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  • 執筆者の写真森智勝

塾・新時代のマーケティング論(42) しかし、それは今日ではない!

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

 夏休みが終わり、各塾では後期へと移行しています。これからの1日1日が来春の集客につながります。「ローマは1日にしてならず」という格言もあります。また、イチロー選手がメジャーリーグの安打記録を打ち立てたときに語った「全ては一本一本の積み重ねで、気が付けばこんな高みに到達した。」というコメントも印象深いですね。日々の授業、業務を大切にして過ごしてください。

「あなた」は「ロード・オブ・ザ・リング」という映画をご覧になったことがあるでしょうか。日本でも大ヒットした3部作のハリウッド映画ですが、その最終章の最後の場面が素晴らしい。実は私も著名な経営コンサルタントの小阪氏にご教授いただいて見たのですが…物語の最後、人間の兵士たちと魔界の軍団の最終決戦が行われます。向こうから魔界の軍団が10倍、100倍の数で迫ってくるのが見え、兵士たちは恐れおののきます。その時、主人公の王が馬上で剣を振りかざして叫ぶのです。

「今、君たちの目が恐怖に覆われようとしているのは分かる。もしかしたら、我々人間が魔界のものに敗れる日が来るかもしれない。もしかしたら、我々人間が魔界のものに支配される日が来るかもしれない。しかし…」

 ここで彼は、映画史上に残る台詞(せりふ)を吐きます。

「しかし、それは今日ではない!」(But, it is not this day!)

 経営者には辛く、厳しい状況に置かれることがしばしばあります。それは塾業界も例外ではありません。悲しいことですが、経済自殺をする人が年間1万人近くいると言われています。全てを投げ出し、自分の命で清算したくなる気持ちも同じ経営者として分かります。命を投げ出すまではいかなくても、思うように経営がいかない時、職員との軋轢(あつれき)に悩んだとき、保護者からの理不尽な申し出に苦労したとき…塾経営を投げ出したくなったことは誰にでもあるのではないでしょうか。しかし…

それは今日ではない!

 今、できることがあるはずです。今日できることを今日やり、明日できることを明日に…そうやって1日1日を過ごした塾が、実は5年10年と勝ち残り、発展していくのだと思います。全てを好転させる「魔法の杖」はどこにもありません。福田総理、突然の辞任を見て「ああ、総理大臣とは気楽なものだなあ。私もあのように簡単に投げ出せれば楽なのに…」と思った方が少なからず存在していると思います。でも、今の苦労も「経営者の醍醐味」と覚悟して頑張って下さい。

 セミナー等の講演でしばしばお伝えしてきた内容ですが、後期の始まりにあたって、本誌読者全員とシェアしたいと思い、ご紹介しました。

 さて、では後半期、具体的に何に取り組めばよいか。私は次の点を指摘したいと思います。 社内にある2つの財産の掘り起しです。マーケティングの定説ですが、1から始める新規顧客獲得コストは、口コミ・紹介によるコストの10倍以上掛かります。縮小均衡市場では、チラシやコマーシャルによる「衝動買い」の期待値は下がる一方です。それに対して、塾内には過去の顧客名簿という宝の山が存在しています。ところが、多くの塾が上手く活用できていません。この同窓会?ネットワークを活性化させる方法はないかと考えてみて下さい。

ウォンツで成り立っているビジネスは取り引き終了後の口コミが期待できます。感動した映画を見た人は、その感動を誰かと共有したくなります。友人に「ねえ、あの映画見た?」と話してくれます。ところが、ニーズで成り立っているビジネスでは、取り引きが終了したとたん顧客のアンテナが消滅するので、そのことを話題にすることはありません。

「あなた」も、歯医者に通っている間はいつも頭の片隅に歯の治療のことがあるはずです。人は負の感動に対しても共有を求めます。「今度、神経を抜かなければならないんだ…」と、友人に話し掛けることもあるでしょう。ところが…治療の全てが終了し医院の外に出た瞬間、「あなた」の意識から歯医者のことはすっかり消滅してしまいます。当然、話題にすることはありません。そんな晴れ晴れとした1週間を過ごしていたとき、歯科医院から1通の手紙が届いたと想像して下さい。

「○○様へ その後、歯の具合はいかがでしょうか。完璧な治療を施したと自負はしておりますが、万一、不具合があったり、痛みがある場合は、すぐにご連絡下さい。優先的に診療させていただきます。もちろん、新たな症状に対しても速やかに対応いたしますので、ご遠慮なくお申し出下さい。」

きっと、誰もが素晴らしい歯医者だと思うはずです。そして、歯の痛みで苦しんでいる友人がいれば、「良い医者を知っているから、紹介しようか?」と声をかけることでしょう。

同じことが塾の現場でもおこっています。志望校に合格した生徒の眼前には新しい魅力的な世界が開けていますので、卒塾した塾のことなど忘れてしまっているのです。これでは口コミ・紹介を期待するのは無理です。よく「当塾は熱心に指導して、成績も向上させ志望校に合格させているのに、その後、なかなか当塾の宣伝?をしてくれないのですよ。」と嘆く塾長がいますが、それは当然の帰結です。生徒のアンテナが立っていないのですから。(もちろん、保護者も)

アンテナを立たせる工夫を考えて下さい。「ああ、この塾は卒塾した後もこうして気にかけてくれている」と思わせることです。せっかく膨大な顧客名簿という宝を活用しないのはもったいないことです。不特定多数に送る大量のDMよりも、卒塾者に送る「同窓会の案内」のほうが遥かに費用対効果は高いものです。

もうひとつの塾内財産は、言うまでもなく人財です。特に今春に入社した新卒社員は、この時期、モチベーションを落としがちです。この人財をブラッシュアップすることが重要なのですが、詳しくは次号でお話します。

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