この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2011年6月私塾界掲載分
-今こそ塾経営者の底力を見せる時-
塾業界に震災不況がやって来る
多くの塾から「震災以降、ぱったりと入塾が止まってしまった」という声が寄せられています。無理もないことだと思います。消費者マインドは零下に冷え込んでいます。それ(三月十一日)まで様子見していた家庭は今、塾を探す気分ではないでしょう。3月に入るまで塾を決めていなかった家庭は、もともと塾の必要性を強く感じていなかったと考えられます。
しかし、このまま手をこまねいていると何も変わりません。様々な啓蒙活動、募集活動を畳み掛けて下さい。
…あがくことです。
突破口は簡単には開けません。あがいてもがくうちに、指先が突破口の端っこに引っ掛かります。今、すべき「最初のあがき方」をお話します。
資金に余裕のある塾は、すぐにでも意見広告を出すべきです。
内容は当然、東日本大震災に関することです。先月号でお伝えした「今の1万人を救えなくても未来の1万人を救える人になれ!」をキャッチコピーに使ってもいいでしょう。震災直後は不確実な情報を元に、感情的な意見や流言が多く聞かれました。今、あの震災を中間総括して、ここから我々は何を学ぶべきか、子供たちに何を学ばせるべきかを冷静な教育者の視点で語ることです。
当然、学校の先生が語るであろう一般的見解を超えるものでなければなりません。あなたの塾の理念と絡めて震災を語り、共鳴者を作り出してください。人は、技術(デジタル)に感心はしますが感動はしません。理念(アナログ)に人は感動し、共鳴します。
今回の震災をどう捉え、子供たちの育成にどう生かすべきかを保護者に教えてあげるのです。また、当地区が震災に襲われた時、計画停電の対象地域になった時、どう対応するかを考え、発信するのもいいでしょう。少なくとも、ノーリアクションは避けたい。
以前、塾講師が生徒を殺害した事件の時にもお話しましたが、こうした時、「うちは関係ない」と何の反応もしない塾と、それに関するリアクションを発信した塾とでは必ず差が付きます。それは信頼感という目に見えない要素なので見過ごされがちですが、地域と共に生きる塾にとっては不可欠なものです。
チラシを出す予算が取れない塾は、せめて「緊急の保護者会」を早急に実施して下さい。
そこで「あなたの思い」を方ってください。「チャリティー・セミナー」にしてもOKですし、その意味では「チャリティー・ボーリング大会」も有りです。1学期は時間的な余裕が多少取れる時期です。この間に、「あなたの思い」を「形」にして届ける場を設けることです。
募金活動を生徒・保護者を巻き込んで行なっている塾は多いと思いますが、可能ならば、「頑張れ東北」とでも印刷したバッチを作成し、一定額以上を寄付してくれた生徒に配ると効果的です。「形」を提供することで、子供たちに当事者意識を与えることが出来ます。社団法人全国学習塾協会が同企画を実施していますので、加盟塾は利用すると良いでしょう。(4月現在)
要は、震災に関する何らかのリアクションをして、地域に存在感をアピールすることです。言うまでもないことですが、最後は「勉強の重要性」に落とし込む理論武装が必要です。「被災者はかわいそうだ」で終ったのでは、塾離れを助長するだけです。
塾経営者の底力を発揮しよう
「こんな時期だから、とりあえず塾は…」と震災に便乗して、理屈にならない理屈でペンディング(先送り)をしている多くの家庭に対して、「そのうち塾に来るだろう」と油断していると大変なことになります。その期待は外れると思って間違いありません。 まず、子供手当ては半年で無くなります。現在は「つなぎ法案」で凌いでいますが、確実に廃止になります。元の児童手当に戻ります。児童手当を月額一万円にして十五歳まで支給する案も言われていますが、不確定です。高校の実質無償化も怪しい。また、一時的な震災不況がやってきます。夏場の電力不足は深刻ですが、やはり最大の原因は「消費者マインドの冷え込み」です。リーマンショック時以上の不況が来ても不思議ではありません。早晩、「子供を塾に行かせるどころではない」という家庭が大量に発生します。 ましてや、本当に「復興税」などが施行されるとなれば…。 東日本の危機は日本の危機であり、「あなた」の危機でもあります。今こそ、危機管理能力を発揮する時です。危機管理とは「最悪を想定して準備すること」です。日本人の最も苦手とする分野です。秋以降、家庭から塾への流れがパッタリと止まることを想定した対策が必要です。 テレビ番組で元自衛官の幹部が嘆いていました。「原発事故を想定した避難訓練の提案を北海道知事にしたところ、『原発は安全なので訓練は必要ない。そんなことをすれば、原発は安全ではないとアピールすることになり、道民の不安を煽る』と断わられました。」 これが言霊信仰の弊害です。事故を想定した訓練をすると、実際に事故が起こってしまうと信じているのです。理屈に合わないでしょ?まあ、もともと信仰とは理屈が通用しないものですが…。 でも、ビジネスは信仰ではありません。何とかなるだろうと考えて何とかなった例(ためし)はありません。ビジネスは科学です。祈るだけで好転することは絶対に起こりません。 繰り返します。まずは震災に対するリアクションを最大限行なって下さい。震災に関心のない塾(経営者)だと思われたら消費者から見捨てられます。そして、子供手当てが廃止されるまでの半年間が勝負です。年間の広告宣伝費を前倒しで使ってでも夏休み前の集客に努めるべきです。 その他の具体的な「あがき方」に関しては、本誌の執筆でもお馴染みの小林由香氏著「集客マニュアルブック」をお勧めします。中小塾が取り組むべき手法が丁寧に解説されています。 今年は、塾経営者としての力量が試される1年になります。東日本大震災が、塾業界の淘汰・再編を加速させることでしょう。今こそ、教育者として生徒・保護者を啓蒙し、経営者として地域経済を活性化させる役目を「あなた」が果たす時です。塾経営者の底力を見せてください。
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