低い」と嘆くのは経営者失格です。

そうした塾に研修を勧めると、「何をやっていいか分かりません」と返事が返ってきます。「何を勉強すればいいか分かりません」と言っている子どもと一緒です。


まず、研修の意義を大きく2つに分けます。

1つは当然ですが「授業」や「コミュニケーション」の能力を磨く「テクニカル・スキル」であり、もう1つは理念や方針を浸透させ、人間的な成長を促す「マインド・スキル」です。その両建てで研修内容を構築します。

何事も最初が肝心なのは一緒です。

これは、アビトレの木下氏に教えていただいたのですが、氏が新人研修を担当していた当時、研修の最初は「合格発表の場に来させること」だったそうです。

合格して飛び上がって喜んでいる子ども、不合格で肩を震わせて泣いている子ども…

その現実を見せて「俺達のやろうとしていることは、子ども達の人生に関わる仕事だ。全てがこの日のためにあると思えば、日々の業務を疎かに出来ないよね」と伝えます。それだけで、若い教師達は大きく変化(成長)するのです。

ドカ~ンとファースト・インプレッションを与える見事なハリウッド・パターンです。大きなファースト・インプレッションを与えなければ、人は変わろうというきっかけを掴めませんし、その後の研修や業務に真剣に取り組むようにはなりません。

集客(マーケティング)も同じでしたね。キャッチコピーはチラシのファースト・インプレッションとして最重要ですし、面談は文字通りファースト・コンタクトです。そこで、いかに大きな衝撃(感動)を与えることができるかが、その後の全てを決定します。社員(アルバイト)研修も成否の大部分は最初で決まると考えて間違いありません。

ぜひ、研修の初日は、あなたの教育に対する熱い思いを語って下さい。若いスタッフの魂を揺さぶるような…。

「人を納得させるには理性が、人を行動させるには情熱が必要だ」と言われます。多くの中小塾経営者が「熱く語ること」に対する照れや躊躇(ちゅうちょ)があります。そこを一歩踏み出す覚悟、小さなクレバスを跳ぶ覚悟が必要です。

それは「演技」でも構いません。以前からお伝えしているように、3ヶ月も演技していると、どちらが本来の自分か分からなくなるくらい、それが「本当の自分」になっていきます。それを別の言い方で「成長」と言います。「理想の自分」を演じて下さい。

次号で、ハリウッド・パターンを応用した具体的な研修内容についてお話します。

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