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  • 執筆者の写真森智勝

塾・新時代のマーケティング論(70) 年頭所感に替えて/2011年は原点回帰の年

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

 明けましておめでとうございます。いよいよ2011年が始まりました。本年も紙面を通してよろしくお付き合い下さい。  経済界では、本年が大きな転換期になると言われています。大きな理由の1つは、来年にアメリカ、ロシア、中国をはじめとする主要国で最高責任者の交代が予定されていることです。政権の交代前は、どうしても政権自体がレイムダック(死に体)になります。また、選挙前の政権は国内世論に配慮するため、どうしても保護的政策に傾きます。主要国が揃ってそうした行動に出た場合、日本にとって大きな打撃を受けるであろうことは容易に想像がつきます。  塾業界も、そうした社会の動きと無縁ではいられません。各塾がこぞって高校部の拡充、幼児教育への進出を図っているのは少子化に対応するためであり、授業料の下方圧力が強くなっているのはデフレ不況下では必然の動きです。今年一年、そうした傾向はますます強くなっていくことでしょう。この傾向を一言で表すと、「業界内二極化」です。  かつて、「ジャンルに貴賎なし」という言葉が流布されたことがあります。「医者や政治家が尊く、八百屋や塾屋?が賎しいということはない」という意味です。しかし、そうした言葉が言われるということは、社会自体が貴賎を認識していた証拠です。最近、この言葉を聞かなくなったのは、社会全体の意識の中で、貴賎感覚が薄れてきたということでしょう。「なりたい職業」の上位にキャバ嬢がランクインしたというニュースなどに触れると、隔世の感があります。しかし同時に、ジャンル内の貴賎が顕在化してくるようになりました。つまり、塾屋が賎しいということはないが、塾屋の中に「貴」と「賎」が存在すると意識される時代の到来です。  縮小均衡市場とは、言い換えると買い手市場です。主導権が買い手(消費者)に委ねられます。この消費者の大半はバブル景気以降、「費用対効果」を否応なく学んできました。価値を認める物には投資を惜しまないが、そうでないものに対しては徹底的に倹約する人たちです。いわゆる「プリウスに乗って100円ショップに出掛ける消費者」です。彼らは、塾の中の貴と賎を見極め、我が子にとって最も相応しい1つを選択するという行動に出ます。いえ、それ以前に、我が子にとって本当に塾が必要かどうかを判断するという傾向が強くなっています。以前のように、「友達が行くから…」という風見鶏的行動者は激減しています。  こうした情勢の中で、我々が目指すものも自ずと明らかになってきます。まず、塾業界の中の「貴」を目指すことです。具体的に言えば商品、つまり授業のクオリティを徹底的に向上させなければなりません。もう、塾というだけで、あるいは個別指導というだけで支持される(ビジネスとして成立する)ことはありません。提供する商品の品質が問われているのです。  ここで言う品質には二つの側面があります。1つは、商品そのものが魅力的かどうかです。子ども達が塾から帰って保護者に「今日ねえ、塾の先生が…」と、話したくなるような授業を展開しているかどうかを見直してください。単なる学習指導ならば、学校でも他塾でもやっています。そこに留まっているようでは魅力的な商品とは言えません。子ども達がワクワクして通塾し、授業を受けた後はますます学習意欲が高まる…そんな指導が必要です。  もう1つは、商品の有効性です。ニーズで成り立つビジネスでは効果があるということは絶対条件です。  「1インチドリルが5万台売れたのは、ドリルを欲する人が5万人いたのではない。1インチの穴を必要とした人が5万人いたのだ」  以前にも紹介したことがあるマーケティングの格言ですが、塾も同じです。客は授業そのものを必要としているのではなく、そのことによって得られる効果、具体的には「成績向上」「志望校合格」を必要としています。塾の中には「当塾は成績向上を目的とした塾ではありません」という主張をしているところもありますが、それは「成績向上を実現している塾」にのみ有効なメッセージです。塾が第一義的に「学力(成績)の向上」を図る機関である以上、この点を避けて通ることはできません。ならば、そのために必要なカリキュラム、教材等に最大限の心血を注ぐのは当然のことです。  業界内二極化を別の切り口で見ると、戦略的方向性の二極化が挙げられます。いわゆる「100円ショップを目指すのか、ブランドショップを目指すのか」の選択です。小売業界で始まった価格の二極化は、今では外食産業等、他業種にまで拡がりを見せています。牛丼業界、居酒屋業界の「低価格戦争」は熾烈を極めています。一方で、一貫2000円の握り寿司を提供する店も健在です。「2対8の法則(パレートの法則)社会」の到来による所得の二極化が背景にあります。  塾業界でも同様の動きは顕著です。ここ数年、大手塾を中心に低価格傾向が強くなっているのはご存知の通りです。個別指導塾でも圧倒的な「お値打ち感」を武器に業績を伸ばしているところが目立ちます。ただ、この戦略はマス・メリットを享受できるだけの規模で展開できる一部の塾にのみ可能な戦略です。確たる戦略もなく中小塾が追随することはお勧めしません。アダム・スミスの言う「見えざる手」が働くのは、特殊な条件が揃っている時だけのことです。  ブランドショップ化に関しては、まだまだ検討の余地が大きいと考えています。保護者から「高い。でも…」と言ってもらえる塾作りです。子ども達が、その塾に通っていることを誇らしく思う塾作りです。すでに「プレミア・コース」「○○選抜コース」等の名称でブランド化を図る動きは進んでいますが、今後はいっそうの拍車が掛かると予想します。  最後に、見込み客の存在場所を明確にすることをお勧めします。前述のように、塾そのものに価値を認めていない家庭は一定の割合で存在します。そうした家庭に塾をセールスしても効果はありません。例えて言えば、免許を持っていない人に車を売り込むようなものです。そうではなく、塾の必要性、有効性を充分に認めている家庭、つまり現在他塾に通っている家庭(生徒)が「あなたの塾の見込み客」です。その層に対して、「より良い(相応しい)商品がココにありますよ」と伝えることがマーケティングです。(もちろん、社会に対して教育の必要性を訴える啓蒙活動は不断の取り組みが必要なことは言うまでもありません。)  前回の繰り返しになりますが、そうした業界内の熾烈な競争を通して、業界全体のクオリティを高めることが我々塾人の為すべき社会貢献の王道です。  2006年秋をピークにして、日本の人口が減少に転換するという歴史上初めての現象を我々は経験しています。ここ数年続いている年間30兆円を超えると言われるデフレギャップの根本的原因は、ここにあります。当時、この傾向に対応できる社会体制作りに5年は掛かると言われていました。2011年は、その最終年です。今年の動向如何で、近未来の趨勢が見えてくるかもしれません。それは、塾業界にも言えます。振り返れば、株式会社ナガセが四谷大塚をグループ化したのが2006年の秋であることは象徴的です。その翌年には株式会社ベネッセコーポレーションによる東京個別指導学院の子会社化があり、業界は一気に流動化(再編化)の時代に突入しました。今年は、この流れに一定の「答え」が見え始める年になるのでしょうか。 私は、予想は外れるものだという前提で言えば、原点回帰の年になると思えてなりません。前半でお話した「授業のクオリティ」に徹底的にこだわった塾が大きな支持を集め、未来を切り開いていくことでしょう。「竜退治の騎士になる方法」(岡田淳著)という児童書があります。その中で、騎士になるためには「トイレのスリッパを揃えることだ」と教えています。それを続けていれば、必ず次に為すべきことが見えてくると。我々にとっての「トイレのスリッパ」は授業以外にはないと思えるのですが…。  今年一年、あなたの奮闘を心から期待しています。

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