この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
人が成長するためには何が必要でしょうか。
4月から新入社員を迎える塾は今、人事担当者を中心に研修の内容に頭を痛めていることと思います。多くの塾が現場の事情によって戦力化できぬまま「現場投入」しているのが実情です。最初のうちは情熱というエネルギーで突っ走ることもできますが、日々のルーティーンワークの忙しさが徐々にエネルギーを奪い、疲れ果て、早期退職につながる例が後を絶ちません。結果、ベテラン講師と新人講師だけで構成されている塾が出来上がります。そうした入社3年目以内の退職が多い塾は、必要に迫られて戦力化できていない新人を現場投入せざるを得ない…悪循環に陥ります。
「成長」という目に見えない要素を伸ばすには、やはり目に見えない要素によるしかありません。もちろん、待遇や職場環境という目に見える部分の改善は重要ですが、それだけで社員のモチベーションを維持し、成長を促すことは難しい。成果主義の導入によって失敗した企業が続出していることがそれを証明しています。
人が成長するためには何が必要でしょうか。
それは、感動です。アビトレの木下氏によると、感動の語源は「感即動」であり、感じてすぐに行動することだそうです。人は理屈で行動するのではなく、感情によって行動するのです。例えば、消費行動ひとつをとっても、理屈で購買することはありません。全ての購買は「衝動買い」と言ってもいいでしょう。購買理由を尋ねると様々な理由を述べますが、ほとんどの場合「後付」です。何かに感動したから購入という行動に移すのです。
ある大手塾の新人教師に尋ねたことがあります。「数ある塾の中から、なぜ今の塾を選んだの?」すると、多くの若手が異口同音に「会社説明会のときの○○先生の話に感動したから」と言うではありませんか。企業選びも「感動」がキーワードになっています。
つまり、新人教育の肝は単に理屈や技術を教えるだけではなく、いかに早い時点で感動を提供できるかという点にあります。
以前もお話しましたが、感動とは期待値を上回る部分を指す言葉です。人は自分の期待値を上回る事象に出会ったとき感動します。
先日、社団法人日本青少年育成協会の総会出席のため京都に行ってきました。当日は吹雪という悪天候。新幹線も関ヶ原での徐行運転のため遅れてしまい、名古屋からの出発でも時間ぎりぎりの到着でした。中には欠席を余儀なくされた方もいらっしゃいました。
その中で、北海道から当日来る予定だったI氏が、な、何と10時間遅れの夜11時頃に到着。札幌からの飛行機が飛ばなかったそうです。ホテルのクラブで飲んでいた我々のところに駆けつけたのですが、普通だったら来ませんよね。キャンセルです。でも、氏はやってきた。凄い!こうした行動が人の信頼を勝ち取る秘訣でしょう。また、ひとつ勉強させられました。「自分もかく在りたい」と思いました。このI氏の行動が感動を与えるのは、我々の期待値を大きく上回る行動をとったことが原因です。
新人社員は、4月からの社会人生活に大きな期待を持っています。あなたの塾に大きな期待をしています。そして、研修にも何がしかの期待を持って臨みます。その期待を上回るものを提供できるか、提供し続けることができるかが問われています。
私は「成長」と「変化」は同意語だと考えています。そして、人は人を変えられないと考えています。しかし、同時に「自分で変わろうと思えば、人は一瞬で変われる」とも思っています。つまり、社員の成長を促すには、いかに変化のきっかけ、感動の場面を提供できるかにかかっているのです。
もともと塾という職場は感動で溢れています。しかし、年月とともに、それを感じるアンテナが錆び付き、能力を失ってしまうことがあるのも事実です。夢と希望を持って入社した新人たちは間違いなくピカピカのアンテナを立てています。そのアンテナにドカンドカンと、感動の雷を落としてあげて下さい。
以前、ファースト・インプレッションとセカンド・インパクトの話をしました。入塾の決断に必要なのがファースト・インプレッションで、口コミ・評判を作るのに必要なのがセカンド・インパクトです。実は、就職という場面でも同じです。誰もが入社を決断したときから一種のバイヤース・リモース(購入後の後悔)が始まります。そこで、研修という場でセカンド・インパクトを与えることで「自分の選択は間違いなかった」と確信してもらうことです。すると、ロイヤリティは高いレベルで長期間保たれます。
新人研修が通り一遍の何の感動もない「説明」に終始していると、受講者のモチベーションはみるみる下がっていきます。まず、新入社員を「会社」のファンにすることです。たとえ時間的には充分確保できなくても、工夫一つで「感動を与える新人研修」は可能です。その秘訣は…
そう、経営者である「あなた」が前述のⅠ氏のように「人に感動を与えられる人物」になることです。人はデジタルに感心はしても感動はしません。感動の源はいつでもアナログです。究極のアナログ的存在である「人」との関わりが感動を生み出します。つまり…経営者たる「あなた」が率先して成長する人、感動を作り出す人でなければならないのです。
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