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塾・新時代のマーケティング論(66) 進路面談を塾の評判作りの場にするⅠ

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。  記録的な残暑の中、9月を迎えました。今年も残すところ4分の1、業界カレンダーで言うと「後期」が始まりました。この時期から塾が取り組むべき課題は「退塾防止」です。塾側も生徒側も「中だるみ」しやすい時期ですので、気を抜くと退塾の連鎖が起こります。コツは、退塾のきっかけを与えないことです。多くの塾が子供を惹き付けるイベントを秋に実施するのも、その方策の1つです。秋は、毎月楽しいイベントを実施してもいいくらいです。  さて、受験生にとっては勝負の2学期です。塾の現場では模擬試験の結果を基に進路相談会が幾度か開かれることでしょう。9月末に予定している塾も多いことと思われます。この面談(たいていは保護者を交えた三者面談)の位置付けを考えてみましょう。  もちろん、一義的には生徒の進学先を相談する場であることは言うまでもありません。が、同時に、ビジネス的に見ると評判作りの場でもあります。保護者に対して塾の優位性や熱意を伝える貴重な機会です。ところが…  面談を終えた後、憂鬱な面持ちで帰って行く親子が多い塾があります。本来、志望校に向かってモチベーションを高める場にしなければならないはずです。生徒も保護者も前向きになって帰路についてもらわなければ、その後の評判作りにも貢献しないのですが、実際のところ、そうではない面談をしている塾が多いのです。  そうした塾の面談は、直前の模試の帳票を前にして、「今回の偏差値は…」「前回と比較して…」「これでは第一志望校の合格率が…」「安全圏に入るには偏差値を○点伸ばさなければ…」「そろそろ志望校を変更した方が…」いやはや、テンションの落ちる話のオンパレードです。正直、誰もそんな話は聞きたくないのです。  多くの塾が面談で、誰も聞きたくない話に終始しています。それでは生徒も保護者も憂鬱になって帰って行くのは当然です。面談の極意は、「相手が聞きたいと思っている話」をすることです。  偏差値がどうの、志望校の合格率がどうの…そんなことは帳票を見れば分かります。あえて塾の担当者から指摘されるまでもありません。彼らが知りたいのは、その結果を受けて、今後どうすれば志望校に合格できるかという対策です。我々塾人は評論家ではありません。指導者です。模試の結果を評するだけの面談をしていたのでは失格です。  では、なぜ、評論的な面談になってしまうのでしょう。原因の1つは、面談に対する準備不足が挙げられます。中には、模試の帳票を面談の場で初めて見るという横着な教師もいます。それでは、模試の結果を受けた対策の提示など無理です。  私が提案していることは、生徒ひとりに1つでいいので、今後の対策に資するもの(教材等)を用意して面談に臨むことです。例を挙げると、こんなトークになります。  「帳票をご覧のように、A君は春と比べて全体的に学力は大幅にアップしています。夏休みの頑張りが数字に表れて、このデータを見たとき、私も飛び上がって喜びました。ただ、詳しく分析してみると、方程式の文章題という最も苦手としているところの克服がまだ出来ていないことが分かります。ここさえ克服すれば、数学が得意科目として今後のA君の大きな武器になると思います。そこで…、方程式の文章題をパターン別で30枚、作ってきました。普段の家庭学習に加えて、これを毎日一枚、解いてみませんか。もちろん、どうしても分からない問題に関しては、塾が責任を持って徹底的に指導します。苦手を克服するには一定期間集中して取り組むことが必要です。また、A君にはやり遂げるだけの力が備わっていると信じています。」  こうして、A君だけのために用意した教材を渡します。「ひとり一人のために」を標榜していない塾はないと思います。ところが面談になると、偏差値中心の紋切り型評論トークになってしまう。生徒・保護者にとっても、塾にとっても残念なことです。面談後、生徒と保護者に意欲的になってもらうために、そして、塾が本当に「一人ひとりのために」を実践していることを知らしめるためにも、「その生徒のための解決策」を1つ準備して面談に臨んでください。  都麦出版さんが配信しているメルマガにも、次のような記載がありました。  (前略)塾で面談をしていると、大学進学の状況が、中学生の進路選択に 大きな影響を与えていると強く感じる。「行けるなら、大学に行かせてやりたい」。そんな考えの親は減り、大多数は「大学へ行くのは当たり前。そのために、できるだけ大学進学に有利な高校へ行かせたい」と考える。(中略)確かに、高校の大学合格実績は高校入学時の偏差値にある程度比例するし、高校入試の合否には中学の調査書が大きなウエートを占める。でも、そんな数字にばかりこだわると、面談がどんどん夢のない話になってしまわないか。「夢」を実現するはずの進路選びが、「不安」から逃れる後ろ向きの選択に陥ってしまうこともある。高校選びでは、なぜ大学へ行くのか、その意味を改めて考えるようにしたい。「不安」に負けない「夢」を自分で育ててほしい。  中には、合格率を上げるために第一志望校を変更させる面談をしている塾もあると聞いています。そんな「夢」のない面談ではモチベーションも低下しますし、塾の評判も上がることはないでしょう。  強い塾とは、不合格の時ですら本人・保護者から感謝される塾です。そうした信頼関係は、不断のコミュニケーションと、何より、「この教師は自分のためではなく、本当に子どものことを思って行動してくれている」と思ってもらう塾人の情熱によって作られます。面談は、そうした「思い」を伝えるための貴重な機会です。  思いは伝えなければ伝わりません。  言霊に生きる我々日本人にとって、コミュニケーションは苦手です。ましてや、言葉だけで伝えようとするのには無理があります。そこで、その思いを「形」にして示す必要があるのです。担当する生徒ひとり一人に対策教材を用意することは大変な作業です。でも、だからこそ、実行した塾の「思い」が相手に伝わるのです。  この秋からの面談を「塾の評判作りの場」と定義し、取り組んでください。「今」の努力が来春の募集を左右します。あなたの塾の差別化は、そうした地道な努力の上に形作られます。

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