この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
今年最後の紙上セミナーになりました。今年も紙面を通して、あるいはセミナー会場でお世話になりました。来年もよろしくお付き合いください。
先日、本誌を発行している全国私塾情報センター(株式会社私塾界)主催のプレミアムセミナーが東京の帝国ホテルで開催されました。全国の塾関係者150名以上が一同に会する年に一度のお祭り?です。本誌読者の中にも参加された方が大勢いらっしゃることでしょう。
以前、ある中小塾の経営者にセミナーの参加をおススメしたところ、「そんな晴れがましい場に出るのは恐れ多い…」と尻込みをされてしまいました。気持ちは分からないでもないのですが…だから中小塾のままなのでしょう。
この仕事を始めた頃から言い続けていることですが、人のエネルギーは伝播します。正のエネルギーも負のエネルギーも。アメリカでは「成功する秘訣は成功した人と交流することだ」というのが常識です。帝国ホテルのパーティー会場はプラスのエネルギーで充満していました。こうした場に参加する機会を自ら放棄することは「成功」を放棄することと同じです。実に残念なことです。
ところが、ある程度の規模以上の塾にも同じ負のエネルギーを感じることがあります。経営者は充分にプラスの方向へ進もうとしているのですが、スタッフがマイナスの方向へと目を向けているのです。先日も次のような例に出会いました。
ある塾へスタッフ研修(参加者70名程度)に呼ばれたのですが、研修後、経営者を除く幹部職員と食事をしました。そこで聞かれた発言です。
「森先生の言うように改革をしなければならないとは思うのですが、当塾は細かいことまで決裁権を塾長が握っていて、パンフレットの内容一つでも指示を受けなければならないのです。」
「すぐに塾長がダメ出しをするので、若い職員が萎縮しています。」
「権限さえ与えてくれれば、やれることはあるのですが…。」
つまり、何を提案しても、最後は経営者の意向で決まってしまうので誰も意見を言わなくなっていると言うのです。
その時の私の意見です。
「塾長すら説得できないような企画やパンフレットが、市場の見込み客を説得できるはずがない。」
もともと、塾の経営者は程度の差はあれ「独裁型」です。(これをお読みの「あなた」もそうでしょう。)協調性に富んだ人物が塾で起業しようとは思いません。実際に、ある程度の規模(塾生数2~3,000名)になるまでは独裁型の経営手法が有効だと言われています。しかし、大切なことは「自分が独裁型だ」ということを自覚することです。そうでないと、いつの間にか自分(経営者)と社員の間に乖離(かいり)が生じ、全く正反対のベクトルを指していることに気付かない危険性があります。
塾に限らず、経営者ひとりで出来ることには限界があります。経営の神様と言われた松下幸之助氏は、病弱だったが故に早くから権限委譲をすすめ、部下が最も力を発揮できる組織作りに取り組みました。
「どうせ無駄だから」と経営者を説得することを諦めている部下も情けないとは思いますが、そんな部下にしてしまった経営者が最も責任を負わなければなりません。
企業における権限とは「人事」と「予算」です。この二つを如何にして委譲できるかが、優秀な部下を育てるための鍵であり、組織を活性化させる鍵です。中には次のようなことを言う経営者がいます。
「いや、よい企画にはどれだけでも予算を出すから、何でもアイディアを出してくれと常々言っているのですよ。ところが、うちのスタッフは消極的なのか何も考えていないのか…ほとんど企画らしい企画を提出してきません。」
こんな中途半端なことでは権限委譲とは言えません。もちろん、大枠については経営者の采配ですが、細かい内容については部署の責任者に任せる勇気が必要です。前述の塾のように、パンフレットの中身やホームページの記載事項まで塾長が決済しているようでは「自由な発想」を求める方が無理でしょう。
もちろん、失敗はあると思います。しかし、何事も成功は10に1つです。早く9つの失敗をすることが1つの成功に出会う近道です。ところが、上司の顔色を伺っている部下は失敗が怖いため、前例主義に陥り、無難な行動しかできません。これではいつまで経っても1つの成功に出会うことは難しい。結局、誰も成功体験を持てない「よどんだ組織」ができてしまいます。
ぜひ、失敗を楽しむ風土、文化を作ってください。そうでなければ企業の発展はありません。発展とは変化と同意語です。多くの人が変化を恐れます。失敗のリスクを恐れます。しかし、これからの時代は「変化するリスク」よりも「変化しないリスク」の方が大きくなってきます。
来年の塾業界は、今年以上に激しく変動することは必至です。いえ、社会が大きく変動しているのですから、塾業界も動かざるを得ないのです。この動きに対応できた塾が伸びていくことでしょう。
「あなたの塾」にとって2008年が輝かしい年になることを心からお祈り申し上げます。
コメント