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塾・新時代のマーケティング論(8) 「組織の長に求められる先を読む力」

  • 執筆者の写真: 森智勝
    森智勝
  • 2024年2月8日
  • 読了時間: 5分

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。 先日、テレビ東京の「ガイヤの夜明け」製作会社のスタッフから電話がかかってきた。何でも「教育産業についての番組を制作するのだが、昨年の朝日新聞に『名古屋の学習塾がネットオークションに売りに出た』という記事が載り、現在の教育産業を象徴する事例として取材したい」ということだった。

その記事の内容はこうである。


1兆円市場 生徒集めへ経営特化(教育産業 転機の教育:2) 2003.09.29 朝日新聞:東京朝刊 1頁 1総  -「学習塾権利」という商品が売られている。- 名古屋市内に教室2部屋、机24個、教材、地球儀、ファクス、コピー機なども付く。受講中の生徒12人もそのまま引き渡すという。希望落札価格は180万円。今年6月からインターネットオークションにかかった。地元では名が通った進学塾だが、昨年から生徒集めに苦しむ。授業料を一気に半額にして集客を狙ったが、かえって信用を落としてしまった。経営者(27)は昨年、先代から引き継いだばかりだ。「大手の塾に生徒が流れてしまった。小さい塾が生き残るには、アピールできる特徴がないと厳しい」と言った。こうした小規模な塾の撤退が相次いでいる。総務省の統計では、全国の学習塾は約5万。そのうち5%ほどは複数の教室を展開できる大手で、残りの多くは零細だといわれる。経済産業省は、来年度から学習塾の実態調査に初めて乗り出す。

勝ち組と負け組みという言葉は使いたくないが、塾業界が2対8の法則社会へ確実に動いていることだけは確かなようである。こうした時代では短期での進捗(しんちょく)・衰退が甚だしくなる。特に、記事にある例のように2代目経営者に代替わりしたとたんに業績が乱高下することがある。企業としての最大の目的が「存続」にあるとするならば、次世代のリーダーを育成することが今のリーダーには求められる。

さて、年が明けてからニュースでは「景気の回復」が叫ばれている。一方、それは一部のことで庶民の生活は依然厳しいという声もある。どちらも正しいのだろう。ただマクロで見た場合、消費動向の回復傾向は間違いない。「団塊の世代」の可処分所得が大幅に増えてくるからである。

今年の正月、実家に帰って驚いた。キッチンがリフォームされ、食器洗い機までが設置されている。世帯主である兄は昭和25年生まれの、いわゆる団塊の世代である。二人の子供が大学を相次いで卒業し、一人は昨年結婚もした。今年は孫も生まれる。これまで最も重い負担を強いられてきた教育費という重石がシステムキッチンに化けたのである。

ここ十年間続いたリストラの嵐を生き延びた団塊の世代にとっては、バラ色の?熟年時代が始まろうとしている。各業界は、この潤沢な消費者層を虎視眈々と狙っているに違いない。 一方、これからの小中学生の親世代にとっては厳しい現実が待ち受けている。収入の頭打ちに加え、年金負担の増大と消費税のアップは避けられない。流行語にもなった「年収300万円時代」が現実味を帯びてくると、ますます可処分所得は減少する。これは塾業界にとっても死活問題である。

日本の学習塾をはじめとする、いわゆる「お稽古事」業界は、世界的に見ても高水準の一般勤労者賃金に支えられてきたと言っても過言ではない。20代、30代の夫婦にとって、息子にスイミング、娘にピアノを習わせるだけの余裕があったのである。その賃金構造が崩れていく。一握りの高所得者と多くの低所得者層に2極化される。その過渡期には当然、各家庭の財布の紐は硬くなることを覚悟せねばなるまい。

そこで団塊の世代である。この層をターゲットにすることを塾業界も研究すべきではないだろうか。

ある塾は大学合格までの完全指導をパッケージ化する商品開発を研究している。コンセプトは「お孫さんを医者にしませんか」「お孫さんを法律家にしませんか」である。祖父母から孫へ教育のプレゼントという発想である。もちろん、多くのクリアすべき問題はあるが、10年後の「存続」を考えた場合、一考に価するアイディアであろう。

元日本マイクロソフト社長の成毛氏は「社長にとって最も大切な資質は予測力だ」と言う。時代の変化スピードは加速度的に速くなっている。商品寿命は3年、ネット商品は3ヶ月と言われている今、先を読む力はますます重要になってくる。教育産業界も例外ではいられない。

冒頭で述べた次世代のリーダーに必ず必要な資質が予測力であることは間違いない。乱暴に言ってしまえば「勘」である。

化成品会社社長の見山氏は次のように言っている。

「パソコンのデータで私は勘を養っている。それはデータを見る前に、どのような数値になっているか頭の中で描いてみる。データと私の数値が重なっているか、ズレているか。データを示されて実態を認識するようでは社長は要らない。社長は、いつも頭の中に基準数値の概算が出てきて当たり前だ。そうするために現場へ足を運んでいるのだから、データはあくまで結果だ。結果を見て前へ戻れるようなら誰にでも社長はできる。データの前を歩く、データを一緒に作る。その姿勢を持てば自分の勘は磨かれる。データは勘を認識させる手段だと考えている。」(株式会社ジェイック発行「社長と幹部の格言集」より)

あなたは自分の予測力(勘)を磨いているだろうか。

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