この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
2011年9月私塾界掲載分
-モチベーションUPの極意-
7月、ドイツで行なわれた女子サッカーW杯で、日本は見事に初優勝を飾りました。夏期講習を直前に控えながらも、早朝のTVにかじりついて寝不足になった方も多いのではないでしょうか。
日本は実力的には劣るドイツ、アメリカになぜ勝利できたのか。そこには選手達が抱えていた高いモチベーションの存在を見ることができます。チームの中心、澤選手のコメントを引用して、モチベーションUPの極意について学びたいと思います。
塾スタッフのモチベーション(労働意欲)、塾生のモチベーション(学習意欲)を高めることは、塾経営者に課せられた最大の責務です。
アファメーションはモチベートに効果的
澤選手の優勝コメントです。
「最高の舞台で、最高の仲間と一緒にメダルを取れたのはうれしかったし、楽しかった。 今日の決勝戦は優勝するシーンしか想像できなかった。 日本が青のユニホーム、青のパンツ、青のソックスで戦って、表彰台の上でトロフィーを掲げるシーンまで鮮明に想像できていたし、ユニホームの色も含め、本当にそうなりましたね。 また、今日は川澄にネイルを新しく塗り直してもらったんです。これをやる日は必ず点が取れるんです。 (中略) 今大会で優勝できたのは、中堅世代の選手たちのおかげだと思います。 北京五輪の時もいいチームでしたが、あのころに若手と呼ばれていた選手たちが成長して、すごく頼もしくなりました。MVPも得点王も、みんながいてくれたから取れた賞だと思う。本当に感謝しています。 (中略) こうやって自分が好きなことをやって、たくさんの人が笑顔になってくれたり、応援してくださったりするのはすごくうれしい。今後、女の子がサッカーをやれる環境がもっと整い、また、サッカーをやりたいと思う女の子たちが増えてくれればいいなと思います。 (中略) そして、ロンドン五輪のアジア予選(9月)もすぐにあります。中1日、中2日などのタイトなスケジュールなので、しっかり体のケアをしてコンディションを整え、ロンドン五輪に出場したい。五輪でもみんなで力を合わせて、またメダルを取りたいです。W杯に優勝したらしたで欲が出てくるもので、五輪のメダルも欲しいなと思います。」
冒頭、澤選手はアファメーション効果について話しています。
彼女が「アファメーション」という言葉を知っているかどうかは知りませんが、もともと「メンタル・トレーニング」としてスポーツ界で研究が進んでいるのが「アファメーション」です。これは、モチベーションを上げる最も効果的な方法です。
大手塾がバスを連ねて「東大見学」を実施するのも同じです。自分が合格して東大に通う姿をアリアリと想像することが、生徒達のモチベーションを上げ、学習効果を高めます。
コーチングでは、「私は~になる」ではなく、「私は~だ」というビーイング思考を教えます。「私は志望校合格を目指して頑張る人になります」ではなく、「私は志望校合格を目指して頑張る人だ」と言い切るのです。それが、本当の「頑張る人」を作ります。
澤選手は「青いユニフォーム」を着てプレーし、勝つイメージをアリアリと持っていました。表彰台の上で優勝カップを掲げる自分の姿も見ていました。幸運のネールアートも塗り替えました…だから得点を挙げ、優勝しました。
これは偶然ではありません。もちろん、それだけが優勝の理由ではありませんが。
レベルが上がれば上がるほど、勝敗の差は紙一重です。陸上や水泳では百分の一秒差で決着することも珍しくありません。そのために爪を伸ばしたり、抵抗を抑えるために全身の体毛を剃ったりもします。そこまでやって、紙一重の差を自分のものにするのです。
感謝の心を忘れると成長が止まる
次に指摘したいのは、これは澤選手だけではなく全選手に共通していることですが、周りの人、日本で応援してくれている人に対する感謝の念が非常に強いということです。
女子サッカー選手は男子ほど恵まれていません。ほとんどの選手が仕事をしながら選手生活を続けています。ある選手は社員として普通に働きながらも、一般社員よりも早く仕事場を離れて練習に向かいます。インタビューで「一般社員の人に申し訳ない思いが強い。その分、試合で結果を出して恩返しがしたい」と語っていました。
人は、自分のためではなく、誰か自分以外の人のために行動する時の方が力を発揮します。
私が「歪んだ自己責任」を否定する理由のひとつです。「勉強は自分の幸せのため」と教えられるから、「自分さえよければ勉強しなくてもいいんだ」「自分さえ今の生活に納得していれば働かなくてもいいんだ」という若者を大量発生させています。
誰かの思い、行為に感謝して、それに報いるために行動する。その意義を子ども達にも教えたいものです。親が食事を作ってくれるのは当たり前。塾に行かせてくれるのは当たり前。周りの人が自分を楽しませてくれるのは当たり前…そんな考え方の生徒が最高の力を発揮できるはずがありませんし、周りの人の応援を得られるはずもありません。
感謝の心を忘れた瞬間、成長は止まります。澤選手をはじめとする「なでしこJAPAN」は、そんな当たり前のことも思い出させてくれます。
「学問が好き」という動因を宿らせる
最後に、澤選手は前向きな姿勢も見せてくれています。
今回のW杯を有終の美として第一線から退くのではないかという憶測もありましたが、彼女はロンドンオリンピックへの抱負を語っています。一つの成功体験が次の目標へ向かうモチベーションを作り出すのです。
また、そこには根源的なモチベーションの存在が見て取れます。これは男子サッカーの三浦選手にも言えることですが、彼らには内的モチベーション(動因)が宿っています。「サッカーが好き」という揺るぎない思いです。
学問とは極論すれば、特殊な職業に就かない限り最終的には趣味の世界です。誤解を恐れずに断言すれば、勉強は「強いて勉める辛い訓練」ですが、学問とは楽しい知的探求行為です。
たとえ「成績向上」「志望校合格」を目的とする塾でも、学問の楽しさを伝える演出が必要なのです。単に得点の向上を目的に勉強させるだけの「つまらない塾」と、学問の楽しさを感じさせる努力を続ける塾と、どちらが子ども達の学習意欲を喚起し、支持されるか…言うまでもありません。
塾生には学問が好きになるように、教師には学習指導が好きになるように導くことが、それぞれのモチベーションを高める究極の方法です。
どんな逸話や例え話を用いても、現実のドラマには適いません。今回のW杯で繰り広げられたドラマを使って子供たちの、スタッフのモチベーションを高めてください。
そして、最もモチベーションをUPさせなければならないのは「あなた自身」であることは言うまでもありません。部下や生徒のモチベーションを高める最大の条件は、経営者自身の高いモチベーションの存在です。エネルギーは増幅しながら伝播する存在だということをお忘れなく。
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