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  • 執筆者の写真森智勝

新時代のマーケティング論(35) リーダーシップを取り戻そう! 2008年2月私塾界掲載分

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

いよいよ受験本番。春期募集も本番。塾の現場では息の抜けない毎日が続きます。人は忙しくなると思考がストップしてしまう人と、忙しいときほど神経が研ぎ澄まされて思考能率が向上する人に分かれます。塾人としては後者でありたいものですね。

さて、そろそろ新入社員を迎える時期になります。人事担当者は研修の準備で忙しいことでしょう。もちろん、具体的スキルについての訓練は重要ですが、それに加えて、塾人としてのスタートにあたり、現場でのリーダーシップの重要性を教えてあげてほしいと願っています。

公教育の現場で起こる様々な問題には、教師のリーダーシップの欠如が原因と思われるものが少なくありません。リーダーシップとは一定の組織のモチベーションを上方へと引っ張り上げる力のことです。そのために、リーダーは常に組織の上部に位置する必要があります。かつての教師は聖職者としての権威を持ち、学校内、教室内でのリーダーとしての役割を果たしてきました。ところが近年、日本が豊かにナルにつれ、子供の人権を大切にするという風潮が社会的に拡がってくると、教師自らが生徒と同じ位置に降りてきてしまいました。


「子供の目線で考える」「子供の気持ちになって対応する」等々の美辞麗句の下に。(もともと、人権とはキリスト教文化圏で生まれ、全ての人類が神から与えられた共通の権利のことであり、老若男女が等しく所有するものです。子供の…と、特定の階層に与えられるものは、人権ではなく「特権」と呼ぶべきものです。)

昔の(ほぼ1950年代生まれまでの)子供は、社会との関わりを「労働」から始めました。


母親のお手伝いをすることで社会的生活を開始します。そして、母親から感謝され、父親から褒められることで自らの存在意義を確認してきました。ところが、社会的に豊かになった中で育った子供たちは、消費から社会との関わりを始めることになります。彼等は、さしたる労働もせずに「お小遣い」という名の定期的収入を当然の権利として得ています。言ってみれば、昔の子どもがボランティアから学んだのに対し、今の子供たちは消費というビジネスから学ぶことになったのです。消費から学ぶ子供たちは、自然と費用対効果を知ります。120円払って購入したジュースが不味(まず)いと思えば、二度と買うことはありません。取引を停止させます。

学校現場では、「1時間の授業を硬い椅子に座って聞く」という苦痛を子供たちは支払っています。それに対する見返りが足りなければ、つまり、支払っている苦痛の費用対効果が低いと判断すれば、彼等は取引を停止させます。それが学級崩壊です。

かつての子供たちはボランティアから学びましたので、苦痛を支払うことに疑問を持ちませんでした。また、前に立っているのは権威ある教師です。子供に苦痛を払わせながらも、その意義を理解させ、引っ張る力を持っていました。保護者も、「教育」という教師の崇高な行為に敬意を払い、権威を尊重していたのです。ところが、現在では教師がリーダーであることを放棄し、前述のように子供たちのレベルまで降りてきてしまいました。権威(リーダーシップ)を失った教師は、保護者から見れば「子供の教育係」程度のものです。モンスターペアレントの発生は必然です。私は、「教師も一人の人間です」という極当たり前のセリフを教師自らが平然と口にするようになってから公教育の秩序が崩壊し始めたと考えています。

塾は文字通り対価を頂戴しているビジネスです。それに見合った、いえ、上回る効果を提供しないと見捨てられます。と、同時に「教育」である以上、リーダーシップを発揮することは絶対条件です。

経営者の皆さんには「釈迦に説法」ですが、リーダーの地位を維持することは大きな苦痛を伴います。孤独、悩み、困難が次から次へと襲ってきます。しかし、その苦痛という対価を払うことでしか得られないものがあるのです。抽象的な言葉で言えば「人としての成長」でしょうか。社会人になったばかりの若者たちに、そうした「理屈」を教えてあげて下さい。 近年、日本人の好きな歴史上の人物のトップは織田信長です。社会も強いリーダーを求めているのです。これから塾の現場に立つ若い教師がリーダーとしての自覚と、苦痛を払い続ける覚悟を持つことが子供たちの成長に必要であり、塾としての繁栄に繋がると確信しています。

最近の若者は労働条件や職場環境に敏感です。新卒者の3年以内退職率は30パーセントを越えていると言われていますが、塾業界ではもっと高い割合ではないかと想像されます。本誌の読者のほとんどが塾経営者と思われるので、言うのも憚(はばか)れるのですが…原因の一つは経営者のリーダーシップの欠如があるのではないでしょうか。経営者が「私も一人の人間だ」と言い始めると、社内統制、秩序が崩壊します。経営者は常に「スーパーマン」であることを求められます。若い社員から憧れられる人物を演じなければなりません。

経営者は経営者としての、現場教師は教師としての、全ての立場の人がそれぞれのリーダーシップを発揮する塾は、必ず強い組織になり、市場から支持されるのだと確信します。

経営者が辛い立場にあることは重々承知の上でお話しています。ハードボイルドでいきましょう。ハードボイルドは意訳すると「やせ我慢」です。あなたのリーダーシップが現場教師のリーダーシップを生み、子供たちを「幸せな選択者」に導くことでしょう。

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