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  • 執筆者の写真森智勝

中小塾のためのマーケティング講座38 「資本の論理」と「感情の論理」

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


教育者が犯す失敗の危険性

先日、ある塾長から次のような相談が寄せられました。 「入塾したばかりの中1の男の子が授業中、他の子を誹謗(ひぼう)する不規則発言をする。私の授業のときは大人しくしているのだが、他の講師のときに顕著らしい。私が保護者を呼んで伝えるからと言うと、他のスタッフから、事を荒立てる前に塾長から本人に注意してほしいとの声がある。どちらが良いだろうか。」 あなたはどう思いますか? 教育的見地を離れてビジネスの面から言うと、どちらもダメです。正解は「授業中、その場で(他の生徒の前で)注意する」です。そして、それでも直らない場合は退塾させることも覚悟しなければなりません。 こうした問題が発生したとき、事を丸く?収めようとして裏で処理をすると他の生徒が去っていきます。なぜか。こうした時、塾がどう対処するかと他の生徒は見ているからです。明らかに非のある子供に対する塾の姿勢を「はっきりと」見せないと、真面目な生徒が失望して去って行きます。そして、そんな塾の姿勢を非難する評判が地域に蔓延します。いよいよ真面目な子供たちは敬遠するようになります。当然、塾は衰退します。

縮小均衡市場の特性

縮小均衡市場とは、言い換えれば買い手市場です。消費者の前には「良い商品」が山のように積まれています。かつてのように売り手市場の場合は、良い商品を提供できれば売れていきます。そこでは「資本の論理」が計算通りに成立します。塾で言うと、資本を投下して教室を作り、優秀な講師と優れた学習環境を用意し、きれいなチラシとコマーシャルで「塾生募集」をすれば「客」は集まってきました。消費者(子供たち・保護者)にとって選択の幅が狭かったからです。しかし、現在の消費者の回りには「良い塾」がいっぱい存在しています。彼らにとって、居心地の悪い塾に我慢して通う理由はありません。いつでも他の商品(塾)に変更することができるのです。現在の塾業界はそうした市場を形成しています。 つまり、資本の論理だけでは足りないのです。消費者の視点、消費者の感情に配慮した対策が必要です。 かつては「消費者の視点」に立った場合、「より良いものをより安く」という方向でほぼ間違いはありませんでした。選択肢が少なかったわけですから、「より安く」が購買意欲に直結したのです。現在でも家電量販店やスーパーなどは「1円でも安く」という激烈な価格競争をしています。しかし、価格競争で勝ち残るのは1社だけです。また、消費者のニーズも多様化しています。そこで、高品質高価格のスーパーが登場し、一定の固定客をつかんでいます。例えば外国産の野菜よりも安心できる国内産の無農薬野菜を求める層が増えています。そうした野菜はかなり高額ですが、最近の健康ブームに乗って大きな需要を作っています。消費者の「食の安全に対する感情」にフォーカスすることで新たな需要を喚起したのです。 また、拡大発展市場では商品の良さを理解してもらうことがセールスの基本でした。「商品の良さ」さえ理解してもらえれば確実に売れたからです。これも、現在のように「モノ余り」の時代では通用しなくなりました。世の中に「良い商品」があふれている状態では「モノが良い」だけでは購買理由にならないからです。 では、現在の「消費者の視点」の基本は何でしょう。 人は誰もが消費行動をしなければ生きていけないことを知っています。そして、「同じお金を遣うのならば、好きな人のところ(店)で気持ちよく遣いたい」と考えているのです。 最初の問題に戻ると、この塾がどんなに素晴らしい教室で、どんなに指導技術の高い講師が指導していても、尊敬できない人、居心地の悪い塾に留まる理由がないのです。「良い塾」は他にもたくさん存在するのですから。 中小塾の経営者は自らを「教育者」として考えていますので、冒頭のような問題が起こった場合、当事者(問題を起こす生徒)に対する教育的配慮を一番に考えます。「私の力でこの子を更生させたい」と思います。結果、時間やエネルギーの多くをその生徒に費やすことになります。それはそれで尊いのですが、少なくともビジネスとして塾経営をしている場合、他の客(生徒・保護者)の感情に配慮した対策を採ることが必要です。 同じような問題が普段の学習指導の中にも存在しています。理解の早い生徒、真面目な生徒は手が掛からないので、どうしても「できない生徒」「おおちゃくな?生徒」に時間を取られていないでしょうか。延長授業・居残り授業をしている子供は「できない生徒」ばかりとなっていないでしょうか。「できない子をできるようにするのが塾の役目だから、そんなことは当たり前じゃないか」という声が聞こえてきそうですが、冷静に考えてください。同じ授業料をいただいているのに、ある一定の子供(この場合「できない子供」)にだけ多くの教材、多くの時間、多くのエネルギーを消費することは、他の子供に対する「逆差別」になっているのです。彼らは大人しいので表立って苦情は言わないかもしれませんが、心の中で「ここは私のための塾ではない」と思っています。そして、何かをきっかけとして退塾していく…。あなたが「良かれ」と思って身を削ってやっていることが知らず知らずの内に逆効果を生んでいることがあるのです。 これまでも「消費者の立場に立った」マーケティングの重要性は言われてきました。しかし、それは消費者にとって「より安く」「より便利」ということを指していました。これからは一歩進めて「消費者の感情にフォーカスしたマーケティング」が必要です。理由は前述したように「より安く」「より便利」なモノは身近にあふれているからです。

塾生・保護者の感情に立った実践を

これまでの中小塾は「指導力こそ全て」と考えているせいか、倉庫?と見間違うような教室で教えているところがあります。教材が送られてきたダンボールが教室の隅に置いたまま。机や壁の落書きが放置されたまま。数日分の消しゴムのカスが掃除されないまま…。そんな中で勉強している子供たち、それを見た保護者は「どんな感情」を抱くかということです。よく「ちょっと汚いくらいのラーメン屋の方が美味い」などと言う人がいますが、私はそうは思いません。「行列のできるラーメン屋」ほど店舗の美化には気を遣っているものです。少なくとも私は、埃(ほこり)っぽい店内でラーメンを食べたいとは思いません。同様に、汚い教室で授業を受けさせたいと願う保護者は皆無のはずです。 塾からの発行物もそうです。発行物は読者の存在を無視しては成立しません。ところが、読者にとって分かりにくい、不親切な「案内」を平気で出している塾があります。例えば、チラシひとつを見ても、問い合わせ方法や申込み方法を明記していないことがあります。消費者の目(感情)には「電話番号が書いてあるのだから、希望者は勝手に電話してくるだろう」という書き手の横着さ(傲慢さ)が映っているのです。あなたにとっては自明のこと(分かったつもり)でも、読者(客)には伝わっていないことが多いのです。それは「客の感情」を無視していることが原因です。 「資本の論理」に「感情の論理」を付加すること。それがこれからのビジネスには不可欠です。もう一度、消費者の視点ではなく、消費者の感情に立って自塾を見直してください。これまで見えていなかったものがきっと見えてくるはずです。

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