中小塾のためのマーケティング講座110 塾が「中だるみ」を奨励してはいけない
- 森智勝
- 2024年10月20日
- 読了時間: 5分
この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。
-テスト後のブラッシュアップが評判を作る-
「テストは終った後が大事」を実践する
現在、全国の中学校は2期制と3学期制が混在して、塾としてはやりにくくて仕方がありません。複数の地域から生徒が通っている塾は、「テスト期間が1ヶ月続く」ということもあります。同一地区でも、複数の学校から生徒が通っている場合、テスト期間がずれることは珍しくありません。すると、現場では大きな問題が生じます。それも、現場の教師が気付かぬうちに…。
テストが終了した中学校の生徒に対して対応が疎かになってしまうのです。
「次は○○中学のテスト対策だから、□□中学の生徒は適当に勉強していなさい…」
言葉には出さなくても、態度に出てしまいます。これがマズイ!勉強したくない生徒は「コレ幸い」とばかりに手を抜くでしょう。しかし、意識の高い生徒は「自分が軽んじられている」と思うかもしれません。特に、該当中学の生徒数が少ない場合、その傾向は強くなります。どうしても、人数の多い中学校のペースに合わせた授業運営になりがちなのです。ある意味、仕方がないことかもしれませんが、「あの塾は○○中学の生徒にだけ力が入っている」と思われるのは絶対に避けるべきです。○○中学の生徒にも、少人数の□□中学の生徒にも充分な対応しなければならないのです。
どちらにしても、テスト終了後の対策を疎かにしていると塾の評判を作ることは難しいものです。テスト前は充分な対策を実施していても、テスト後のブラッシュアップにまで気を配っている塾が少ないように思います。
例えば、テストの反省(感想)を書かせると、多くの生徒(特に1年生)は「計算ミスが多かった」「スペルを間違えた」「漢字を覚えていなかった」…いわゆる基本ができていないことを自己分析します。
ならば、個別の課題は特別講習で克服するとして、全員に共通する課題、例えば「計算ミスをした」についてだけでも対応策を採るのです。こんな感じで…
「○○中学の皆さん、テストお疲れ様。結果を見ると、ほとんどの生徒が計算ミスをしたと自己分析しています。塾での対応が不十分でごめんなさい。計算ミスは野球で言えばエラーです。プロの選手でもエラーをします。完璧に撲滅するのは不可能です。しかし、その確率を減らすことはできます。そのためには基本練習を繰り返すしかありません。プロの選手でも毎日キャッチボールをして、毎日ノックを受けています。そこで、『計算ミス撲滅プリント』を作成しました。毎日1枚、10問だけ計算問題に取り組んでください。『計算方法は分かっているよ』という人も、キャッチボールだと思ってください。塾では週に1回、チェックテストを実施します。まずは今日から1ヶ月、チャレンジしましょう」
もちろん、これが単語暗記でもかまいません。要は、塾として「テストを受けっぱなしで済ませていませんよ」というメッセージを送ることです。テストが終った中学校からこうした対策を打ち出していけば、「私の中学校は軽んじられている」と思われることを避けることもできるでしょう。
活発になる部活に塾として対応する
ほぼ同類の事例ですが、「テストが終ったから、当分は部活に力を入れてもいいよ」という主張をしている塾があります。特に、この時期は新チームが結成され、新人戦に向けた活動が本格化します。1・2年生にとって力が入るのも無理はありません。 あなたが親なら構いません。部活に熱心な息子(娘)に悔いのないチャレンジをしてほしいと思うのは親心です。しかし… 塾人(指導者)としてはダメです。その「生徒の思い」を重々理解しながらも、「それでも勉強も頑張れ!」と言うべきなのです。なぜなら、それが「あなたの役目」だからです。周りの大人が全て「いいよ、いいよ、今は部活に専念して…」と言っていたら、生徒は間違いなく「その気」になります。部活に熱心で、ましてや新キャプテンに任命された生徒は「自分のことは多少犠牲にしてもチームのために…」と考えます。 それが本当に本人のためか、冷静に考える必要があります。少なくとも、部活に集中することが勉強を疎かにしていい理由になるとは思えません。 あなたがやるべきこと、言うべきことは次のように対応することです。
「よし、君たちが新人戦まで部活に集中できるように、今、君たちに必要な学習内容と教材は全て塾が用意する。最低限、これだけはやろう!今の時期、部活と受験勉強で大変だと思うが、君たちなら絶対に乗り越えられる。そして、乗り越えた時には必ず大きく成長しているはずだ。私も応援しているから、大変だろうが頑張れ!」
私なら、そこに「AKBのメンバーに負けるな!」と付け加えます。あまり年の変わらない少女達が、早朝から深夜まで仕事をしていることを誰もが知っています。部活と勉強の両立、それくらいではへこたれない体力と精神力を養うために部活を続けてきたはずです。彼女達にできて、目の前の中学生にできないはずがありません。 そして…「分かった、俺、頑張る!」という生徒、「そうですよね。私も協力して頑張らせます」という保護者を作っていくことです。そうした共鳴・共感が塾の評判を作っていきます。 確かに「理解ある大人」は好かれるかもしれません。「いいよ、今は部活に専念して」と言う方が「いい人」と思われることでしょう。でも…それだけです。生徒の共鳴・共感は得られません。ましてや感動を創造することは不可能です。 先月号でAKBの力を借りて「本気」の重要性を伝えてきました。ワン・ツー・ワン・マーケティングも、エモーショナル・マーケティングも、根底に「本気」がなければ効果はありません。なぜなら、「あなたの本気」を広く、正しく伝えることがマーケティング本来の目的だからです。伝えるべき「本気」「情熱」がなければ、どんなマーケティング手法を採ろうが虚しいだけです。 秋は生徒たちの興味が多方に渡り、勉強に対する集中力が散漫になる時期です。だからこそ、指導者の存在が必要です。毎年のように「中だるみ」が指摘されるこの時期、あなたの「本気」「情熱」が試されています。
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