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  • 執筆者の写真森智勝

中小・個人塾のマーケティング論 [1]マーケティングと商品力

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。


このコラムでは塾、特に中小・個人塾のマーケティングについて話を進めます。俗にワンツーワン・マーケティング、あるいはエモーショナル・マーケティングと呼ばれている手法です。簡単に言えば、「現場マーケティング」です。1教場だけの個人塾も、100教場以上の大手塾も、現場に必要なことは変わりません。このコラムが、来たるべき貴塾の反転攻勢に少しでもお役に立てれば幸いです。

最初に「マーケティング」という言葉を定義付けしたいと思います。こうした外来語には様々な訳があり、様々な解釈があります。そのイメージが書き手と読み手の間でズレていると誤解が生じ、上手く意図が伝わりません。そこで、ここで言う「マーケティング」とは、「商品の良さを早く正しく伝える技術」と定義します。けっして、手八丁口八丁で相手(客)を篭絡(ろうらく)することではありません。あなたが「高い羽毛布団を売り付けて逃げるビジネス」をしているのでしたら口八丁も役に立つのかもしれませんが、塾は客待ちビジネスです。そんな手法は逆効果です。

例えばアイドル歌手Aが「Aちゃんのカレー屋さん」を開業したとします。開店日にAちゃんが店に来ると宣伝すれば、きっと多くのファンが押しかけ長蛇の列ができることでしょう。しかし、肝心のカレーが不味かったら…「あの店のカレーは不味い」という評判を早く広めることになるだけです。安易なマーケティングはブーメランとなって「あなた」に刺さります。ところが逆に、「こんな美味しいカレーは食べたことがない」というカレーを提供していたら、その評判も早く広がることでしょう。

つまり、ビジネスにおいては商品力が最重要だということです。ところが、どんなに優れた商品でも、世に知られなければ無いのと一緒です。例えば、誰が使っても飛距離が20ヤード伸びるドライバーがあったとします。こんな素晴らしい商品は必ず口コミ・評判が広がって売れるだろうと、離島のゴルフショップにヒッソリと置いていても、売れるはずがありません。商品力とマーケティングは、ビジネスにとって車の両輪です。その重要度は「商品力が8割、マーケティングが2割」と言われています。ここで誤解してほしくないのは、だからと言って「マーケティングを無視しても想定の8割は売れる」わけではありません。それは前述のドライバーの例を見てもご理解いただけると思います。重要度は8:2でも、それぞれがバランスをとって回り続けることが重要なのです。

塾における商品とは、言うまでもなく授業です。そこには教師、教材、カリキュラムが含まれます。それ以外は全てマーケティングの分野です。広告宣伝はもちろん、コミュニケーションもコピーライティングも全てマーケティングです。

重要度の8割を授業が占めているわけですから、反転攻勢をするためにはまず、授業力の向上に取り組まなければなりません。ところが、この点に関して中小・個人塾は軽視している傾向があります。個人塾のベテラン塾長は、「長年の経験があるので、大手塾の若い教師には負けない」という根拠の薄い自信=過信を持っています。個別指導塾の塾長は、現場のアルバイト大学生講師に教材を渡し、あとは宜しくとばかりに丸投げしています。これでは、いくらマーケティングに力を入れても「Aちゃんのカレー屋さん」です。

たまに、「江戸時代から200年、守り続けた伝統の味」と謳う老舗の店があります。

「戦災の時に、このタレ壺だけは親父が守り通したんです」などと店主がインタビューに答えたりします。これらのキャッチコピーと物語はマーケティングの分野です。レポーターは「これが江戸時代から続く味ですか。さすがに美味しいですね」などと褒め称えます。しかし、私は断言します。本当に江戸時代と同じ味を提供していたら、現代人は不味くて食べられないでしょう。あれは江戸時代の味をそのまま守ってきたのではなく、時代の味覚との関係を変えずに守ってきたのです。タレを継ぎ足し継ぎ足し作っていく中で、より美味しいタレを作り上げてきたのです。だから、現代人も満足する「江戸時代の味」を提供できているのです。

どの分野でも同じです。商品力を高める不断の営みが、ビジネスには不可欠なのです。それは塾も同じです。

私は授業の専門家ではないのでこれ以上踏み込みませんが、これからお伝えする話は、あくまでも授業が素晴らしいことが前提で、その素晴らしさを「早く正確に伝える手法」とご理解ください。では次回から具体的なマーケティングについてお話を進めていきます。よろしくお付き合いください。

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