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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座95 人は感情で行動する生き物です!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

2011年7月私塾界掲載分


-異業種に学ぶクレーム対応-


ホテルで体験した不愉快な思い

出張が多い私にとって、交通機関と宿泊施設は重要です。極度の高所かつ閉所恐怖症の私は、狭いビジネスホテルを避け、ほんの少しグレードの高いシティーホテルのツインに泊まることにしています。加えて、極度の方向音痴を自覚していますので、最寄の駅に最も近いホテルを選択します。結果、同じホテルを何度も利用することになります。そのホテルもそうでした。 先日、いつものように2泊の予約を入れ、チェックイン。翌日、いつものように朝食のために最上階の和食処へ向かいました。すると、なぜか照明が落ちて真っ暗です。よく見ると、入口に掲示板が置いてあります。

「本日、和食処は休業です。朝食は1Fのレストランをご利用ください」

このホテルの朝食は和食かバイキングを選択できる方式で、バイキングの苦手な私は決まって和食を選んでいました。

「何だ。今日は臨時休業か」

あまり疑問にも思わず、その日はバイキングで朝食を済ませ、仕事に出掛けました。 夜、ホテルに帰り、鍵を貰おうとフロントに立ち寄りました。ふと思いついて、案内係のホテルマンに尋ねました。 「明日の朝、和食処は営業していますか?」

すると、そのホテルマンは次のように言うのです。 「申し訳ございません。和食処は平日の朝は営業していません」

はいぃ?聞いていないよ~!

「チェックインの時にご説明申し上げるようにしているのですが…」

そんな説明は聞いていない旨を話すと、相手は次の一手を繰り出します。

「お渡しした朝食券に、書いてあるはずですが」

当日の朝食券は使ってしまいましたが、翌日の朝食券は部屋にあります。私は朝食券に何の説明書きもないことを確認してフロントへ戻りました。私は原理主義者ですので、些細なことを放置できないのです。また、ホテルがクレームに対してどんな対応をするのかを確認したいという職業病の一面もあります。

フロント・マスターを呼び出し、朝食券を見せて言いました。

「和食処が休みのことは、予約時のホームページにも書いてありませんし、チェックインの時にも説明を受けていません。先ほど、係りの人が朝食券に書いてあると言いましたが、ご覧のように何の記載もありません」

「申し訳ございません。本来、券をお渡しする時に、和食の案内は二重線を引いて説明することになっていたのですが、手落ちがあったようです」 「私は和食でなければ朝食をホテルで取るつもりはありませんので、これはキャンセルしてください」 「分かりました」

「それから、来月も2泊、朝食付きで予約を入れていますので、その朝食もキャンセルしてください」

明日の朝食をキャンセルするのですから、原理・原則を通せば当然の行動です。

「申し訳ありません。ホームページからの予約は、ホームページからキャンセルしていただけますか。こちらでは操作できませんので」 名古屋に帰って、あらためてホームページを覗くと、まだ「選べる朝食」として和定食が表示されていました。私はそっと?朝食だけではなく、宿泊の予約もキャンセルの手続きを取りました。もう2度とあのホテルを利用することはないでしょう。さて、ここから学ぶことは多いですね。


塾の現場に置き換えて学ぶ

まず、朝食のシステムが変更されたのに、ホームページが「そのまま」というのは問題があります。塾のホームページにも同様の傾向が見られます。例えば、時間割が変わったにも関わらず、ホームページの記載は「そのまま」ということはありませんか?

次に、古い食事券を使用することは良いとしても、その都度、ペンで二重線を入れて渡すというのはミスの元です。優秀なフロントマンでも忘れる危険性が高い。事前に、まとめて二重線を入れておくべきです。すると、フロントマンの目にも留まり、お渡しする時に説明することができます。

いつもの風景は、いつもの発想しかもたらさない…慣れ親しんだ朝食券のままでは、慣れ親しんだ対応になってしまうのは仕方のないことです。そうならない工夫が必要です。

最大の失敗は、客の感情を想像できないことです。これは「感情の理論」でお話しましたが、こう言えば、相手はどう思うだろうという想像力が欠如しています。

「チェックインの時に説明したはずですが」 「朝食券に明記しているはずですが」

このセリフは、客の頭では次のように意訳されます。

「お前は人の話も聞かず、文字も読めない馬鹿な奴だ!」

根底には、私が最初に話し掛けたホテルマンの自己防衛本能があります。つまり、「私は悪くない」と言外に主張したいのです。こんな対応だから、「責任者、出て来い!」というクレーマーお決まりのセリフが飛び出すのです。

クレーム解決のプロに言わせると、商品の不備は大きなクレームにならないが、対応の拙さは大きなクレームに発展するそうです。全くその通りです。私も、最初の段階、和食処の休みに気付いた時は、何の怒りもありませんでした。また、朝食をバイキングと和食の二種類用意することはコストが掛かります。リーズナブルな料金を維持するためにバイキングに統一することには理解ができます。チェックインの時に説明を忘れてしまったことも、たいした問題ではありません。

しかし、「お前は人の話も聞かず、文字も読めない馬鹿な奴だ!」と言われたのでは反撃せざるを得ません。


「○○君には伝えたはずですが」 「月末にご案内を差し上げたはずですが」 「入塾時にご説明したはずですが」

これらのセリフは禁句です。たとえそうだったとしても、説明不足を詫びることが重要です。そして…お礼を言うことです。


「ありがとうございます。ご指摘がなければ、当塾のご案内方法の欠点に気付かずにいるところでした。これで一つ、当塾を改善することができます。本当にありがとうございます。今後も、気付いたことは何なりとお申し付けください」

こうした対応ができれば、クレーマーはファンになっていきます。「あなたの塾」を気に入ってくれた客を対応の拙さで手放すことがありませんように。

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