この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
例年より遅い梅雨明けを迎え、各塾では夏期講習の真っ盛りですね。豪雨に地震、今年も自然災害に翻弄された日本列島ですが、そうした諸問題を解決する未来の頭脳を育てるのも塾人の役割かもしれません。将来の地球を救うために全力で夏期講習に取り組んでください。
子供たちがこの夏に大きく学力を伸ばすように、若い社員が成長するのもこの時期です。特に、新入社員にとって初めて迎える夏期講習は、塾人として一皮向けるチャンスです。経営者としては若い社員が成長するための機会を存分に与えてあげてほしいものです。
さて、この紙上セミナーで何度も取り上げているように、夏期講習生(外部受講生)を後期生として入塾させることは塾の死活問題です。評判(塾の評価に関わる口コミ)は塾生でなくなった「客」が広げます。講習は受けたけれど、継続通塾に至らなかった「客」は、けっして良い評判を広げることはありません。人に聞かれれば、「う~ん、講習は受けてみたけれど、ちょっとね…。」と話すに決まっています。多くの外部生を獲得したからといって喜んでばかりもいられません。継続率が低かった場合、それは悪い評判を一気に拡げることにつながり、来春の新規募集にも影響を及ぼすものです。
また、ある私立高校が一人の学生に70以上の大学(学部)を受験させ、合格実績を水増しして発表していたことが発覚、大きなニュースになりました。残念なことですが、塾業界もそうした疑いの目を注がれていることは間違いありません。講習生を全て正規塾生にすることができれば、姑息な手段に手を出す(講習のみの受講生の合格実績も含めて自塾の実績として発表する)必要もなくなります。
すばらしい講習内容を提供することは当然ですが、外部生(及びその家庭)に対するコミュニケーションを徹底することです。私は講習中に最低3回は家庭と接触することをおススメしています。顧客ロイヤリティ(企業、商品に対する信頼度)は接触回数と比例するという原則を思い出してください。今からでも間に合う対策を急ぎましょう。
ビジネスにとってファースト・インプレッションは最重要と言われています。見込み客に「購買」という大きなハードルを跳んでもらうためには確かに大切です。しかし、塾のように常連客を集める形態のビジネスにおいて「セカンド・インパクト」は欠かせません。
顧客ロイヤリティは購買時が最も高いのです。そして、購買直後から急速に低下します。顧客の心理としては「本当にこの商品で間違いなかったかな?」という思いが必ず沸き起こるものです。あなたも、例えば高額な車を入手した時、同様の思いを抱いたことがあるのではないでしょうか。「もしかしたら別のディーラーからもっと安く購入できたかもしれない」「やっぱり、あっちの車の方が良かったかもしれない…。」他商品と迷ったあげくに購入した時ほど、その思いは強くなります。これを「バイヤーズ・リモース」(購入後の後悔)と言います。これが急激に顧客ロイヤリティを低下させる原因です。
そこで「セカンド・インパクト」が必要なのです。顧客に「自分の決断は間違いではなかった」と確認してもらう手段です。このセカンド・インパクトは顧客をファンにするための重要な要素です。これを与えられない塾は顧客離れが止まらず、当然、良い評判を作ることもできません。
このセカンド・インパクトが外部受講生に特に必要な理由があります。それは、春期入塾生との心理的違いです。
春期生は「中学生になったから」「友達が通い始めたから」といった比較的軽度の理由で通塾を始める子供も多くいます。しかし、夏期講習生は(それまで他塾に通っていたかどうかは別にして)1学期の成績に不満と不安を抱えているものです。つまり、大きな危機感を持って受講を決断しているのです。この「大きな危機感」はイコール、塾に対する期待値が高いことを意味します。
以前もお話したように、客は自らの期待値を満たしたとき、「満足」と表現します。しかし、ビジネス(売買)は売り手と買い手の合意形成による等値交換ですから、客は満足のレベルを「当たり前」と思っています。その期待値を越えた部分=「感動」を与えなければ、客は次の行動に移すことはありません。つまり、講習生(及び保護者)はもともと高い期待値を持って「あなたの塾の夏期講習」を受講しているわけですから、そうとうのインパクトを与えないと「感動」の領域まで達することは難しいのです。「授業内容」にせよ「面倒見の良さ」にせよ…想像以上だったという感想を持ってもらうことが重要なのですが、内部受講生以上に高い期待値を持っている外部受講生を感動させることは並大抵ではありません。しかし、だからこそ、夏の講習の成否が塾の評判を作り、勝ち残る塾とそうでない塾を分ける分水嶺となるのです。
「例年通り」の講習に終始している塾が「勝ち組」になれない理由も明らかでしょう。また、そうした厳しい状況下だからこそ若いスタッフの成長につながるとも言えるのです。
本誌に目を通している時期は、夏期講習も後半を(地域によっては終盤を)迎える頃だと思います。ぜひ、残り期間で与えられるセカンド・インパクトを考えてください。
塾の大小に関わらず、現場はワン・ツー・ワンです。「感動」は個人的なものであり、アナログの存在です。人はデジタルに感心はするが感動はしない…この原則を忘れずに。
「事件は会議室で起こっているのではない。現場で起こっている。」 そう、感動も常に現場で創造されるものなのです。