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  • 執筆者の写真森智勝

新時代のマーケティング論(18) 走光性・人は明るさを求めている 2006年9月私塾界掲載分

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。 早いもので、あっという間の9月。皆さんの塾の後期スタートはいかがだったでしょうか。私のような立場の者は、塾が忙しい「夏休み」には仕事がなくなります。この間を利用して多くの企業・塾を訪問させていただきました。お世話になった皆さんに紙面をお借りして御礼申し上げます。

訪問先は塾関連企業中心だったのですが、その他にも「花屋」「電機部品販売」「塗装業者」「工務店」等異業種企業にも勉強に行きました。マーケティングの世界では「小さなヒントは同業種から、大きなヒントは異業種から」という言葉があるように、一見何の関係もない業種から得られる情報が役に立ったという経験は誰もが持っていると思います。 今回の企業訪問で再認識したことが2点あります。

1つは好調の塾(企業)は社内が明るいということです。「業績が好調ならば社内の雰囲気が明るいのは当たり前じゃないか」という声が聞こえてきそうですが、ここで言う「明るい」は物理的な明るさです。内装や照明が「明るい」のです。そして、整理整頓がしっかり行き届いている。

中には切れた蛍光灯がそのままになっていたり、電気代を節約するためにわざと蛍光灯を外しているオフィスに出会うことがありますが、やはり印象は良くありません。

現在、明るいオフィスは企業経営において必須と言われています。そこで働く社員のモチベーションが違ってくるのです。私はよく「塾生が自慢できる塾作り」というテーマでお話をするのですが、理屈は社員についても同じです。社員が…例えば学生時代の友人に自慢できる職場環境を提供することは、働くモチベーションに大きく貢献します。

以前、映画「スーパーの女」の中で、「パートさんが自分の働く店で買い物をしないスーパーは流行らない」という場面がありましたが、塾だって同じです。「口コミ・評判」の最初の発信源は経営者であり、従業員です。社員が自社を自慢できる、パートさんがお子さんを通わせる塾は伸びます。職場が「明るい」ということは「自慢できる職場環境」の必須項目です。

もちろん、中には「ケチケチ経営」で利益を上げている有名な企業があることも承知していますが、少なくともサービス業、それも若い世代が主力の塾業界では「明るい職場」の方が断然優位です。

もう一つ切実に思うことがあります。「挨拶」の重要性です。訪問したとき、「こんにちは」と元気な声を掛けてもらうことは本当に気持ちが良いものです。当然、私の正体を知らない人もいるでしょう。しかし、教育の行き届いた塾(会社)は、決まって笑顔と元気な挨拶で迎えてくれます。たぶん、訪問者が保護者でも出入りする業者でも同じように接しているのでしょう。

そうかと思うと、受付で「こんにちは」と声を掛けても何の返答もない塾があります。ガラスの向こうに数人の「スタッフ」がいるのは見えています。しかし、「接客は自分の仕事ではない」とばかりに自分の仕事に熱中し、受付係の事務員が来るまで訪問者を無視しています。また、保護者には丁寧な対応をしているのですが、業者相手だと急に横柄な態度に変わる塾経営者もいます。相手もその場では作り笑顔で対応するでしょうが、心の中ではどうでしょうか。家に帰って、あるいは職場で何を話すでしょうか。この経営者は「出入りの業者も市場とつながっている」という当たり前の原則を忘れています。

人と人とのコミュニケーションは、言うまでもないことですが「挨拶」から始まります。第一印象が判断の80パーセントを占めるというデータもあります。

私は多くのセミナー(講演・社員研修)を依頼されますが、最も心掛けていることは「こんにちは!」の第一声に全てのエネルギーを込めることです。すると、会場から「こんにちは!」と返事が返ってきます。このやり取りが上手くいったときのセミナーは間違いなく充実したものになります。

あなたの塾では授業の開始を元気な挨拶から始めていますか。生徒から元気な挨拶が返ってきますか。この「挨拶」を軽視している塾は塾生の募集も社員の募集も苦戦しているのではないでしょうか。以前、ある塾を訪問したときのことです。すれ違う塾生たち誰もが私に挨拶をしてくれます。これにはビックリしました。説明がなくても、この塾が人格教育にまで配慮して指導されていることが理解できます。もし、私が教室見学に来た保護者ならば、そ

れだけで入塾を決断したことでしょう。

塾以外の企業に訪問して感じるのは、どの業界も市場の縮小に対して大きな危機感を感じ、対策に頭を悩ませていることです。販路拡大に踏み切るのか、顧客との関係強化に徹するのか…それはそれぞれの選択です。しかし、結果として最も多い選択は「何もしない」です。危機感は感じながらも、結局先送りをしてしまう。以前から言うように、人は「変化」が苦手なのです。特に、経営体質の脆弱な塾業界は中小塾を中心にその傾向が強いように思います。業界は今、再編の嵐が吹いています。縮小均衡市場では宿命のように起こる現象です。しかし、だからこそ業界が活性化し、ビジネスチャンスも生まれます。「何もしない」戦略ではそのチャンスも掴めません。

足元を固めるのでしたら、「挨拶」の徹底から始めることをお勧めします。(もちろん、スローガンで終わらせず、「形」にすることが重要なことは言うまでもありません。)そして、講師には「1回の授業の中で1つは子供たちが感動するネタ?を仕込むこと」を徹底させるのはどうでしょう。(ネタ帳を作って共有化し、来年度以降も蓄積していくと効果的です。)労働集約型の産業である塾にとって、商品力の向上とは人間力(講師)の向上に他なりません。

あなたの塾の後期戦略は何ですか。ヒントは常に現場にあります。

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