この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
小手先の?戦術の必要性
現在は「戦略」という言葉がブームのようです。本屋へ行けば「○○戦略」という題名のノウハウ本が所狭しと並んでいます。戦国時代、特に織田信長がもてはやされるのも同じ理由でしょう。天下統一へ邁進する信長の戦略はビジネスにおいても参考になることは間違いありません。ランチェスター経営の竹田陽一氏の主張を待つまでもなく、戦略と戦術の重要度は8対2であることに異論はありません。
しかし、だからと言って戦術が重要ではないかと問われれば「否」です。確かに戦略と戦術の重要度は8対2ですが、もし、戦略だけを考え戦術を何もしなければ、得られる成果は「0」です。ところが、戦術のみを実行した場合は少なくとも「2」の成果は得られます。
戦略と戦術の重要度=8対2
戦略8、戦術0の場合の成果=0
戦略0、戦術2の場合の成果=2
これまで多くの塾が戦術ばかりに目を向けていたため、得られる成果はどんなに頑張っても2でした。私もそのことに警鐘を鳴らしてきたつもりです。ところが、最近の「戦略ブーム」によって逆に戦術を軽視する風潮が蔓延しているように感じます。戦略ばかり練っていても戦術、つまり実践が伴わなければ得られる成果は0になってしまうことを知ってください。
同様に暗黙知と形式知の関係にも同じことが言えます。暗黙知は絶対に必要なものですが、それは形式知が不要だということではありません。例えば「ラーメンの味」はその店の暗黙知ですが、丼、箸、テーブル、椅子、内装等々、形式知の助けがなければ「行列のできるラーメン屋」は作られません。お互いが補完関係になっているのです。
ここ数回、ニュースレターや教育説明会の「戦術」について取り上げているのも「全ての戦略は戦術(実践)を伴って初めて威力を発揮する」と考えているからです。
「直筆の手紙を書くこと」「教室の掲示板にポップを貼ること」「ニュースレターを発行すること」…
ひとつひとつは「小手先」のように思われても、あなたの戦略は「小手先の戦術」でしか顕在化できないのです。「戦略は目に見えないもの、戦術は見えるもの」と言われる所以(ゆえん)です。
イベントでコミュニティーを作ること
さて、今回はイベントのお話です。イベントに対する取り組みは塾によって大きく二分されています。積極的に取り組んでいる塾と、全くと言っていいほど実施していない塾と。結論から言うと「絶対にやった方がいい」です。
例えば、最も安直な方法である「ボーリング大会」を考えてみましょう。以前もご紹介したことがあると記憶しているのですが、ある塾が150名以上の子供たちを動員してボーリング大会を実施したことがあります。見学の保護者も多く、それはそれは盛り上がりました。こうした話をすると「塾がボーリングなんて…」と批判的に見る方もいらっしゃいますが、ちょっと考えてください。塾が主催しなくても子供たちはボーリングをすることはあるでしょう。しかし、それは家族4人で、友達同士8人で…というレベルがほとんどのはずです。150人規模のボーリング大会に参加する経験をすることは、まずありません。塾が主催するから可能なのです。
人が生きていくためには消費活動が不可欠です。人生を豊かにするためのレジャーも必要な要素です。子供たちが同じボーリングに「お金」を使うのであれば、より楽しく思い出に残る場面(ステージ)を提供することは塾に出来る社会貢献の1つです。あの日、150人の中で優勝トロフィーを受け取った子供たちは一生の思い出として記憶し続けることを信じて疑いません。いえ、全ての参加者が楽しい塾生活のひとコマとして折に触れ思い出すことでしょう。
「あなた」は学生時代の学校や塾での授業風景をありありと思い出すことができますか?私にはそんな記憶がほとんどありません。しかし、中学2年生の秋、新人戦で2塁打を打ったときのバットのグリップから伝わる手の感触を今も鮮やかに覚えています。そうした思い出を子供たちに1つでも多く残してあげるためにもイベントを実施することは意味があるのです。もちろん、ビジネスの面から見ると、イベントを通して多くの見込み客を獲得することにも大きな意味があります。先のボーリング大会の例で言うと「1チーム4人の内、一人でも塾生がいれば後は塾外生でもOK」という「仕組み」により40名以上の他塾生(見込み客)を集客することに成功しています。
ことはボーリング大会に限ったことではありません。クリスマス会等の記念日はもちろん、バスケットでも綱引きでもコンサートでも教育セミナーでも…塾だからこそできるイベントは無数にあります。
こうした話をすると「私のところは50名足らずの小さな塾ですから150名のボーリング大会など、とてもとても…」と最初から敬遠してしまう経営者がいます。例え50名でも実施する価値はあると思いますが、150名の大会にしたいのであれば同規模の3つの塾が共同で主催すればいいだけです。
実は地域の中小塾が協力することで可能になることはいっぱいあります。1つの塾では無理なことでも10の塾が協力すれば「大運動会」も、市民ホールでの「教育セミナー」も、民宿を貸し切った「夏期合宿」だって可能です。大手塾は全てを自前でやっています。中小塾も互いに協力することで、大手に対抗できるイベントを実施することができるのです。ところが、ほとんどの塾経営者は「そんなことが出来たら素晴らしいなあ」と口を揃えて言うのですが、実際にはなかなか実現しません。なぜでしょう。
真ん中で旗を振る人がいないからです。
地域の真ん中で旗を振れ!
私は今後の中小塾の発展の鍵はここにあると考えています。これまで「客」のネットワーク作りの重要性(詳しくは次号で説明します。)を訴えてきましたが、同時に「塾のネットワーク」を構築することは急務です。それが実現しなければ…中小塾が大手塾に駆逐されていく流れは止まらないでしょう。
これまで中小塾がビジネスパートナーとして相互協力することは難しいとされてきました。しかし、それぞれがwinwinの関係で協力することができれば、新しい可能性が開けてくるのです。そして、そのためには真ん中で旗を振り続ける人の存在が不可欠です。多くの勉強会や団体が尻すぼみのように消滅していくのは求心力の弱さが原因です。もし、誰かが真ん中で旗を振る必要があるのなら、その役目をこなせるのは「あなた」しかいません。毎月、月刊「私塾界」を購読して勉強している熱心な「あなた」こそ、その役目にふさわしいのです。
誰かに頼るのではなく自ら真ん中に立つ覚悟、それが「あなたの塾」の発展を牽引するエネルギーとなることでしょう。
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