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  • 執筆者の写真森智勝

新時代のマーケティング論(19) 淘汰の時代ほど「顧客離れ」に対応せよ! 2006年10月私塾界掲載分

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

いよいよ秋の縦断セミナー「4大都市学習塾経営セミナー」が始まります。本誌が手元に届くのは東京での開催(10月9日)が終了した頃でしょうか。

今回、私の講演のテーマは「退塾防止」です。縮小均衡時代に入った塾業界では当然のように大手の合従連合が起こります。これは塾業界に限ったことではなく、金融機関も都市銀行が3つのメガバンクに集約されたことは記憶に新しいと思います。流通も小売も建設も、やがては同じ道を辿ることでしょう。自動車業界も世界規模での提携を模索しているようです。

つまり、縮小均衡に入った業種はドラスティックな展開が起こることを常としているのです。市場の拡大が見込めない以上、シェアの奪い合いに発展するのは必然です。

そうした時、ややもすると大きな動きに目を奪われるあまり足元に注意が及ばなくなりま

す。シェアの奪い合いの中では、これが致命傷になることもあります。塾にとって、どこまでいっても現場での「マンツーマン・マーケティング」は重要です。特に、経営者サイドが現場を忘れると、最前線で働いているスタッフとの意識との乖離が始まります。「社長は数字しか見ていないから平気かもしれないが、退塾者が出ると私は心が痛むのだ」という思いを持ってしまうのです。そうした乖離を防ぐためにも、以前お話した「ミッションの共有」というマネージメントは重要です。

具体的に言うと「この業務を通して会社の理念を実現する」という思いを「目的」と「目標」を明確に区別して全社員が共有することです。そして、そのための具体的手法を持つことです。

マネージメントは私の専門ではないので、予習(あるいは復習)として「顧客離れ」についてお話します。

以前もお話したように、顧客離れには3つの理由があります。

①卒業する ②飽きる ③忘れる

①の「卒業する」はニーズで成り立っている業種にとっては避けられません。医者、弁護士、エステ、学校…そして学習塾にとっては文字通り「卒業」が顧客離れの第一原因であり、宿命です。(しかし、この「卒業」した顧客が次の見込み客を連れてくる「評判」を作ってくれます。)

問題は②の「飽きる」と③の「忘れる」です。

もともと、学習塾の顧客は全て「常連客」と言っても良いでしょう。「常連客」は「大いなるマンネリ客」とも定義することができます。この常連客を「常連だから私の味方だ」と油断していると「浮気」をされます。

例えば地場で長く営んでいる居酒屋の常連客も、駅前に新店がオープンすれば行ってみたくなるのが人情です。テレビのドキュメント番組で見たのですが、ある大手居酒屋チェーン店がオープンした日、長年営業していた地場の居酒屋は閑古鳥が鳴いていました。そこの店長は「うちは常連客で成り立っている店なので、今の客を大切にしていれば問題ない」と言っていたにもかかわらずです。

人は新しいものに惹かれる性質を持っています。そして、実際に行ってみると、大手居酒屋チェーン店はけっこう「安く」「美味しく」「楽しい」ものだったりします。

そして、ここからが問題です。常連客は自らが常連客だったことを自覚しているが故に、ある感情を持ちます…「あの店長に悪いな」…これです。次にいつもの店に顔を出すと、「おい、この間、大手居酒屋に行っただろう」と皮肉の一つも言われたら嫌だなと思います。で、ますます足が遠くなる…こうして顧客離れが起こります。

塾で言うと次のようなことです。ある日、塾生が言ってきます。

「先生、ごめんね。友達に誘われて、夏期講習だけ新しく開校した○○塾に行くね。お母さんに相談したら、『せっかく夏期講習を無料でやってくれるのだからいってもいい』と言っていたから。」

塾の先生も内心の動揺を隠して言います。

「そうか、分かった。しっかり勉強して来いよ。9月になったら、どんな授業をしていたか教えてくれよな。」

「分かった。スパイしてくるね。」…9月になっても帰ってくることはありません。

②の「忘れる」は本当に記憶から削除されるわけではありません。生活のリズムが「忘れる」のです。例を挙げると次のようなことです。

母親から連絡があります。

「先生、すみません。12月に娘のピアノコンテストがあるので、それに専念させるため2ヶ月ほど休塾させたいのですが。」

「分かりました。せっかく長く続けてきたピアノです。全力で取り組ませてあげてください。1月に戻ってきたら遅れた分は塾で何とかしますから。」

ところが1月になっても塾には戻ってきません。2ヶ月も塾を休むと生活のリズムが塾に行くことを忘れてしまっているのです。人は生活の変化を3週間で「日常化」する性質を持っています。家庭では次のような会話が交わされています。

「お母さん。毎日ピアノ、ピアノでちょっと疲れちゃった。塾に通うの2月からでいい?」 「しょうがないわね~。」…もう、元の塾に戻ることはありません。1月に戻るという約束を破って「悪いな」という感情が芽生えているからです。

常連客だからこそ顧客離れを起こすという例です。以前お話した「感情の論理」とは、こうした顧客の感情にフォーカスした戦略・戦術を構築しようということです。必要なことは教室、家庭の現場で何が起こっているか、どんな会話が交わされているかを見通す「想像力」です。

あなたの塾が顧客離れを起こしませんように。こうした常連客の顧客離れは「雪崩現象」を引き起こす危険性を孕(はら)んでいますよ。

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