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  • 執筆者の写真森智勝

塾・新時代のマーケティング論(53) 退塾伝染病が流行り始める頃①

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

教室を開校すると、最初の2年間は退塾者0ということが珍しくありません。教室責任者は鼻高々で自慢をするのですが…ところが、3年目くらいから退塾者が現れだし、止めようがなくなるという現象が起こったりします。なぜか?退塾アンテナが立つからです。


 それまで退塾する生徒がいないと、個々の退塾アンテナは寝ています。ところが、ひとりの退塾者が出現することで、アンテナが立ってしまいます。「ああ、退塾することができるんだ…」と、改めて自覚するのです。セミナーの後の質疑応答で、最初に手を挙げるのって勇気が要りますよね。ところが、誰かが先陣を切って質問すると、次々と手が挙がる…あの現象に似ています。


 そう、一人の退塾者の登場によって、「だったら俺も」「私も」という追随者を生んでしまいます。これを「退塾伝染病」と言います。


 この「退塾アンテナが立つ」瞬間が感染した瞬間です。ひとたび感染症が発生すると、新型インフルエンザよりも強い感染力で広まり、クラスを(塾を)ガタガタにしてしまいます。この退塾伝染病が一年の中で最も流行しやすいのが2学期です。


 さて、この感染症を未然に防ぐ方法を考えましょう。当然、その第一歩はウイルスを入れないことです。


 極端な言い方をすれば「途中退塾する生徒は最初から入れないこと」です。「そんなの無理だよ~」という悲鳴が聞こえてきそうですが、考えてみて下さい。あなたの塾は「来る者拒まず」で誰でも受け入れていませんか?以前にもお話したことがあるのですが、熱心な塾ほど退塾者(特に成績優秀者の退塾)が多いという不思議な現象があります。その時の説明は次のようでした。


 熱心な先生は「自分の力で目の前の生徒を何とかしてあげたい」と考えるものです。その思いは貴重なのですが、多くの場合、その目は成績不振者に向けられます。居残りや呼び出し授業の対象になる生徒は、たいていが成績不振で塾に対しても前向きではない生徒です。「俺の力で、こいつを何とかやる気にさせるんだ!」使命感にも似た感情で対応します。すると…真面目で成績も優秀な生徒に対する対応が疎かになってしまいます。そうした生徒は内心思っています。「この塾は、授業もサボりがちで真面目に勉強もしない生徒にばかり熱心だ。ここは私のための塾ではない。」


 こうして、ひっそりと別の理由を言って塾を去っていきます。そうした塾の経営者は異口同音に言います。「いえいえ、私も成績優秀者を集めたいですよ。彼らは手が掛かりませんからね。でも、今の段階では難しい。今は、こいつらを鍛え上げるしかないのですよ。」


 そう、その通り。文字通り成績優秀者には手を掛けず、不振者にばかり熱心なため、経営者の思いとは裏腹に成績優秀者が退塾し、そればかりか「あそこは成績不振者に熱心な塾だ」という評判を作ってしまい、結果、成績不振者ばかりが集まってくる塾になってしまいます。


 そして、そうした塾の特徴は、来る者拒まずで、誰でも入塾を許可してしまうことです。


 以前、とあるFC塾のオーナーズ会議で講演をした時のことです。「あなたの塾に向いている生徒を集めましょう」と話したところ、質疑応答の時間に、ひとりのオーナーさんから猛反論を受けました。


「私は生徒を選り好みするような傲慢な態度は取れません。私を頼ってくる生徒には全てその期待に応えたいと考えています。」


 その姿勢、覚悟は立派です。しかし、どんな人にも、どんな塾にも「得意・不得意」はあるものです。「どんな生徒でも対応できる」と考える方が「傲慢」です。「私にできることはこの範囲です。入塾者を選別することは「この範囲に適する生徒はどうぞ来てください。それ以外を希望される方は、その分野を得意とする別の塾へ行った方が効果的ですよ」という謙虚な姿勢であり、傲慢とは対極にあるのです。


 以前も学習障害児の扱いについてお話したことがあります。「何とか力になりたい」という思いは重々分かるのですが、そうした子供に対応するのは専門の訓練を受け、専門の能力を有した「専門家」でなければ無理です。安易に引き受けるのはお互いにとってマイナスです。


 学習障害児の例は極端だとしても、同じことが「入塾者の選定」には言えるのです。誤解のないように言っておきますが、私は「成績不振者を入れるな」と主張しているのではありません。「あなた(塾)が対応できる生徒、あなたの提供する教育サービスの効果があると認められる生徒を集めましょう」と言っているのです。


 大手進学塾が入塾基準を設け、あるレベル以下の子供をお断りしているのは、その授業を成績不振者が受けても効果がないと判断しているからです。同様に、成績不振者の対応が得意ならば、堂々と「救済塾」を標榜して「通知表4と5の生徒はお断り」とすればいいのです。


 それを、一人でも塾生がほしいからと(その気持ちは痛いほど分かるのですが)、例えばカリキュラムも整っていないのに中学受験希望者を受け入れたり、東大希望者を受け入れたり…逆に、学習障害児も受け入れたり…そうした無理な受け入れをすると、結局、十分な対応ができず、途中退塾する可能性が高くなります。そうした、自分の塾に合わない、途中退塾する可能性の高い生徒は最初から入塾させないことです。それが「退塾ウイルスを入れないこと」の意味です。


 では、ウイルスの進入さえ防げば、それで十分か?と問われれば、残念ですが、それだけでは不十分と言わざるを得ません。なぜなら、退塾ウイルスは、いつでもどこでも「あっ」という間に発生し、増殖を始めるからです。続きは次号でお話します。

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