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塾・新時代のマーケティング論(56) 新年度戦略構築の前に「振り返り」を

この記事は塾生獲得実践会の森智勝氏のご厚意により、全国学習塾援護会のHPから転載したものです。

 今年も残すところ1ヶ月半。一年間のサイクルがますます速くなっています。かつてはドッグイヤーと呼ばれていましたが、今ではマウスイヤーと呼ぶそうです。あなたの塾の新年に向けての準備は万端でしょうか。この時期になると来年度に向けての動きが加速を始めますが、少し立ち止まって考えていただきたいことがあります。これまでの半期を反省せずに新しい戦略構築をしても、同じ失敗を繰り返すことになります。マネジメントで言う「P-D-C-A」の「C」(チェック)に当たる部分です。このチェックが正しく機能しないと、新しいA(アクション)も、新しいP(プラン)も成果を出すことは難しい。特に、現場での「ワン・ツー・ワン・マーケティング」は一つ一つが些細なことなので、見過ごされがちです。  ここでは例として「退塾に対するチェック」を上げてみましょう。  現場から、次のような報告が上がってきたとします。(実際にクライアントの塾であった実例です。) 退塾報告その① (中1男子)  本年6月の入塾時の状況は、英語に不安を感じて母親が入塾させた。入塾後は同じ中学の男子生徒がいることで塾の雰囲気にもすぐに慣れ、1学期末対策特訓(=12時間特訓)にも参加をするなど、徐々に勉強の習慣も身につきつつあった。そのような中、20日間毎日2時間の夏期講習参加後の9月より退塾の申し入れがあった。理由は、最近、子供が以前にも増して食が細くなり、その原因が部活、そろばん、塾のサイクルが負担になっているようだとの結論から退塾の申し出となった。  二十日間、毎日2時間の夏期講習…確かにハードです。特に、中学1年生の場合、体力不足のため、部活が本格化する夏にダウンしてしまうことがあります。重要なことは、事前に予告と対処方法を教えておくことです。 「夏休み前後から部活が本格化し、慣れない中学1年生にとっては体力的にきつくなります。しかし、ここを乗り切ることができれば、体力的にはもちろん、精神的にも強くなれます。もともと、そんなことに負けない体力と精神力を養うことが部活動の目的の一つです。負けずに頑張って下さい。(後略)」旨のメッセージを1学期のうちから伝えておくことです。そうと決まれば、塾の総意としての中1生向けメッセージを作り、それを誰がどこで発信するか…いわゆる行動計画を作る作業に着手するだけです。こうした生徒の個人的理由の退塾に対して、「それは塾のせいではないから仕方がない」とばかりに安穏としていると、同傾向の退塾を減らすことは難しいでしょう。 退塾例その② (中2 女子)  もともと集団コースにいた生徒だが、ある事がきっかけで個別コースへ移ることになった。ある事とは、3か月もの間、英語の授業中、一人の女子生徒が授業中にからかわれ、それが頻繁に続いていたということが近頃発覚した。その「からかい」の中心となっていた生徒が今回退塾した女子生徒だが、その生徒がクラスにいることで教室全体が浮つくこともあり、個別コースへ移動させることにした。これまで彼女は、友人関係など集団コースでの居心地の良さが通塾継続の要因となっていたが、個別コースへ移ったことで楽しさが半減したものと思われる。「からかい」の対応として、塾長に状況報告の後、講師および生徒から食い違いはないか事情を聞き出し、その上で生徒へ注意することはもちろん、英語講師に対してはクラス担任から外した。からかわれた女子生徒の親の怒りは、まず英語講師に向けられていたため、この処分に対し一応納得はしてもらえた。  報告は「からかい」となっていますが、基本的には「いじめ」の問題です。「いじめっ子」を集団クラスから外し、個別に回したところ退塾になった例です。この問題は二つの要素が絡んでいます。  まず、そうした問題児が塾に紛れ込むのを未然に防ぐ仕組みづくりの問題です。以前もお話したことがあるのですが、「誰でもどうぞ」と言っていると、ときに「とんでもない問題児」が入ってくることがあります。ところが、いったん入れてしまうと、排除することが難しい。そこで提案しているのが「モニター生(家庭)」の創設です。入塾の問い合わせがあったときに、すぐにモニター生に問い合わせることです。「今度、クラスの○○君という子から入塾の申し込みをいただいたのですが、どんなお子さんですか?」信頼の置けるご家庭を味方にしておくと、そうした場合に正直に教えてくれるものです。数分の入塾面談で、生徒の内面を見抜くことは至難の業です。以前お話したように、まずは問題児を入れない仕組み作りが重要です。  とは言え、人間、それも子供の世界のことですから、塾生同士の諍いは防げません。問題は、そうしたときの塾側の対応です。  担当講師「今日、△△さんが発言中に、□□君がからかう様な言葉を連発して困ったのですが。」  塾長(教室長)「しょうがないなあ。分かった、今度、□□君を呼び出して注意しておくからね。」  こんな対応では失格です。  スタッフの間で「絶対にいじめは許さない。そうした兆候が見えたら、その場できつく注意する」という意思統一が必要です。一人でも見逃す先生がいれば、「からかい」がエスカレートすることは目に見えています。それは「塾」が容認したと理解されるからです。問題の芽が小さなうちに、徹底して潰さなければなりません。  また、「後日、呼び出して…」という対応もダメです。なぜなら、それでは「塾がしっかり対応していること」が塾生達に伝わらないからです。全ての子供たちが冷静な目で塾の対応を見ていることを意識して下さい。本来は担当講師がその場で注意すべきなのですが、今回のように報告があった場合は、責任者(教室長、塾長)が教室まで足を運び、クラス全員の前で対応しなければなりません。 こうした「振り返り」をすることによって、塾の生徒管理に関する大きな前進が得られるはずです。そして、その一つひとつの対策を講じることが、塾の体質強化につながります。  ぜひ、新年度の戦略構築の前にこれまでのチェック(振り返り)を怠りませんように。

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