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執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座32 地域ネットワークの作り方

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


「客」の期待値をほんの少し上回る

先月号で「人は満足では行動に移さないが、それを越える感動体験をすると、今度は人に伝えたくて仕方がなくなるというメカニズムを持っている」ことを伝えました。そして、その感動を作り出す源は「技術」と「本気」であることも。 では、具体的にどうすればよいかをお話します。一言で言うと「客」の期待値をほんの少し上回るサービスを提供することです。 一昨年、女房殿と谷村新司のコンサートに行ったときのことです。アンコールも終わり、会場が明るくなった後も観客の手拍子が鳴り止みません。1階に陣取ったいわゆる「追っかけ」のファンはコンサートの構成を熟知して、谷村がもう現れないことを知っているので足早に出口に向かい始めていました。淡い期待を抱いて拍手しているのは2階席、3階席のファンだけです。ところが数分後、ステージに谷村が現れたのです。ほんの数十秒、観客に対して手を振るためだけに…。大喜びの2階席と「何事が起こったのか」と右往左往する1階席。 アーティストにとって全てのプログラムが終わった後にステージに出るのは苦痛だったろうと想像します。しかし、そこでの30秒を惜しまない谷村のプロ根性に正直、感動しました。きっと、あの場にいた「一般のファン」の中には「追っかけファン」に転身した人が数多くいたに違いありません。エンターテイメントの世界も、我々塾業界の世界も同じです。いかに良い意味で客の期待を裏切ることができるか。そこに新たな感動の種は潜んでいます。鍵は「わずか30秒」の追加サービスです。 「満足」と「感動」の違いは「ほんの少し客の期待値を上回ること」で生じます。塾が「これくらいのサービスで充分だろう」と妥協した瞬間、そのチャンスは消滅します。 感動が「客の期待値を上回ること」で生じるならば、事前にやっておかなければならないことがあります。「客の期待値を下げておくこと」です。これは評判を落とすこととは違いますので念のため。 中小・個人塾は一人でも多くの塾生を獲得したいがために、何でも安請け合いする傾向にあります。 「学校補習ですか、お任せ下さい。」 「中学受験も大丈夫です。」 「家庭学習用のプリントですか、お出ししましょう。」 「分かりました。特別に社会の指導も日曜日に私が行ないましょう。」 これでは「客」の期待値は高くなる一方で、完璧にこなして「満足」、少しでも不備があると「不満」という結果に終わってしまいます。これはセグメントの問題にも関連するのですが、少なくとも「できること」と「できないこと」をハッキリさせて、過度な期待を持たれない工夫が必要です。 ある塾では入塾面談で必ず次のようなことを伝えています。 「塾は頭を良くする薬を売っているわけではありません。足が速くなりたければ自分が苦しい思いをして走るしかないように、自分の能力は自分にしか伸ばせないのです。学力も君が苦しい思いをして勉強することでしか伸ばせません。塾はそんな君に最高の学習環境とコーチを提供します。塾を利用してしっかり学力を伸ばしてください。」 こうして「塾に学力を伸ばしてもらおう」という期待値を下げ、その理念に共鳴してくれた家庭だけを対象としています。

ネットワークは形と共に広がる

次に考えてほしいのは、口コミは「形」を伴って広がっていくことです。「理念」「思い」「意欲」「熱意」等、形のないものは自然発生的に浸透していくことはありません。それを何らかの「形」にして表現することが必要になっていきます。健康食品の通販会社はヘビーユーザーに対して「携帯用サンプル品」を配ります。すると、例えば喫茶店での集会のとき、一人が水に粉末を混ぜて飲み始めます。周りの人が尋ねると「これを飲むと血糖値が下がって調子がいいの。サンプル品があるからあなたも試してみる?」と勧めてくれます。口コミが発生する瞬間です。何もないところからは決して口コミは発生しないことを理解してください。ある塾はテスト前になると「テスト必出重要語句集のプリント」をラミネート加工した下敷きにして塾生に配っています。塾生はそれを学校に持って行ってくれるので友達同士の間で評判になります。こうした「ちょっとした工夫」によって客の期待値をほんの少し上回るサービスを「形」にしていくのです。 多くの中小塾を訪問して驚くことは「入塾書類(案内)」があまりにもお粗末なことです。「塾の入塾案内を見せてください」というと、それから慌てて探し始め、中には「チラシ」を出してくる塾さえあります。これではどれほど素晴らしい授業をしていても、それが見込み客に伝わることはありません。「商品の良さは買った後にしか分からない」というのはビジネスの常識です。せっかく「素晴らしい授業(商品)」を用意していても、受けてもらう(買ってもらう)までの工夫がなければ意味がありません。塾の内容が分かるものを準備して、問い合わせてきた客にお渡しできるようにします。この時、出来る限り多くの資料を用意して「ずっしり感」を演出するとよいでしょう。この「ずっしり感」が塾の思いを伝えてくれます。紙一枚の入塾案内ではなく、「指導システム」「講師紹介」「ニュースレター」「小冊子」「入試資料」等々も用意することです。大手塾では加えて「案内DVD」を作成しているところもあります。 同様に、塾内で配布される「案内」にも工夫が必要です。あなたの塾の「春期講習案内」の量はどれほどだったでしょうか。A4の紙1枚で済ませていないでしょうか。これでは塾の「熱意」は届きません。せめて数枚に渡って「内容」「講習の意義」「この講習で目指すもの」「この講習を受けるとどうなるか」「この講習を受けないとどうなるか」等々をしっかり伝えることです。また、延長授業をすることがあるのなら「授業延長許可書」を、テスト前にテレビを見ないように指導しているのなら「テレビを見ない宣言書」を作って保護者、本人の署名をもらうことです。そうした「形」にすることで初めて「あなたの思い」は相手に届きます。 「形」という意味ではホームページの活用を考えてください。塾業界、特に中小・個人塾はITの活用に消極的です。未だにネット環境すら無い塾もあります。ところが、アマゾン・ドット・コムの利用者の中心は30代~40代だと言われています。いわゆる保護者世代です。チラシを見た保護者が次に取る行動は、ネットでホームページを探すことです。その時、ホームページが無いというだけで選択肢から外される危険性があります。ホームページは今や情宣活動に欠かせないツールとなっています。まだホームページをお持ちでない塾は、ぜひ検討して下さい。 地域ネットワークを作る場合、漠然と考えても具体的アイディアは浮かびません。私は3つのステージに分けて考えることをお勧めしています。それは次の3つです。 ① 現役生・家庭のネットワーク ② 卒塾生のネットワーク ③ 保護者・地域のネットワーク 紙面の都合上、②③は次回に譲るとして、①について1つだけ実例を挙げます。ネットワークとはコミュニケーションの流通過程でもあります。そして、ご家庭からの意志伝達は多くの場合「苦情」という形で寄せられます。ですから、できるだけ「苦情を伝えやすい塾」を目指すのです。具体的には「入塾セット」の中に塾長宛の封筒(切手付)と便箋を用意しておくことです。「何かありましたらこれを利用してお申し出下さい。これは私(塾長)が直接開封し、他の講師の目に触れることはありません。」という案内を添えて。誰もが担当講師に直接クレームは付けにくいものです。また、塾長に電話するのも気が引ける…。そこで「苦情レターセット」です。これを用意すると2つのことが起こります。 1つは「苦情の減少」です。人は「ここは苦情を積極的に聞いてくれる塾だ」と思うだけで不満が減少します。もう1つは「苦情レターセット」を利用した「サンキューレター」が届くようになります。実行した塾すべてに共通した現象です。もちろん、本当の苦情に対しては先月号でお伝えした「ありがとうございます」が言える対応が必要なことは言うまでもありません。

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