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執筆者の写真森智勝

塾・新時代のマーケティング論(60) マーケティング的マネジメントⅠ

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

 3月、塾業界にとっては年度の始まりです。この春の募集状況はいかがでしょうか。これから一年の健闘を期待します。  さて、この時期になると人事の異動や新人が加わることで、組織がバタバタします。特に3月は公立高校の入試、年度変更、新規生入塾…ただでさえ現場は混乱します。しかし、生徒・保護者…いわゆる客にとっては何の関係もないことです。「この時期だから多少の混乱は仕方がない」という甘えが命取りになることもあります。そうした時期だからこそ、しっかりとした現場運営で他塾との差別化を図って下さい。期待と不安を抱えて初めて塾にやってきた新塾生の教材が準備されていなかった…などということがありませんように。  私はマーケティングを専門として勉強していますので、マネジメントは門外漢ですが、マーケティング的にマネジメントを見ることはできます。人の感情とは、それが客であっても従業員であっても共通のものです。マーケティング的視点をマネジメントに応用すると、思わぬ効果があるものです。まずは、最近の社内人間関係を一般論として説明します。  人の成長を図る場合、組織のあり方を見逃すことはできません。人は誰でも何らかの「組織」に属し、そこに貢献することが成長の証しだからです。  一般的に最も小さな組織は家族と言われています。父親、母親、子供が二人…日本では、それが標準家庭とされています。その中で、それぞれがそれぞれの役割を担って家族を構成しています。  その周辺に地域社会(市町村、県)があり、最も大きな組織が日本です。よく、地球船宇宙号?と言って、地球自体を1つの組織(まとまり)とする考え方を提唱する進歩的人物がいますが、私はその考え方を採りません。組織とは常に別組織との対比の中で相対的に捉えるものであって、組織的宇宙人?の存在が身近に脅威として感じられない限り、地球そのものを1つの組織としてリアルに論じるのは難しいと考えているからです。  映画の「ディープ・インパクト」や「インディペンデンス・デイ」のように、地球規模の危機に直面するという想定の元で初めて、人類がひとつになるという物語は成立します。  家族が最小の組織体と考えられるのも、家庭内は互いの信頼が存在し、利害が一致しているからです。逆に言うと、他の家族とは利害が一致しない部分があるということです。それは、規模が大きくなるにつれ濃度が薄くなり、国を超えると基本的には0度になります。  確かに、環境問題のように国境を越えた利害も存在しますが、COP-15の会議を見ても明らかなように、「人」は地球益よりも国益を優先して行動します。それは、「組織」の概念が「国」という範囲までしか及ばない証拠です。  つまり、組織というものは人が「利害が一致する」と考える関係性の中にしか存在し得ないと定義することができるのです。 さて、組織が利害の一致する部分を共有する人の集団と定義すると、当然、企業は組織の一つであることは明らかです。ところが、その組織のあり方が近年、大きく変わってきました。  かつての日本企業では、次のようなシーンが当たり前のように繰り広げられていました。 新入社員「課長、指示された販売資料、出来上がりました。」課長「バカヤロー!言われたことしかできていないじゃないか。こんなのは仕事とは言わない。他に必要なものはないか、自分の頭で考えて付加するのが仕事だ!」  つまり、個人の業務内容の範囲が実にあいまいで、掴みどころがないのです。当然、その「あいまいな部分」は他の職員の業務と重なっている場合があります。自分の仕事の一部には他者の仕事と重なる部分が存在し、協力・調整等の必要がありました。そうした業務を円滑に行なうため、社内のコミュニケーションが必要となり、濃密な人間関係を構築する必要も生まれました。以前は企業を家庭になぞらえ、慰安旅行、運動会、遠足等が盛んに行なわれていたのは、そうした社内の濃密な人間関係の構築に寄与するためです。  ところが、バブル崩壊以降、成果主義なるシステムが日本企業に導入され、事情は一変します。個人の業務範囲の輪郭が明確になり、それを完璧にこなすことが求められ、報酬とリンクされるようになります。人は自分の業務に没頭し、他者との調整・協力といった部分に時間や労力を惜しむようになります。象徴的な台詞がこれです。 「それは私の仕事ではありません。」  当然のように、誰もが成果に反映しない仕事をしなくなります。個人と個人の間に隙間が生まれ、そこに落ちてしまう「仕事」も発生します。自分の仕事を追及する姿勢が強まり、社内の融和やコミュニケーションの必要性を感じなくなります。それどころか、そうした行為を疎ましいと思うようになります。いったい、どれだけの企業が慰安旅行や社内運動会を廃止したことでしょう。 個人が、それぞれのテリトリーの中にこもってしまい、他者との関係を拒絶し始めます。この様子を「タコツボ状態」と言います。 今、多くの企業で弊害が生まれています。一つは、企業文化・風土の継承ができないことです。そればかりか、技術・経験という企業が本来持っている財産まで継承されなくなっています。  例えば、最近の若い社員は、与えられた業務を「自分ひとりの力」でこなそうとします。本来、先輩社員に聞けば簡単に分かることでも、「これは、自分に与えられた仕事だから、先輩の手を煩わすことはできない」と考えます。先輩も、自分に与えられた業務・ノルマに精一杯で、後輩を助けることまで思いが及びません。誰もが余裕を失くしているのです。結果、全体の能率が著しく低下してしまいます。効率化を目的とした改革によって非効率するという皮肉な結果を招いています。  そうした組織的変革は、個と個の間に多くの重要な業務がこぼれてしまい、業務全体の精度すら劣化するという現象をも産んでいます。 「自分がやらなくても誰かがやるだろう。」 「何も、自分がやらなければならない理由はない。」 「それをやったところで、自分の評価が上がるわけではない。」 「それをやれと命令された覚えはない。」  まあ、会社の業務に限らず、「やる理由」を探すより「やらない理由」を探す方が100倍は楽です。  あなたの塾に、そんな傾向はありませんか?紙面が尽きました。後半は来月、お話します。

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